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ペロリ

朝、目をさまし奥歯の痛みを確認。

大丈夫、全く問題ないわ!

歯を磨きながら、痛みのあったところを鏡で覗いてみる。歯ブラシをあてると多少違和感があるかなあ・・。


クリニックの玄関を入ると、受付の千穂ちゃんと瑞希ちゃん、それに院長先生が談笑しているところだった。そうか、院長先生今日から仕事復帰なのね!

「おはようございます」

「あっ寿さん、おはようございます!今日から院長先生もお仕事復帰ですって」

「やあ寿くん、色々迷惑をかけたね」

「親知らず、もうよろしいんですか?」

「ああ、大学病院の後輩に、残りを全部抜いてもらったよ」

「それは大変でしたね」

「ああ、何事も後回しにするとろくなことはないよ!」

「言えてます」


そしてお昼休み

コンコン・・女子控え室をノックする人がいた。

「はーい」

「龍崎です」

私は歯ブラシをくわえたままドアを開けた。

「寿さん、さあ診察しましょう!」

「あっはい」

今のところ、歯痛はおさまっているが、昨日の約束を先生はきちんとはたしてくれるらしい!


そんなわけで、私は今、診察室の椅子の上。

「どこの歯が痛むんでしたっけ?」

「左の奥です」

「じゃあ、椅子を倒しますからね」

「はい」


「はい、口を開けて!」

ん?先生、タオルで目隠ししないんですか・・。

「あーん」・・なんで目隠ししないの?これじゃ恥ずかしいじゃないですか。

「ん・・虫歯は無いみたいだけどなあ」

「・・・」

「ちょっと叩いてみますから、痛かったら教えて」

「あーい」・・うまく返事ができない。

「いくよ。カチカチ・・ここは?」

「・・・」痛くない。

「カチカチ・・ここは?」

「・・・」痛くない。

「大丈夫だね。じゃあ今度は指で押してみますね」

「あーい」

「よっと・・ここは?」

「・・・」大丈夫。

「よっと・・ここは?」

「・・・」大丈夫。


私は診察中、当然目を閉じている。でも、時々薄目を開けたりして・・。すると龍崎先生の顔がまさに大接近!恥ずかしさのあまり目を強く瞑ってしまう。

でもそうしたら先生の顔が見えないし。あーあ、こんなことなら黒いサングラスをしとけば良かったなあ!そしたら堂々と目を開けていられたのに。


そして今、先生の指が私の口の中に!キャー!

私は極めて冷静を装いながらも、鼓動はバクバクだ。

しかも私はいけないことを考えていた。いや、私じゃなく、私の舌がだ!

どうしよう、こんなチャンス二度とないしなあ・・。

『ペロリ』・・あっ!舌が動いちゃった。

ヤバイ!先生に気づかれたらとんだ赤面ものだ・・。

『ペロリ』・・げっ!また動いちゃったわ。

これは私の意思ではない!私の舌が勝手にやったこと。


すると今度は、私の唇が勝手に閉じ、先生の指をぎゅっとくわえる格好に・・その時、私の瞳はパット見開かれた!

「うっ!」

なんでこの瞬間に瞼が開いちゃうのよー!


「寿さん、口をしっかり開けてください!痛みの原因がわかりましたよ」

そう言われ、私は口を最大限に開いた。

先生は、私の口の中にピンセットを入れ・・。

「よっと・・はい取れました!」

取れた?何が?

「痛みの原因はこれですよ!」

そう言って見せてくれたピンセットの先には、細い繊維のようなものが摘ままれている。

「なんですか?それ・・」

「多分、歯ブラシの繊維です」

「歯ブラシの?」

「これが歯と歯の間に挟まってました!」

「これが原因・・ですか?」

「はい!その他、舌も唇も瞼も異常ありません!」

「・・どうも・・」


虫歯じゃなくて良かったけど、繊維が挟まってただけとはねー。こんなことルミに話したら大笑いされちゃうよ。

そんなとき、タイミングよくやって来たのはやはりルミだった。

「ああ理沙、歯痛だったんだって」

「うん、まあ・・」

「龍崎先生にみてもらったんでしょ!?」

「うん」

「やっぱり虫歯?」

「えっ・・うんん、歯肉炎だって」

「そうなんだ。ちゃんと歯磨きしてるの?あなた歯科衛生士なんだから」

「はい、以後気をつけます」


歯磨きはちゃんとしてますよーだ!どっちかと言うと、その歯磨きのやりすぎで歯痛になったようなもんなんだから・・。


でもなんで、龍崎先生目隠ししなかったのかな?あれはいつも私達がやってることだから、ただ忘れてただけ。

それに『ペロリ』だなんて・・ 。そんなこと私がされたら、即歯磨き粉を口の中に押し込んじゃうけど!


先生気づいたよね?私の『ペロリ』。あー、今ごろになって顔が熱くなってきたよー!

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