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77.サルファの実力

なんかサルファが戦っています。


しかしながらいつも通り、鎖鎌という武器に対する理解力含め、戦闘シーンの表現が拙いです…。


 まさか、鎖鎌とは…


 予想していなかった武器を装備したサルファ。

 この組み合わせは考えていませんでしたが…

 何故でしょう。

 目で見てみると、思いのほかしっくりきます。

 細身の体と相まって、なんだか盗賊みたいに見えてきました。

 今の姿でその辺の路地に立たせたら、五秒で誤認逮捕されそう(笑)

 そう思ったのは私だけではないのか、どうなのか。

 見物に興じていた騎士さん達は、真剣な眼差しで手配書の確認をし始めたんですけど…

 手配書とサルファの顔を代わる代わる見て、該当するものがないか探す騎士さん。

 心なしか忌々しげにサルファを見る騎士(男)さんが多いのは気のせいですかね?

 やがて確認が終わったのか、チッと舌打ちしながら手配書を懐に戻す騎士さん達。

 わあ、手配書って懐に持っているようなものなんだー…。

 どうやら手配書に該当するものはなかったらしく、見物に戻る騎士さん達。

 その顔が、憎々しげにサルファを見ています。

 ………サルファ、あんた何やった。


 サルファのことを忌々しそうに見ているのは、何も見物の人ばかりではありませんでした。

 サルファの模擬試合の相手に指名された三名も、です。

 目が、真剣に事故(・・)を狙う目になっているのは気のせいかなー?

 深く追求したら、藪から大蛇が出そうな予感(笑)

 しかしあんな好青年っぽくて親切そうで誠実そうな顔をした騎士さん達なのに…

 サルファを見る目のみ、私達よりも手厳しいのですが。

 サルファ…あんた本当に一体、何やった。


 鎖鎌をしっかりと握る反対の手で、鎌から伸びる鎖をひゅんひゅん回すサルファ。

 対峙する三人の騎士は、全身から闘気が…訂正、殺気が漲っています。ぎらぎらです。


「シズリス様! 号礼はまだですか!」

「俺達はいつでも行けます…!!」

「どうぞ、号礼を!」


「…お前ら、落ち着け」


 あまりに漲り、血に飢えたような騎士(×3)。

「そんなに頭に血をやってたら、冷静に戦えないだろー…?」

 その様子にシズリスさんも私達も、困惑が隠せません。

 なんだか面白そうなことになりそうな気配です。


「…サルファ、てめぇ何やったんだ?」

「えー? 俺、何もやってないよ☆」

「うぜぇ」

「聞かれたから答えたのに…! まぁの旦那ひっどーい☆」

「………ああ、うん。こりゃ俺でも殴りたくなるわ」


 しかし、それにしても殺意が漲り過ぎなような気が。

 サルファ本人に答える気はなさそう。

 これは他の人に聞くしかないでしょう。

 でもむぅちゃんは確実に、薬草三昧に浸りっぱなし。

 絶対に騎士さん達とサルファの醜聞なんて気にしてなさそうだし…

 これはいっそ、その辺の騎士(ひと)に直接聞いてみるべきでしょうか。


「まあ、良い。とにかく両者本気で、手加減せずにな」

「「「当然です!!」」」

「………この状況だと、本気でやんなきゃ俺死んじゃうんじゃないかな」

 

 かつてなく、薄っぺらい表情で。

 サルファの背中が微妙に煤けています。

 逃亡不可の状況下、奴は深い溜息とともに改めて騎士達に向きなおりました。


「それでは両者、互いに…はじめ!」


 シズリスさんの号令と、それは同時でした。

 いつでも標的(サルファ)に飛びかかることができるよう、予め溜めていたのでしょう。

 フライングにならないギリギリの瞬間。

 剣を持った騎士がサルファへ向けて飛び出しました。

 その背後に従うように、一歩遅れて鎚の騎士が走り出す。

 槍を持った騎士は牽制という己の役目を全うしようとしてか、サルファの退路を限定的な物にするような位置から、回り込んで突っ込んでいきます。

 一歩でも遅れれば、挟み打ち。

 左手側から追い立てるような槍の人。

 正面から向かってくる剣の人がいては、右手に逃げるか立ち向かうか…

 私は、サルファは逃げると思いました。

 サルファが戦うところなんて、見たことありませんけれど。

 普段の戦闘訓練から逃げようとする姿勢を見るに、逃げるだろうと。

 何の根拠もなく、そう思った訳ですが…

 そうそう、私の予想通りにことは運ばないようです。




 迫る三人の姿。

 視線をさっと走らせて確認したサルファは、考えるよりも早く腕をしならせる。

 投じられたのは、鎖。

 先端に付けられた分銅が、風を切り裂く。

 向かう先は、騎士のひとり。

 狙いはその手に握られた、槍。


 自分の方へと向かって走る騎士達。

 その勢い、力の方向性はサルファへと向いている。

 真っ直ぐに向かってくる勢いは、そうそう殺せるものではない。

 体の中心線を的確に狙った一撃は、打撃としてかなりの物になる。

 避けるのが難しいと判断した騎士は、咄嗟に腕を動かしていた。

 常の訓練通り、避けることができないのであれば、防ごうと。

 それがサルファの狙いに、ぴたりと合致する。


 絡め取られた槍。

 ほんの僅か猶予があれば、騎士は槍を引いていただろう。

 もしかしたら力比べに持ち込めば、サルファは容易く転倒したかもしれない。

 その、力比べに持ち込むほどの猶予があれば。

 しかし騎士は、サルファへと向かっていた勢いを止める猶予もなく。

 勢いの乗った体は、咄嗟に踏みとどまることもできない。

 サルファは向かって来るものを、己の方へと引き寄せるだけで。

 小さな干渉で容易く騎士の体勢は崩れ、しかし足の速度はなお早まる。

 足が前に出てしまうほど、サルファの引く力が強い。

 細くしなやかな筋肉に覆われた体は、見た目よりもずっと力があった。

 己の方へと引き寄せられた騎士を、そのまま鎖を振るうことで振り回す。

 正面から来る騎士達を妨害する位置に丁度向かうよう、サルファは後押しとばかりに可哀想な騎士を蹴り飛ばした。


 反応速度が、驚くほどに速い。

 サルファの強みは、きっとあの速度と器用さ。

 習熟した技を必要とする武器からも、それは窺い知れる。

 槍を絡め取っていた鎖はいつの間にか自由を取り戻し、空に踊っていた。

 サルファの操作で自在な動きを見せる。

 蛇のような、生き物のような。

 そんな連想を抱かせる、自在性。

 

 蹴り飛ばされた仲間を受け止めれば、大きな隙を生む。

 それを分かっているから、騎士達は仲間を受け止めない。 

 槍の騎士も心得ているのだろう。

 下手に足掻くよりも、倒れ込む勢いを利用して一時離脱を試みた。


 本来の直進を妨げられ、その分のタイムロス。

 動きに無駄が出てしまったのは、致し方ないこと。

 サルファが、生まれた僅かな隙間の時間、更に手を振るう。

 いつの間にか手に、何かが握られている。

 それは…赤い塗料の入った、小瓶。

 本来ならば血糊として使用している、それ。

 正しく今回も、塗料は血糊として使用された。


 見もせず、的確な位置に。

 サルファの手が投げつけた瓶は、放物線を描いて目標へと。


 一時離脱を試みた、騎士の頭部に命中した。


「!?」

「はい、そいつアウト~♪」


 場違いにも能天気に明るい、サルファの声がトドメを刺す。

「これがナイフだったら、その赤いの血糊じゃすまないゼ☆」

「…!!」

 聞く者の苛立たしさを増長させる、軽薄な声にふざけた口調。

 しかし言っていることは、事実。

 サルファがちらりとベストをめくると、そこには鋭い光のナイフが三本。

 そちらを投げつけていれば…そして、サルファの器用さであれば。

 サルファがその気であれば、確かに騎士は頭から血を流して死んでいた。


「…仕方ない。業腹だが、お前は戦線離脱(アウト)だ」

「く…っ あ、あんな奴に、屈辱!」


 サルファの主張を是としたシズリスが、槍持ちの騎士に失格を告げる。

 苦々しげな顔で、悔しがる騎士はもう参戦できない。

 赤く染まった頭を苛立たしげに振ってみても、赤く染まった視界は覆しようのない事実。

「…これ、何の塗料だ?」

 袖で拭っても、袖が赤く染まるだけ。

 なのに拭った視界は未だ赤い。

 洗い落とす為に、場を離れることもできず。

 真っ赤な姿で、騎士は諦め地に腰かけた。

 その姿は、傍から見ると惨殺死体が蘇ったかのようだ。

「水いる?」

「あ…かたじけない」

 見かねたロロイが、ざっぱりと水で騎士を丸洗いした。


 一人の脱落を、他の二人は内心に驚愕を隠しながら迎えた。

 いつもふらふらふらふら、練兵場まで来ては騎士を…

 …特に女性騎士を冷やかすだけ冷やかして遊んでいる穀潰し。

 それだけの印象だった男が、心身ともに鍛えた仲間を容易く手玉に取る。

 その光景に受けた衝撃は、計り知れない。

 今更驚きに隙を生むほど、ひよっこのつもりはない。

 それでも尚、体勢を崩しそうになる驚きがある。

 用心を込めて、鎚を持った騎士はじっとサルファを見つめた。

 体の大きさに見合う、迫力。

 どっしりと構えた騎士は実際よりも大きく見えるほどの威圧感がある。

 その威圧も、へらりと笑うサルファにどこまで効いているのか…


 にたぁ、と。

 サルファが笑った。


 得体のしれない笑みを警戒し、剣を持った騎士が身構える。

 その反応に、サルファの笑みが益々深まった。

「面白みがないのは、()だよねー」

 言うなり、サルファの足が跳ねる。

 今度は、サルファから。

 サルファが、自らの足で騎士達へと向かっていった。

 その足が、軽やかに地を踏みしめ…


 そして、観衆は見ることになる。

 サルファの、軽業師としての面目躍如というやつを。


 強く踏み込んだようには、見えなかった。

 いつもと同じ、いつも通り軽く歩いていたように。

 何事も特別なことなどしていないように見えたのに。


 なのに次の瞬間、サルファの身体は空にあった。

 跳躍力だけで、その姿は宙に踊る。

 大きな体の、騎士の頭よりも高く。

 そしてサルファは、上空から騎士の頭を狙ってきた。


 標的の姿が空にあるという、思わぬ事態に気を取られていた。

 だが騎士達も日々の訓練は戦う為にある。

 即座に気を取り直し、構えを改める。

 空にあれば体は自由になるまいと。

 軌道を予測し、騎士が剣を振るう。


 そして、二人の刃が交わされた。


 遥かな空で、サルファの安定していた体に捻りが加わる。

 縦の方向の捻り。

 防げない位置。間に合わない時間。

 その(ことごと)くを軽く、無視して。

 サルファの鎌が、騎士の剣とぶつかりあう。

 勢いを止めぬままサルファが鎖を手放すと、それはぐるりと遠心力に沿った動きを見せて…鎖の先、分銅が騎士目がけて走った。

 三人の中で一番身軽だった騎士は、その動きが見えたのだろうか。

 咄嗟に身を引き、後ろへ下がる。

 一瞬前まで彼がいた位置を、分銅が鋭く通過していく。

 通り過ぎた鎖を、傍にいた鎚の騎士が捕まえた。

 そのまま力任せにぐいと引っ張れば、揺らぐサルファの身体。

 元より、何も縋る縁のない中空のこと。

 呆気なく地面に激突するかと思われた。

 墜落は免れないと、誰もが思っていた。


 だけどサルファは、地面へと落ちることはなかった。

 自ら、回転の加わった華麗な動きで地に足をつける。

 無様に転び、倒れろと言う観衆の願いも虚しく無にして。

 足が軽い音を立て、息つく間もなくサルファの足が更に跳ねる。

 鎚の騎士に引かれた力を利用して。

 サルファは加えられた力を辿るようにして、鎚の騎士へと襲い掛かる。

 大きい体にはない、風の様な素早さ。

 体が大きい故に、小回りの利かない鎚の騎士。

 その背後に、サルファが回り込む。

 その顔には相変わらずの、にやにや笑い。

 サルファは、余裕どころか良く見れば遊んでいるような顔で。

 その顔と変わらない心情のまま、遊び半分の口調で。


「はい、二人目ー☆」


 いつの間にかその手には、二つ目の小瓶。

 一つ目と同じ、赤い塗料の入った硝子瓶。

 逆さにされたソレから、ざばっと水の流れる音がした。


 死人二号は、すごすごと観客側に重い足取りで向かっていった。


 そうして、場はサルファと剣を持った騎士の、一騎打ちの体を成していく。




さて次回、サルファと騎士さんはどーなってしまうのでしょーか!?

とりあえず、この展開から繋がるにしてはがっかりなことになります。

ええ、あくまでもこのシリーズは「コメディ」なので☆

さて、この後どうなるでしょう?

 a.寝る

 b.クロスカウンターパンチ

 c.真っ白に燃え尽きる

 d.相打ち大往生

 e.もぎ取られる。


次話は今夜中に投稿できそうです。

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