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理沙ママ

私は歯磨き粉の味が大好きになった。お腹の子、歯磨きが大好きなのかしら!?それとも、パパが歯医者さんで、ママが歯科衛生士ってわかってるのかな・・。

この子の予定日は来年2月3日。どうか丈夫に生まれてきてね!


「理沙さん、いつまで仕事するつもり?」

「一応今年いっぱいは働こうと思ってるけど」

「あの音大丈夫かな?」

「あの音って?」

「ほら、キイーンっていう・・お腹の赤ちゃん驚くんじゃないかと思ってさ」

「真司さん、意外と心配性なのね!確かにクラッシックに比べたら、不快な音ってことになるんだろうけど」

「今度、婦人科の先生に聞いといてよ」

「うん。それより真司さん、私の名前、いつまでさん付けで呼ぶんですか?」

「だめ?じゃあ・・ママ!?」

「ママは早すぎるでしょ!」

「そう言えば、駿は面白い呼び方してるよね」

「ある時ね、駿くんが聞いてきたの?私のこと何て呼べばいいのかなあ?って。それて、二人で考えたの」

「そうだったのか」


ある時

「ねえ、理沙お姉さん」

「ん?どうしたの駿くん」

「お姉さんはパパと結婚したんだからぼくのママなんだよね!」

「そういうこと・・かな」

「じゃあぼくママって呼ばないといけない?」

「そんなことないよ!無理にママなんて呼ばなくていいんだよ」

「ふーん」

「駿くんは、私のことママって呼びたいの?」

「ん・・わかんない!」

「私は駿くんのことを、しばらくは駿くんって呼ぶつもりだけど・・それでいいかな?それとも・・」

「今のままでいいよ!」

「駿くんも、今はあまり会えないけど、駿くんを生んでくれたママがいるでしょう。だから、私をママって呼んだらママが二人になっちゃうし・・」

「でも・・」

「じゃあこうしない。理沙お姉さんじゃなくて、理沙ママって!」

「理沙ママ?」

「うん!駿くん、ちょっと呼んでみてよ」

「理沙ママ」

「うん!いい感じ。どう?駿くん」

「理沙ママかあ・・わかった。じゃあ理沙ママって呼ぶ!」

「うん」

「理沙ママ!」

「はい!」

私も、お腹の子が生まれる頃には、駿くんのこと「駿!」って呼ぶつもりよ。


「駿くん、明日の準備は出来た?」

「うんOKだよ!」

「明日学校に行ったらもう夏休みだね」

「うん!」

「プールとかいっぱい行きたいけど、今年は無理そうだなあ」

「お腹に赤ちゃんがいるからでしょ」

「うん、ごめんね」

「うんん、平気だよ」

「パパね、もうすぐ帰ってくるって!さっきメールがあったよ」

「お仕事?」

「まあ、そんなとこかな」

本当は、男だけの飲み会なんだけど。


その飲み会では

「それにしても龍崎君はお手が早い!」

「院長、そんな言い方しなくても」

「本田先生のところは奥さんと今だラブラブだからいいが、私なんかとっくに・・。まあ、羨ましいってことだな!」

「いや、ラブラブってこともないですよ」

「この前、銀座のホコ天で手を繋いで歩いてるのを、千穂ちゃん達が見たって言ってたぞ」

「あのときはその・・仕方なくです」

「まあ、いずれにしろ夫婦仲が良いってのはいいことだ」

「そうですね!僕も見習わないとな。それと、前にも言いましたが、瞬が明後日から夏休みで・・」

「あーあ、その事か。大丈夫、うちのスタッフは皆駿くんが大好きだからね!」

「そうですね!」

「ありがとうございます」


そして

「ん?」

「どうしたの理沙ママ?」

「駿くん、私のお腹触ってみて!」

「こう?」

「何か動いてない?」

「ん・・・」

「気のせいだったかなあ・・」

「何も動いてないよ」

「そうだね」

しばらくするとまた

「ん?」

「ん?」

「ん・・はっきりしないなあ」

「おーい!赤ちゃん、起きてるかあー」

駿くんは両手をメガホンにして、お腹な赤ちゃんに呼び掛けている。すると・・

「動いた!ここ、駿くん触って」

「・・あっ!」


そんなところにちょうど真司さんが帰ってきた。

「ただいまー!」

「パパー、赤ちゃんが動いたよ!」

駿くんは急いでパパのもとへ。

「えっ!」

「お帰り」

「理沙さん、本当?赤ちゃんが動いたって」

「うん、たった今!」

「えっ!・・どの辺りだった?」

真司さんもお腹を触ってみるけど。

「そこ!その辺よ」

「ん・・・」

「パパどう?」

「何も感じないなあ・・」

「おーい!赤ちゃん、パパが帰ってきたよー」

また駿くんの大きな声。

「駿、なんだそれ?」

「さっき駿くんが呼び掛けたら、それで動いたのよ」

「へえー・・ダメだ。わかんないや」

「赤ちゃん、眠っちゃったのかもね」

「そうね」


駿くんはひとりでしっかり歯を磨き、今は布団の中。

「駿くん、明日学校行けば夏休みよ」

「院長に今も話してきた。何日かクリニックでお世話になりますって」

「了解とれたの?」

「ああ、OKだ!」

そしてまた

「おーい!赤ちゃん」

「真司さん・・?」

「駿のまねだ」

「ふふふっ」

そんな真司パパの呼び掛けもむなしく、お腹の赤ちゃんはぐっすりだった。


翌朝、私達は揃って家を出た。

「駿くん気を付けてね!」

「うん」

すぐそこには、お友だちが待ってくれている。

そして真司さんと私は地下鉄の駅へ向かった。駿くんの方角とは反対方向の・・。



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