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34.変身もとい改造大計画

 よく分かりませんが、妙な男らしさを炸裂したまぁちゃん。

 我が身を犠牲にしてでも、私達を守ろうという熱意は認めます。

 凄く立派なおにいちゃん魂ですね。

 でも、その決意により、まぁちゃんが女装で笑いを取ることになりました。

 まぁちゃん、そこまで体を張ってどうするの…!?


 魔王がそれでいいのでしょうか。

 ハテノ村に帰ったら、確認してみようと思います。

 うん、りっちゃんやヨシュアンさん、ラーラお姉ちゃんとかに聞いてみようっと。

 その他、思いつく限りの魔王城関係者に聞いて回ってみようと思います。

 特にヨシュアンさん…カリスマ画伯には根掘り葉掘りと食いつかれそうな気もしますが。

 まあ、私が犠牲(ネタ)にされる訳でもないし。

 快く、とびっきり詳細にお話してあげようと思います。

 …画伯が賄賂にくれるお菓子、色んな国の名店からのお取り寄せで美味しいんですよねー。


 → 魔王(まぁちゃん)はリアンカにお菓子で売られた!

   風聞が10下がる未来が確約された!


 誰かの為と言いながら、女装に走るってどんな心境なんでしょう?

 女の子の私には理解できません。

 だって私が男装しても、私には何のダメージもないし。


 ………と、言いつつも。

 実はそこはかとなく楽しみで仕方ありません。

 せっちゃんもわくわくしています。

 腕が鳴るぜ☆


 まぁちゃんの髪の毛は、物凄くさらさら綺麗で十分な長さ。

 どんなヘアアレンジもどんと来い☆な長さですから。

 敢えて何をしたとは言いません。

 ですが、昔からよく私とせっちゃんの玩具にされてきた部位の一つです。

 複雑かつ可憐に結いあげ、宝石や花で飾り立てたりしたなぁ。


 ……結構最近の話ですが。


 お団子ツインテールとか、意外に似合うよ。

 まぁちゃんもまぁちゃんで、実害がないからと大概は放置です。

 彼は私とせっちゃんに大らかで心が広すぎます。

 私とせっちゃんに弄り放題遊ばれた後、髪が神々しいことになっていても気にしません。

 髪型のことを忘れてうっかり出歩き、魔王城の話題を独占したこともあります。

 あの時は………城中がまぁちゃんの姿に、ざわ、ざわ、していました。

 その時ばかりは、まぁちゃんもなんだか恥ずかしそうだったかな。


 そんなまぁちゃんの女装。


 腕 が 鳴 り ま す 。

 それはもう、べっきべきに。

 薬師の癖に髪結い師と競えると言われたこの手指が、贄(髪の毛)を求めて蠢きますよ!


 しかし、私が思う様まぁちゃんで遊べたかというと、答えは否でした。

 何故なら、まぁちゃんの女装プロデュース計画を預けられたのが、私ではなかったから。

 それが何故か、 サ ル フ ァ だったからです。

 ………何故に、奴。

 残念すぎて納得がいきません。


「なんで! 何故なのまぁちゃん!」

「笑いを取るんだぞ? 芸人本職の感性に任せた方が安心だろーが。


あと、リアンカに任せようかと思ったら、なんか身の危険を感じた」


「チッ…」

 

 まぁちゃんったら、危機察知能力も一流!

 残念なことこの上ありませんが、この上はサルファに強請りましょう。

 強請(ねだ)りと書いて強請(ゆすり)と読みます。

 この二字の文字が同一であることは、素晴らしいぐらいによく出来ていると思います。


「そんな訳でサルファ、ちょっと頭貸して?」

「リアンカちゃん、そーんな可愛らしく言われても、俺の頭は蹴鞠にゃならないって☆」

「やっだ、誰も蹴るなんて言ってないわよ! 首から下がついてたら蹴り難いでしょ?」

「じゃ、実のところは?」

「 え ぐ る 、とか?」

「わー…笑顔で言い切るリアンカちゃんに、俺、死ぬかもって悪寒が止まらなーい☆」


 両者、互いに笑顔。

 なのに近くにいる勇者様の冷汗が止まりません。

 顔が紫色になりつつあります。チアノーゼですか?

 勇者様、勇者様、まだ死んでないのに死相を出すなんてなんて器用なんでしょう。

 でもしっかり! 生きろ! こんなことで死なないで!

 肝心のサルファの方は……全く動じていませんね。

 この笑顔、意外と曲者です。

 出会ったばかりの頃は分かりませんでしたが、此奴、意外に侮れないんですよねー?

 マルエル婆の教育の副産物でしょうか。

 魔境に順応したからでしょうか。

 肝が太いのは、出会った当初から変わりませんが。

 以前に比べると感情の振り幅も制御されて、動揺する余地も減っている気がします。

 ………ここはひとつ、強制排除でも…?


「………勇者様、放してくださいよー」

「リアンカ、抑えて。流石に返り血に染まった姿で舞踏会に出られると困るんだ」

「誰がそんな物騒なことをするんですか」

「訂正する。返り血に染まっていなくても、物騒な気配を引きずったままは困るから。

そのまま舞踏会に出られると場が混迷するから、止めてほしい」

「………むぅ」


 何かを察した勇者様に、物理的に捕獲されてしまいました。

 残念!



 こういった経緯で、まぁちゃんから女装計画の全貌を任されたサルファ。

 奴は今後の方針は、とまぁちゃんに尋ねました。

 女装するにしても、色々な系統があるそうです。

 そんな様々な選択肢の中、どんな風に改造しよっか?と気軽に尋ねています。

 それにまぁちゃんが真顔で一つ、頷いて。


「場末の酒場の娼婦(化粧の分厚い年増)風で」


 言いました。


「もしくはゲイバーに勤める売れっ子No.3の雄姐さん(化粧の分厚い年増)風で」


 正直、そこまで思い切るのかと思いました。


 サルファは妙に薄っぺらくも爽やかな…能面めいた張付き笑顔で言いました。


「……………全力で努めるよ☆」



 超大作ができそうな、予感。



 


 その後、まぁちゃんの完成図を見て。

 誰一人、笑うことなど……(我慢するしか)、出来ず。

 必死に、目を逸らしました。


「あー…源氏名どうすっかな」


「(げ、源氏名……っ)」

「(まぁちゃん……そこまでなりきるの!)」

「(細かい設定☆作っちゃったからなー(笑)」


「よし、てめぇら。印象と直感で答えろ。


 ……アタクシのお名前は? 」


 何となく、印象で答えました。

 とりあえず、皆で順番に。


「レディ・マデリーン」

「てめぇ、勇者。外見の印象じゃなくてあだ名(まぁちゃん)の印象で答えたろ。却下」


「まだむー!」

「せっちゃん……そりゃ名前じゃなくて、敬称だ」


「バトルアンデス」

「ロロイ? 一体どんな印象を得たのか、後でちょっとおにーさんとお話しよーな?」


「レディ・パトリシアなんてどうです?」

「あー…そういう、お嬢様な感じじゃねぇな。適度に場末感漂う安っぽい名前はねーか?」


「エリザベート・バートリが思い浮かんだんですけど……何故でしょう?」

「リリフ、お前、俺の本名(バトゥーリ)から連想しただけだろ。その名前」


「どの方面に走れば面白いかな………とりあえず、ウルトラま●んとか、どう?」

「リアンカ? ここでネタに走るのはやめよーな?」


「駄目だ…。話にならねぇな」

 がしがし。

 まぁちゃんは後ろ頭をかきながら、呆れたように溜息一つ。

 それからふと、曖昧な顔をしているサルファに気づいたようでした。

 いつもなら調子に乗ってそうな奴が、物凄く曖昧に笑っていて不気味です。


「サルファ、なんぞ言いたいことでもあんのか?」

「いやー…ほら、自分の作品だからさ。俺が口出しすっとウザいかな~って」

「阿呆。てめぇがうぜーのはいつものことだろーが」

「うわぁ素敵にばっさり! 流石リアンカちゃんの従兄! 血のなせるワザ!?」

「その理屈でいったら、せっちゃんはどーなるよ!?」

 せっちゃんはせっちゃんで、時として私達に負けず劣らず酷い発言をするのですが。

 そんな現実をさらっと忘れたまぁちゃんに、せっちゃんはきょとんとしてるのみ。

 せっちゃん、自覚はありませんからね。

 首を傾げて、理解できない話の中から理解できるポイントを拾って。

 そして、彼女の頭がはじき出した結論は。


「あ、あにさまぁぁ……姉様とおそろい、ずるいですの。仲間はずれはいやですのぉ…」


 な、泣いちゃったんですけど、まぁちゃん!


「せっちゃんもっ ふくっぅ……せっちゃ、ん、もっ …あにさま、や、ねぇさまとっ

おそ、おそろいがいぃですの………」


「まぁちゃんー!? せっちゃん、滅茶苦茶しゃくり上げてんですけど!」

「泣かせる気は、泣かせる気はなかったんだ!! そんなつもりじゃっ!」


 まあ、まさか誰が思うでしょう。

 酷い人間扱いにくくられた私達に対して、仲間外れは嫌だなんて泣くなんて。

 

 ……くっ

 なんて可愛いの、せっちゃん…!

 慕われている現実を前に、その勘違いぶりも含めて可愛くて仕方ありません。

 せっちゃん、せっちゃん、泣かないで。

 まぁちゃんは決して君を仲間外れにしようなんて思ったわけじゃないよ。

 むしろまぁちゃん的には、せっちゃんの天使ぶりを賞賛するくらいの気持ちだったはず。

 泣いちゃったらまぁちゃんが困っちゃうよ(笑)

 まあ、いつだってまぁちゃんを困らせるのは私とせっちゃんの専売特許ですが。

 専売なので、まあ、存分に困らせちゃってもいいでしょう。

 

 困ったようにせっちゃんを片腕で抱き上げて、しっかりと自分の肩に妹の顔を押し付けて。

 宥めるように、優しくやさしく、まぁちゃんがせっちゃんの背中を叩きます。

 ぽんぽん、ぽん、と。

 一定のリズムでゆっくり、ゆっくり。


「ね~むれー、ね~むれー」


 取り合えず落ち着かせようと思ったのか、必殺☆子守唄が炸裂。

 魔力が篭められているので、凄い威力ではありますが。

「ま、まぁちゃん! 眠らせちゃまずいよ!」

 今ここで眠りに落とされたら、確実に全員が何をやろうと明日の朝までぐっすりです!

「はっ」

「眠らせるなら、舞踏会が終わってからにしてあげて…」

 魔力の耐性が薄い人から、なんだかぐらぐらしています。

 頭を抱えているのは、脳に何か来たんですか。

 現在の室内、自分達の準備の為にいつの間にか学友さん達は退室済みで。

 魔性の歌声に一発で意識を刈られそうになり、ぐらぐらしているのは一名のみでしたが。

 しかし采配を振るう手腕に優れたサディアスさんを眠らされるのも困ります。

 私達は慌ててまぁちゃんの歌声を阻止し、別の方法でせっちゃんを宥めにかかります。

 

 その一連の中で、なんだかどうでも良くなったのでしょう。

 お座成りに、まぁちゃんがサルファに言い渡しました。


「もうそれどころじゃねーし。俺の源氏名、作者のてめぇが適当につけとけ」

「わぁい☆やった!」

 

 喜ぶサルファは、既になにやら該当するものを準備していたようで。

 そう、即ち、まぁちゃんの源氏名を。

 どういうことでしょう?

 サルファは嬉々として言いました。


「女装作ってる時から、『ナターシャ姐さん』ってイメージで作ってたんだよね☆」


 どうやらプロデュース担当者的に、源氏名はとうの昔に決定していたようでした。





本日、28日月曜日。

仕事の後、祖父母の家まで直行し、そのまま一泊の予定。

我が家の毎年の恒例、GWの里帰りでございます。

祖父母の家はインターネット環境が皆無。

なので火曜日の夜まで感想のお返事等遅れると思います。

更に丸一日パソコンに触れることが出来ないので、火曜の夜に投稿できるかも不安です。

そのあたり、ご容赦を~。


それから活動報告のアンケートにご協力くださいました皆様、ありがとうございました。

おかげで貴重なご意見を多数頂くことができ、今後の番外編に予定通り反映させていただこうと思います。

私の体調のことまで気遣ってくださった方々、ありがとうございました。

体の自由が許す限り、体調を崩さない範囲で今後もがんばらせていただこうと思います。

ちょっと更新などが遅れることもありますが、大目に見てやってください。


番外編の傾向アンケートの方は、番外編置き場への次の投稿で結果をお知らせさせていただきたいと思います。


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