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62.女装公爵

今回は、皆様の町に繰り出すさいの衣装について♪


「れ、レオングリス……なんて変わり果てた姿に!」

「あにうえ、そんな風に言われると何だか僕が死んだみたいなんですけど」

「男としては死んだものも同然じゃないか、その衣装!」

「今のあにうえには、全く持って言われたくないお言葉ですね!」


 金髪従兄弟のお二人が、言葉を交わしておいでです。

 痛烈な皮肉交じり?

 いえいえ、レオングリス君の方はいたって全開笑顔です。

 なんでしょう…恥辱とか、屈辱とか、全く零ですか?

 このくらいの年なら、女装とか嫌がりそうなものなのに。

 むしろ満更でもないと、少年は陰りのない笑顔。

 着替えてきて、最初に鏡を見て、彼は一言こう言ったんです。


「………もっと不格好になるかと思いましたが、意外と悪くないよね?」

「あれ、割と乗り気?」

「あにうえには負けますけど、こうして見ると僕も結構美少女じゃないですか」


 その言葉に変な道に目覚めたのかと、勇者様が全身に鳥肌を立てて戦慄したのは余談です。

 しかしこの少年は結構図太いようで。

 変な道に目覚めた訳ではなく、客観的に見てそう判断したのだと。

 すぐにそう知れたのは、その目に全く陶酔の色がなかったから。

 それでも平然と受け入れているあたりに、やっぱり驚きます。

 この年代の少年とは思えない器の広さが感じられてしまいました。


 修道女姿の勇者様のことは、地上の月かといわんばかりに賛美していましたけどね!


「修道女も、こうして見ると悪くないですね…」

「レオングリス、頼むから不道徳的な道には走るなよ…!?」

 

 身内に対しても気苦労、それが勇者様の宿命なのでしょうか…。



 さてさて、レオングリス少年の格好です。

 今までの展開で十分皆様予測されていることと思いますが。


 女装です。

 女装以外の、何物でもありません。


 その姿は魔境の服飾業界に新風をもたらした麒麟児サイさん(本業騎士)が一押しとばかりに勧めてくれたドレス姿。

 清楚です。

 正統派です。

 それは、麗しの淑女に似合いの逸品。

 男性の憧れる、理想のお嬢さんが身にまとっていそうなドレス。

 だけど年若いレオングリス少年が着ると、可愛い系になってしまいました。

 そこまで豪華なものではなく、豪商のお嬢様風なのがまた良いですね。

 何と言うか、一般の男性にも頑張れば手が届くんじゃないかと錯覚させるような…

 そのあたり、狙っているような気がします。

 これがあからさまな貴族のドレスだったりすると、確実に手の届かない花ですからね。

 まあ、レオングリス少年が着ると若干幼いので、花というより蕾という感じ?

 敢えて声をかける男はロリコンの謗りを覚悟する必要がありますが。

 これが勇者様だったリすると、その美貌が一種「高根の花バリアー」と化して声をかけるのに只ならぬ勇気と度胸を費やすでしょうけれど!


 首元には喉仏を誤魔化す為に用意した、水色レースのチョーカー。

 丁度、極所に白いリボンと青い宝石をあしらっていて、その凹凸が本来なら喉仏を覆う形で隠してくれる筈でした。

 でもレオングリス少年の首はまだ細くて喉仏は存在を主張していません。

 レースの本体部分はサイズを調整して首にぴったり沿う形にしましたが、その上をぐるりと回るはずのリボンと宝石はちょっと緩い状態です。

 結果、首の中ほどで止まらずに下がり、鎖骨の上あたりで落ち着いています。

 そこで止まられると、襟飾りが一部見えなくなるんですけど…

 いっそのことと思いきって襟刳りの装飾を取っ払うと、上手い具合に調和しました。

 この替え襟、結構自信作だったんですけど仕方ありませんね。

 

 全体的に青味を帯びた、白いドレス。

 幅広の帯の上に、薄紅のリボンを巻いています。

 普通の蝶結びではなく、結び目は薔薇の形に整えました。

 その下からチョーカーと共布のレースと、薄紅リボンの生地で作った飾りを下しています。

 結構大きいので人目を惹くことでしょう。

 しかし本来なら背中側に回す、その飾り。

 レオングリス君はそれを、左腰に添える形で前の方まで持ってきています。

 本来なら背中側のアクセントとして大きめに作った飾りだったんですけど…

 前から見える場所に持ってきたことで、見た目の華やかさが倍増しています。

 

 真っ白な翻るスカートはふんわりと膨らみ、裾から覗くレースは淡紅。

 勇者様が着れば少し短いくらいだったそれ。

 でも、レオングリス少年だと脛の半ばまでを余裕で隠します。

 サイさんに注意されて、今回は絹地にも気を使いました。

 魔境で普通に使っている布が、人間の国では手に入りにくい珍品だとは盲点でした。

 今回はわざわざ人間の国から来た行商に都合してもらった絹なので、問題ありません!

 真っ更な汚れなき純白に、縫い付けた石は真珠……

 …にすると途端に希少価値が凄まじいことになるそうなので、今回は月晶石を使いました。

 揺らめく感じの質感が、この石の特徴。

 滑らかな石の光沢が、複雑な深みをもたらします。

 

 足のサイズは流石に誤魔化せません。

 だからブーツだけは、レオングリス君が元々履いていた物を流用。

 すっきりしたデザインの茶色いブーツに、白いアクセント。

 ドレスに対してそれほど違和のないデザインで助かりました。


 顔は若いので化粧は良いだろうということで、サルファの出番はなかったんですが…

 どうしましょう、違和感がありません。

 まだ性差の露骨に出始める年代ではなかった為か、普通に美少女です。

 鬘は勇者様に用意した予備。

 そこにカチューシャをつけて、完成です。

 勇者様と二人並ぶと、姉妹の様…


「なんか、いいとこのお嬢さんとその親戚で出家した介添え人って感じですね」


 良いところのお嬢さんは、決して一人では出歩かないと聞きます。

 どのようなところにも、介添え人が付き従うとか?

 勇者様の格好が修道女なので、はまり役です。

 全てを悲観して神に祈りだしそうな勇者様の悲壮な雰囲気が、それっぽさを出しています。

 麗しの乙女(笑)が二人も出来上がって、私は上機嫌。

 傑作がそれぞれ相応しい使用者を得て、ご満悦です。


「それ、それじゃ城下町へ行きましょーか♪」

「本当にこれで行くのか!?」

「またトマトスープを頭から被りたいのなら、相談に乗りますよ?」

「…………………………………………………これでいいです、はい」

 

 勇者様、陥落☆


 あ、ちなみに私の衣装は普通です。

 人間の国々に潜伏経験のある皆さんに話を聞いて、それを参考に衣装を作りました。

 町娘風♪ということで、私の普段着から牧歌的な雰囲気を抜いた感じ?

 多分、大きく違うということはないと思うんですけど…

 まあ、おかしければおかしいなりに何とか誤魔化しましょう。

 細部が魔境風になってしまったりしても、それは仕方のないことです。

 人間の国の一般的なお嬢さんがどんな服を着ているのか、私は見たことがないんですから。


 まぁちゃんは面倒臭がって、下級の騎士さんから借りた服。

 下級の騎士さんなので、その服は対して立派でも凝ってもいない。

 たったそれだけの服なのに、洗練されて見えるのは超絶美形(まぁちゃん)効果でしょうか。

 装飾らしい装飾品はないんですけど、問題は全然なさそうです。

 まあ、いざという時の為にとか言って、自前の装飾をつけてましたけどね。

 装飾品の形をとった、魔法道具を。

 …魔法の道具は希少な素材を使っているので、普通に宝飾品で通るものばかりですから。


 せっちゃんは生半可な衣装だと違和感が凄まじいことになります。

 安っぽい服って、基本的に似合わないんですよね…。

 だからと言って、せっちゃんの手持ち衣装を使えば大事になりそうです。

 どこからどう見ても【貴人!!】って感じですからね。

 色々と試行錯誤した末、せっちゃんは自ら衣装を定めました。


 大きな、猫のきぐるみを。


 …現在、私達の中に大きな猫さんが一人います。

 本人楽しそうなので、多分大丈夫です。

 ………目立ちますけど。


 リリフとロロイは、今回は留守番すると言ってきました。

 人間の国にそこまで興味もないし、翼が隠せないから目立つだろうとのこと。

 目立つという点でなら、仲間に超絶美形が複数いることや大きな猫さんがいる時点ですでに十分目立っているんですけど…

 空気の読める子竜は、これ以上混沌とすることもないだろうとさらり言います。

 しかし、私は気付きました。

 …この二人、本音を言えば面倒臭いだけですね。

 力加減に気を使うので、無力な人間の群れている場所には行きたくないと、前に言っていたことを思い出しました。

 本人達が楽しめないのなら、仕方ありませんね。

 代わりに猫やカリカの面倒を見ているというので、今日は二人と別行動です。


 それとは逆に、珍しく乗り気なのがむぅちゃん。

 考えてみればこの国に来て以来、ずっと薬草園に入り浸り。

 思えば、城下町の薬問屋などはまだ回っていないとのこと。

 それはわくわくするね!

 二人で滾りました。

 むぅちゃんは姿にも特に問題ないので、普段のままです。

 ついでに言うと、サルファもいつもと変わりません。

 

 以上、これが今日のお出かけの面子です!

 …ん? シズリスさん?

 あれ、いたんですか?

 私が台無しにした勇者様と同じ衣装をまとったシズリスさん。

 私がやっと気づいたことに、所在なさそうに肩を落としています。

 勇者様を護衛なしで単独行動させる訳にはいかないとのこと。

 うん、今回の外出にもついてくる気なんですね。

 一緒に行くのは構いません。

 けれど、うっかり修道女をいつも通りに扱わないで下さいね?




 いきなり城門を出ててくてく行ったら、不審なことこの上ないとのことで。

 私達はこっそり騎士団の馬車をお借りしました。

 これで市街地から少し離れた場所に下ろしてもらって、そこから見学開始です。

 自由にぶらつこうと、私達の意欲は鰻上りですよ!

 勇者様以外。


 人の目はどこにでもあるモノ。

 決して避けることのできないモノ。

 でも騎士団は何かの事件が起きた時、重要参考人として人を呼ぶこともあれば、事件解決の協力者として民間人と行動を共にすることもあるとのことで。

 貴族の馬車を使うよりはおかしくないだろうということで、今回は採用しました。

 まぁちゃんが下級騎士の格好をしていることもあり、大丈夫だろうと勇者様も仰います。

 それならシズリスさんも下級騎士の格好すれば良かったんじゃないかなぁと思いましたが、朝の段階では勇者様のお友達設定で傍に張り付くつもりだったのだそうです。

 台無しにしちゃってゴメンネ★ ←悪びれない。



一部露出を期待されていた方もいたようですが…こうなりました☆

これから暑くなるというのに、皆様ものの見事に露出が低い…。

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