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ママの日

今日は4月24日、日曜日。

ブーブー・・私はそんなスマホの着信音に目が覚めた。誰だ?こんなに早く。

スマホの画面には『母』・・お母さん!

「もしもしお母さん?」

「理沙、今日仕事休みでしょ。久しぶりにお茶しない?!」

「いいけど、今どこなの?お母さん」

「巣鴨まで出てきてるんだけど」

「早いわね」

「早くないわよ!もうすぐ10時よ」

「・・・」

「どのくらいで来れる?」

「30分くらいかな」


電話を切り、私は急いで身支度を済ませ家を出た。ん?鞄がちょっと重いわ・・中をみると例の本が!持ってきちゃったか。


そして待ち合わせの喫茶店に

「お母さん、お待たせ」

「ごめんね急に」

「うんん、今日は何も予定ないから」

「じゃあ良かったわ。デートの約束とかなかった?」

「まあーね。私もアイスティーにしようかな・・」

運ばれてきたアイスティーを私はストローですすった。


「このあとどうする?」

「どうするって?」

「買い物でも行こうか!夏服、何か買ってあげるわよ」

「ホント!じゃあ付き合っちゃおうかな」


一方こちらは

「駿、準備できたか?」

「うん、いいよ」

「じゃあ出発だ!」

「パパ、車で行くの?」

「ああ、そうだ、駿は自転車乗れたっけ?」

「乗れるよ」

「じゃあ、今日帰りに買ってこようか!」

「パパも買うの?」

「そうだなあ、パパも買っちゃうか!」

「イエーイ!」

「待てよ、そうしたら車に乗らないなあ自転車・・」

「ん?」

「じゃあ地下鉄で行くか。それで帰りは自転車で帰ってくる」

「うん、そうしよう!」

「じゃあ出掛けるぞ」

「おー!」


私とお母さんはJR で池袋まで来ていた。

「若者の洋服だとやっぱりパルコがいいかな」

「うん」


そして私たちはお店に入った。するとすぐに目に飛び込んできたのは『5月8日、母の日』という文字!

すっかり忘れてたなあ母の日なんて・・。

「母の日だね!」

「ああ、そうね。これ覚えてるでしょ!」

「・・あーあそれ・・」

「去年、理沙が買ってくれたのよ!」

「そうだったね」

今日、お母さんが着ているチェックのブラウスは、去年の母の日に私がプレゼントしたものだ。


「どんなのがいいかなあ・・?」

「・・・」

「これなんかどう?」

「ん・・ちょっとはでかなあ」

「そうかしらね」

「・・・」

「理沙は今度の誕生日でいくつだっけ?」

「娘の歳も知らないの?お母さん」

「冗談よ!で、彼氏はいるの?せっかくの休みにデートもしないなんて・・」

「えっ!?」

「もうすぐ30才の娘をもらってくれそうな人よ」

「まあ、いなくもないけど・・」

「あら!」

そして私が選んだのは、白の落ち着いたブラウスと紺の綿のパンツ。

お母さんには、オシャレで履きやすそうな靴を選びプレゼントした。


「お腹空いたね!お母さん」

「うん、どこかでご飯食べましょうか」

「そうだね。なに食べたい?」

「そうね・・たまにはラーメンなんていいかもね」

「珍しいねお母さん。このちょっと先に美味しいラーメン屋があるよ」

「行ってみようか」

「うん」

「ところで彼氏のことなんだけど・・」

「その話はあとあと!」


「駿、次降りるぞ」

「はーい!・・池袋」

「サンソャインっていうビルに向かうよ」

「そこで星がいっぱい見られるの?」

「うん、プラネタリウムっていうんだ」

「プラネタリウム?」

「そう」

駅を出て10分ほど歩くと高い建物が見えてきた。


「駿、見えてきたぞ」

「あの高いビルがサンソャイン?」

「そう、60階建だ」

「うわー!上の方は雲で見えないや」

「ホントだ」

「パパ早くいこう!」


そして室内に・・

「ほら、あそこに大きな機械があるだろう!あれで星を映し出すんだ」

「映し出すって・・」

「上を見てごらん。この天井が星でいっぱいになるんだよ」

「ふーん」


ブー・・合図と共に部屋はだんだんと暗くなっていった。

「駿、ほらこうやって椅子にねっころがって見るんだ!」

「うん!」

やがて頭上には満天の星空が広がっていった!・・。


ラーメン屋は意外と混んでいた。

「わあっ、ちょっと待たないと入れないね。どうするお母さん?」

「せっかく来たんだから待とうか」

「うん」

行列の出来るラーメン屋かあ、テレビでよくやってるけど、このお店もその類いなのかしら?ルミたちと何回か来たことあるけど、ならんだのは初めてだな。


そして私が何気なく遠くに目をやったその時だった。私のよく知っている親子が前の道を歩いている。龍崎先生と駿くんだ!

「理沙、どうかしたの?」

「うんん、ちょっと知り合いに似たひとがいたんだけど、人違いみたい」

「そう」


どうしよう。声を掛けたいけど、今日はひとりじゃないし・・。


「ねーねーパパ、あそこにいるの理沙お姉さんじゃない!?」

あっ!駿くんがこっちを見てる。私に気づいたのかな・・。

「ん?」

あっ!先生もこっちを見た。

「ぼく行ってくる!」

「おい駿!」

あっ!駿くんが走り出しちゃったよ!

「理沙お姉さーん!」

名前呼ばれちゃったか。

「駿くん!」

「やっぱりお姉さんだ!」

「ん?理沙、あの男の子は」

「知り合いの息子さん」

そして駿くんは私のもとに。

「はあはあ・・」息を切らす駿くん。

「大丈夫?駿くん」

「うん」

「こんにちは」

「ん?」

「ああ、私のお母さんよ。こちら龍崎駿くん」

「こんにちは」


そして大物登場だ!

「駿、急に駆け出して危ないだろう」

「パパ、このひとお姉さんのお母さんだって!」

「えっ!」

「お母さん、こちら龍崎先生。同じクリニックの先生よ。そして駿くんのお父さん」

「あら!そうですか。はじめまして。寿ともうします。娘がいつもお世話になりまして」

「いえ、こちらこそ・・」


「理沙お姉さん、ここでなにやってるの?」

「ラーメン食べようと思ったらこんなにならんでて!」

「そうなんだ」

「でも理沙、もう次の次よ!」

「うん」

「よろしかったら先生たちもご一緒にどうですか?」

「お母さん・・」

「はあ・・」ほら、先生困っちゃったじゃない。

「パパ、ラーメン食べようよ!ね、お姉さん」

「あっ、そうね」

「パパ!?」

「じゃあ、ご一緒させてもらおうか」息子には弱いパパでした。

「やったー!」

外見より、お店の中は広く感じるこのラーメン屋。4人は角のテーブルに腰を掛けた。

「もう冷やし中華やってるんだ!」

「外は25度くらいあるんじゃないかなあ」

「じゃあ私はその冷やし中華にしようかしら」

「お母さんは冷やし中華ね。私は・・」

「理沙お姉さん、何にするの?」

「私も冷やし中華がいいかな」

「じゃあぼくも冷やし中華!」

「駿くん、好きなの選んでいいんだよ」

「わかってる。だから冷やし中華!」

「そっか。先生は何にしますか?」

「僕も冷やし中華で」

「ぷっ!」私は思わず吹き出してしまった。この状況では、他のもの頼めないよね。

「ん?」

「なんか他のもの頼みにくいだろうなって!」

「いや、僕も駿も冷やし中華は大好きだから!なあ駿」

「うん!」


そして先生が4人分の冷やし中華を注文してくれた。

「駿くんたちはどこにいってたんですか?」

「プラネタリウム!」

「ああ!プラネタリウム、いいなあ・・」

「お姉さんも行きたかった?」

「うん。キレイだったでしょ!お星さま」

「うん」

「寿さんたちはお買い物ですか?」

「ええ、お互いにプレゼントを!母の日も近いもので」

「母の日・・」と駿くん。

「あっ・・ごめん駿くん」

「どうしたの?お姉さん」

「えっと・・」

「駿なら大丈夫ですよ、寿さん」

「はい」・・駿くんは、なかなかママには会えないんだったよね。


「これからね、パパと自転車買いに行くんだ!」

「そう、良かったわね!駿くん」

「お姉さんも自転車買ったら!」

「えっ、私も!?」

「そしたら3人でお出掛けできるでしょ!」

「うん」

「こら駿、理沙お姉さんを困らせるんじゃないよ」

「ちぇ!つまんないの・・」


そこに美味しそうな冷やし中華が運ばれてきた。卵にハムにキュウリにトマト、完璧だわ!

冷やし中華が食べ終わる頃、お母さんが言い出した。

「さあ、じゃあ私はお先に失礼するわね!」

「どうしたのお母さん?」

「駿くんと行ってあげなさい!私はこれからお友だちと会わないといけないから」

「えっ?」

「龍崎先生、娘をお願いしますね」

「はあ・・」

「じゃあね。そうだお代をおいていかないと・・」

「あっお母さん!それは僕が」

「あら!じゃあお言葉に甘えさせてもらうわね」

「はい」

「駿くん、バイバイ」

「バイバーイ!」

お母さんは行ってしまった。


「なんか悪かったかな」

「そんなことないですよ!あっ先生、お代は私が払います」

「それこそ気にしなくていいよ!」

「そうですか・・」

「よし行こうか駿」

「うん!理沙お姉さんもね」

「うん」


そして私たちは自転車屋さんに。

8800円かあ・・表に並んでいる自転車の値段を私は確認した。

中に入ると大小色とりどりの自転車が、きれいに整列されている。駿くんも、目があっちにいったりこっちにいったりと興奮ぎみ!

「駿くんはどんなのがいいのかなあ?」

「ぼく青いのがいいなあ!」

「青かあ・・男の子だもんね」

「うん!パパ、あっち見てきていい?」

「ああ」

駿くんは店の奥へと走っていった。


「先生も自転車買うんですか?」

「うん、駿と約束しちゃったからね」

「ふーん」

「寿さんもどう?自転車」

「私は・・」

そこで私の目に飛び込んできたのは・・29800円の文字!高っ!

「私は遠慮しときます」

「そう。でも駿が許すかな・・」

だってそんなにお金持ってないもん。


「パパー!」

駿くんが呼んでる。いいのが見つかったのかな!?

私たちは駿くんのところへ駆け寄った。

「いいのがあったか!?」

「これ!」

うわ高っ!2万円以上もするわ。私はすぐ値段に目がいってしまう。

「おっ!カコイイな。ギアまでついてるぞ」

「うん」

「押さえてるから乗ってごらん」

「いいの?」

「うん」

「よいしょ・・」

「大きさてきにはちょうどいいな」

「うん、ちょうどいい!」

「他のもの見てみるか?」

「うんん、ぼくこれがいい!!」

相当気に入ったのね!


「次はパパと理沙お姉さんのだね!」

「あのね駿くん、私は自転車はちょっと・・」

「ん?自転車乗れないのお姉さん」

「いや、そうじゃないけど・・」

「寿さん、素直にはいって言っといたら!」

「でも・・」


私の気も知らないで、二人は先に行ってしまった。仕方なく私は二人のあとを追った。

「おっ!あそこにいいのがありそうだぞ」

「ホント?パパ」

そこにはSALEの文字が。ジャスト10000円!だって。

「パパ、これなんて書いてあるの?」

「セール・・いい自転車を、今日は特別に安く買えるってこと」

「ふーん」

確かに表にあったのより、グレードがだいぶ上のようだ。けどなあ・・。

「寿さん、これどうかな?ちょうど色違いもあるし」

「えっ!」

「お姉さんどう?」

「うん、なかなかカッコいいね!」

「じゃあぼくがプレゼントする!」

「プレゼント?」

「ねえパパ!」

「さっきラーメン屋で、寿さんが席を外してるとき、駿が言ってきたんだ。今度母の日だから、理沙お姉さんに何かプレゼントしたいって!」

「えっ?」

「母の日ってちょっと変だけど、駿にとってはママみたいなもんなんだね!寿さんが」

「私が駿くんのママ・・」

「へへぇ」

「駿くん・・」

「だからぼくがプレゼントするの!」

「もちろんお金は僕が払うよ。駿には出世払いで返してもらうさ」

「先生・・」

結局、私たちがゲットしたのは3台の自転車だった。


2週間も早い母の日、いやママの日!駿くん、素敵な一日をありがとう。いつまでも大事に覚えておくからね・・。



















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