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30.メルヘン

今回から、かねてより予定の「舞踏会編」に入ります。

夜の蝶が光臨☆する予定です。

 何だか慌ただしく、激しい言葉の飛び交いとともにお昼ごはんの時間は終了を告げました。

 予定時間を押して、国王様は焦り気味。

 どうやら来る式典を前に、予定がパンパンに詰まっているそうです。

 連日仕事の他に、続々と到着する周辺諸国や遠方の有力国の方々のお持て成し。

 そういった方々の巻き起こす問題の処理。

 そして何より大事な式典の準備打ち合わせ。


  → 国王は、現在八人くらいに分身したい。


 勇者様も帰国したからには、続々と仕事を詰められつつあるようです。

 しかしあの(・・)勇者様が!

 驚天動地なことですが!

 なんと、女連れで帰ってきた訳で!

 ようやっと望ましい春の到来かと、王宮の役人達は浮かれているそうです。

 そして令嬢達は呪詛に余念がないそうです。

 色々な意味で渦中にいる勇者様。

 そんな彼の、珍しい事態を受けて臣下の方々張り切った! 

 せっかく女連れで帰ってきたのだから、なるべく仕事は最低限にして羽を伸ばさせ、連れてきた女性が逃げないように交流を深めさせようという魂胆で派手な進展を狙っているそうです。

 …と、いったようなことを、勇者様ご本人の口から耳にする私達。


「そんな訳で、宮廷中が浮かれているんだ。もしかしたら変な画策をしてくる奴もいるかもしれない。本人としては、不甲斐無い俺の背を押す…くらいのつもりで何をしてくるか」

「大変だね、勇者様」

「ああ、だからリアンカや姫も気をつけてくれ。何か変なことを仕掛けてくるかもしれないが、そんな時こそ冷静に。良いか、まぁ殿……冷静に、だからな」

 

 私とせっちゃんに言いながら、何故か最後はまぁちゃんに念を押す勇者様。

 いえ、言わんと欲するところは察しますが。

 王宮の不穏な空気を感じ取り、私達に釘刺し及び注意喚起と勇者様はお忙しい。

 そしてそんな状況でも。

 勇者様はある面において私達に頼らないといけない訳で。

 それをご自分で分かっているので、勇者様は申し訳なさそう。

 気にすること、ないのにね。

 お友達なら、助けあいも貶め合いも日常茶飯事だもの。

 …え? 貶め合いは断じて違う?

 あれ、そうだっけ???


 首を傾げたら、勇者様が両手で顔を覆って俯いてしまいました。


 うん、いつも通りの平和な日常です。



 でも、いつも通りとは言えない予定がこの後、用意されていました。

 それは、国王様の一言で私達の知るところとなって…

 勇者様は一人で戦うつもりだったようですが。

 ええ、お友達ですから。

 勇者様は、水臭いです。

 そんな面白そ………もとい、大変そうなことを黙っているなんて。

 まして、一人で耐えようなんて!

 私達にも見物させ………協力させて下さいよ!

 そんな勇者様の都合に敢えて巻き込まれて、私達も参戦することにしたのです。


「そうだ、ライオット。お前の帰還を祝して行われる今夜の舞踏会だが………」


 そのお話が、初耳すぎて。

 私達はぱちくりと目を瞬き、首を傾げてしまったのでした。


 

 その後、国王様からも参加してやってくれないかと頼まれました。

 こういう催しものは、客人を持成す為のものでもあるとのことです。

 それと同時、息子さんも心配なのでしょう。

 参加して、なるべく勇者様の傍にいてやってほしいと言われてしまいました。

 まあ、言われずともそのつもりでしたけど。

 やっぱりこういうイベントは、お友達や仲の良い者同士で楽しみたいですからね!

 それに、こちらの作法に疎い私達には、確実に勇者様というフォロー役が必要です。

 それをちゃんと弁えていたので、答えは一つでした。

 私達は勇者様にがっちり食いついてどこまでもお供しますと元気に答えましたとも。


 まさかその裏側に、親御さんの幸先不安な計画が…

 「なるべく息子とお嬢さんを仲良くさせようキャンペーン」が隠れていたとは露知らず。

 そりゃ舞踏会の間中べったりだったら嫌でも噂になりますし、疑惑が掻き立てられますよね。

 でもそんなものには思い至りもしない私です。

 私と、せっちゃんです。

 そして私以上に疎いのがロロとリリです。

 現状、問題点をただ一人把握しているだろう勇者様が頭を抱えていました。

 問題点を分かっていながら頼らざるを得ない己の境遇に、更に頭痛が増していそうです。

 加えて明言はしないけど、問題点に気づいていそうなまぁちゃん。

 彼も、苦笑を浮かべて私達を見ておりました。


 そんなまぁちゃんの、華麗なる変身が炸裂するまで後二時間。




 

 離宮に戻り付くなり、勇者様は素敵な誠意を見せてくれました。


 腰は直角90°!

 両足はびしりと揃えられ!

 指先までも神経の行き届いた姿勢の整い!

 そして腰から下げられた頭。


 見事なまでの、頭の下げっぷりでした。


 おい、王子様。

 それで良いのか、王子様。

 王子様がそんな易々と頭を下げてよろしいんですかー?


 こいつどうしたんだ、みたいな私達の視線が飛び交います。

 勇者様は頭を深く下げ、私達から顔の見えない姿勢のまま。

 そのまま、真剣で切実さの込められた声で仰ったのです。


「済まない! だが、頼む! 俺の命を助けると思って協力してもらえないだろうか…!

舞踏会のような場だと、いつもより割増しで女性からの危機感が強まるんだ!!」


 それは、自分の女性除けに協力してもらいたいという要請…いえ、懇願。


 必死でした。

 それはもう、勇者様は必死でした。

 そんなに?

 え、そんな頭下げてお願いしちゃうくらいに?

 そんなに貴族のご令嬢方から肉食の気配が漂ってるんですか?

 普段以上のアプローチ、食らっちゃうんですか?

 勇者様を出迎える為に来ていたサディアスさんが、しみじみと言いました。

「殿下が旅に出られてから、一年………殿下不在の反動で、恐ろしいことになるでしょうね」

「昨夜は突然の帰還で殿下のお姿を見た者も少なく、準備もできていなかっただろうから夜襲もなかった…だが、今夜から警戒は必要だろうね」

 今、なにやら普通に「夜襲」という単語が聞こえてきたんですが……

 え、それって大国のお城で普通にある日常なんですか?

 サディアスさんと一緒にいたオーレリアスさんも、何やら遠い目をしています。

 どうでもいいですが、胸に抱えたカリカ返してください。

 大型肉食獣の相手も手慣れているからと、不在の間の面倒を頼まれてくれたのは良いんですけど……さっさと返してください。私のです。

 オーレリアスさんの腕からカリカを奪還!

 すると、哺乳類限定召喚士の青年が何だか寂しそうな顔をしました。

 そんな顔しても、渡しませんよ…!?


 私達が秘かな攻防戦を繰り広げている間に、せっちゃんがこてっと首を傾げます。

 まぁちゃんの裾をちょいちょいと引いて、絶世の美少女様は上目がちに問いかけました。

「あに様、勇者さんは一体何を謝っていますの?」

「奴ぁ苦労性だかんな。舞踏会で一緒に過ごしてもらうことが申し訳なくてならねーんだろ」

「ぐっ…その通りだ、まぁ殿」

 ふふんっと笑うまぁちゃんに、勇者様の頭がますます下がります。

 そんな勇者様を、せっちゃんが更に不思議そうに眺めていました。

「私達、せっちゃんもあに様もリャン姉様も、一緒に行きたくて行くんですのよ?

だって行きたくなければ、そもそもついて行きませんもの」

「おお、真理だな。せっちゃん」

「わぁ、あに様に褒められましたの!」 

 嬉しそうにふわっと。

 一瞬で花が咲いたみたいにふわっと、せっちゃんの頬笑み炸裂!

 あまりに眩く、無垢で真っ白。

「一緒に行きたくて行くんですもの! ごめんなさいは、いりませんのよ?」

「そ、そうか………」

 天使の如き笑みが目に刺さったのか、青年達が立ちつくします。

 そっと目を逸らす、野郎達。

 本当に眩しそう。

 物理的に眩しい訳じゃないのに、目が翳みそうです。

「眩しいな…」

 本当に眩しそうに呟く勇者様に、私はそっとサングラスを貸してあげました。

 ちなみに私は既に装着済みです。



「それじゃ、全員そろったな?」

「抜かりなく、二人とも連れ戻してきたけど」

「上出来だ、シズ何某(なにがし)

「シズリスなんだけど」

「細けぇことは気にすんな」

 勇者様の私的な居間に、私達が集結です。

 勇者様が帰ってくるまでの間、名代として過ごしていたむぅちゃんやサルファにも出席義務があるとのことで、二人も強制的に連れ戻されています。

 …この二人を回収に向かって、時間をかけずに戻ってきたシズリスさん。

 その手腕が意外と侮れなくて戦慄が止まりません。

 世の中、手際が良いだけじゃできないことがあります。

 興味深い研究対象を前にしたむぅちゃん。

 若く溌剌とした女性の集団を前に調子づいたサルファ。

 そんな二人を易々と連れ戻すなんて、どんな手腕をお持ちですか…?

 どうやら王子様の学友に選ばれるような青年は、印象にそぐわず優秀なようで。

 ちょっと、ほんとうに意外でした。


 勇者様の御学友のお陰で、舞踏会に出席しなきゃならない面子は案外すぐに集まりました。

 これから準備となると、本当に急ピッチ。

 今すぐ支度にとりかからないとならない時間です。

 特に、女性陣はドレス着用が義務ですから!

 そんな私達を一つ所に集めて、打ち合わせが必要だと言いだした人がいます。

「さて、行くとなった訳だが」

 何故か仕切っているのはまぁちゃん。

 一体、舞踏会になんの打ち合わせが必要なのかな?

 疑問で一杯の私に、まぁちゃんは指を二本立てて示してきました。

「今夜の議題は二つ。

ずばり、衣装をどうするか? それとエスコートはどう組み分けるか? だ」

「まぁちゃん、まぁちゃん、それってそんな大袈裟に話し合うようなことなの?」

「ばっか、衣装もエスコートも大事なことだろーが!」

 本当かなぁ?

 でも口答えばっかりしていても、話は進まない。

 ここは拝聴し、お任せしましょう。

 準備とか、面倒だし。


 いいか、とまぁちゃんが前置きます。

「勇者はここでは注目の的だ。その傍にいるってだけでも、ただでさえ鬱陶しい俺らへの注目だって普段の何倍にもなるだろーよ。そんな目立つ俺らが適当やってると舐められるだろうが! 特にリアンカが!」

「え、私の心配?」

「馬鹿野郎、お前以上に心配な奴はせっちゃんしかいねぇよ!」

 ……私とせっちゃん、まぁちゃんに結構気苦労かけてそーですね。

「正直に言うと、だ。この中で一番ちょっかいかけやすそうな、ちょろそうな奴に見えんのはリアンカだと思っている。内実はともかく、外見で判断した場合な」

「まぁちゃん、喧嘩売ってる?」

「売ってねーよ! 心配してんだよ! わかってくれ、この保護者(おや)心!

近寄りがたい美少女(せっちゃんは)ともかく、客観的に見てリアンカは声かけやすそうに見えんだよ!」

 それ、どういう意味だろう…?


「えーと、それで衣装だっけ」

「そう。舐められない為には、隙なく整える必要がある。ちなみに野郎はどうでもいい」

「まぁちゃん…清々しいまでに私とせっちゃんの保護者様だね」

「まーな」


 そんなまぁちゃんの主張により、女性陣の衣装に気合を入れろとのお達しです。

 私の持ってきたドレス類を提示してみましたが、それは勇者様に止められました。

「取っておきの、ここぞという時に着るべきだ。

魔境から来た事を、こんなに目に見える形で示しているんだから」

 今日はまだ、来たばかりということもあって私やせっちゃん、まぁちゃんは正体不明の謎めいた存在です。それに昨日は、到着してすぐに勇者様の離宮に引っ込んだし。

 目撃者は限られ、私達の正体を知る人も限られる現状。

 まあ、数日で魔境出身だとは知れ渡るでしょうけれど。

 でもこの誰も正体を知らないという、謎めいた存在感を今日は利用しようとのこと。

 誰も知らないという得体の知れなさが、周囲の牽制に役立つそうです。

「ミステリアスって、良い言葉だしぃ?」

 …サルファの言葉は、みんなでこぞって無視の方向で!


 せっちゃんは、お姫様だけあってかなりの衣装持ちです。

 そして今回の遠出にも、竜三頭に手分けして積む位の荷物を持ってきています。

 なので、せっちゃんの衣装は直ぐに決まりました。

 衣装数の少ない私と違って、勿体ぶる必要がありませんから。

「姉様、せっちゃんのドレス貸しますの!」

「せっちゃん………嬉しいけれど、気持ちだけもらっちゃう!」

「せっちゃんのドレスじゃ、お嫌ですの…?」

 うりゅ、と。

 せっちゃんの目が潤んだ。

 私はせっちゃんの両肩を勢いをこめて強く掴み、強い口調で言いました。

「嫌じゃない! 嫌じゃないけど、サイズの問題って分かるかな!?」

 よく、考えて、せっちゃん…

 単純に考えて、せっちゃんのドレスに私が入らない………


「せっちゃん、サイズがね、サイズが………致命的に、合わないの」

「せっちゃんのドレス、裾長めですのよ? リャン姉様が着ても丈は大丈夫ですの!」

(そっち)の問題じゃないから!」


 体が小さく、全体もほっそりと細めのせっちゃん。

 腕も足も細ければ、腰も細くて胸も(以下略)。

 そしてせっちゃんのドレスはどれもこれも体の線にぴったりと沿った細身のデザイン。

 もう体の細さがこれでもかという程に浮き彫りにされる、彼女だけに許されたドレスです。

 着る人を選ぶどころか、せっちゃんにしか着こなせません。

 元々せっちゃん以外が着ることを想定していない、完全オーダーメイド。

 そんなドレスが着れるものですかー!

 

 腕が入りません(泣)

 足が入りません(泣)

 腰も勿論入りません(大泣)

 それに何より、胸が………っ(滂沱)

 確実に、ぱつぱつじゃ済みません。

 物理的に入らないんです……………


 せっちゃんの細さの前に、私ノックアウト!

 無邪気な善意を前に、改めてせっちゃんの細さと我が身を比べて打ちのめされそうです。

 そんな私を慰めようとしてか、慌てて勇者様が言いました。

「リアンカだって、充分細いじゃないか!」

「ふ、ふふふ……なんて心に響かない慰め」

「………いや、本当に細いだろ?」

 勇者様に、不可解という顔で見られました。

 

 そりゃ、細けりゃ良いというものでもありませんけど。

 全体的なバランスに対して細すぎたら、病的に見えて可愛くないけれど。

 それでも、改めて現実を突きつけられたら、私だって時には落ち込むというものです。

 

 慰めは効果がないと察した勇者様が、別の提案で気を逸らそうとしてきました。

「そうだ、ドレスなら王宮に貸出用のものが…」

「却下」

 そしてまぁちゃんにばっさりと切り捨てられました。


「理由を聞いても…? 現状ドレスを用意する伝手も、準備期間もないのに他にどうする」

「あ゛あ゛? ドレスっつっても、どうせシーズンごとに新着したりしてる訳でもねぇだろ」

「まあ、持ち主のいない衣服をそう頻繁に新着はしない…かな」

「それつまり、流行遅れの型落ち品ってことだろーが! 更に言うと貸出用。

即ち、誰にでも無難に合うような、パッとしないドレスってことだろ」

 まぁちゃんの鋭い指摘に、勇者様がはっとしました。

 どうやら細かいことは分からなくても、服飾事情にそこまで疎くはなさそうです。

 勇者様は問題点を直ぐにご理解なさいました。

「持ち主に合わせて作られた訳じゃねーから、似合う似合わないも判断が今一な、汎用的なサイズに汎用的なデザイン! サイズが微妙に合わないと、全体の印象に響くだろ。

どう考えても野暮ったい。流行遅れの、野暮ったくて借り物衣装。

そんなの着ていったら、絶対確実に舐められるに決まってんだろーが!?」

「済まない、まぁ殿! その通りだ、俺が悪かった…!」

「こういう時はなぁ、流行に合わせるんじゃなくてむしろ流行を作るくらいの勢いが必要なんだよ! そこを汎用的で平凡なデザインの衣装とか……!」

「わかった、わかったからどうかもう鎮まってくれ…!」

 

 勇者様がまぁちゃんを宥めるのに、十五分が必要とされました。



 でも、鎮まったまぁちゃんが納得するような代案も見つかりません。

「さっきも言ったが、俺達には伝手も時間もない。こんな状況でどうするんだ」

 やっぱりリアンカに持参の衣装を着てもらうか? と提案する勇者様。

 それをまぁちゃんは、「ここぞの時の取っておき」だと譲りません。

 じゃーどうするんですかー。

 正直、議論の焦点である私自身がもう面倒になっているんですけど。


 途中でオーレリアスさんが妻か従妹の衣装を借りてきましょうか、とも言いました。

 嫁がいたんですか、オーレリアスさん…!?

 驚きましたが、思い返してみれば『おうさま』以上のインパクトもない話ですね。

 そしてまぁちゃんは、その提案に「借り物云々」とさっきとほぼ同じ拒否を示します。

 いや、本当にそれでどうするの…?


 案も出尽くしたところで、まぁちゃんは納得しません。

 皆からどうするのと、疑惑の目を向けられます。

 そこでまぁちゃんは溜息をつき、すっくと立ち上がりました。


「ちょっと待ってろ」


 そう言って、すたすた向かった先は………窓?

 勇者様の居間、この三階の窓へと歩いていきます。

 テラスやら何やらがあるわけでもない、ただの本当の窓です。

 ???

 そっちに、何かあるの?

 突然の行動に、私達は結果も見えずに首を傾げます。

 なになに、何するの?

 まぁちゃんは無造作に窓を開けると、大胆に身を乗り出して……

 飛び降りるの? ねえ、飛び降りるの?

 部屋の中に残した右足一本。

 窓枠から完全に飛び出している左足一本。

 右手で窓の縁を掴み、上半身ごとぐいぐいと左手を壁沿い斜め上空へと伸ばして…

 

「よっ」


 ぱしっと、何かを掴む音がした。

 それから、「ぎゅむっ」と何かが潰れる音…いえ、悲鳴?


 何かを掴んだらしいまぁちゃんは、それからすたすたとこっちに戻ってきました。

 その左腕に、何かを握りこんだまま。

 握る込んだ手の中で、何かがじたばたと暴れる気配が…

 え、なに捕まえたの?

 得体の知れない思いで、私も勇者様もじっと凝視してしまいます。

 不思議なことなんて何もない、はず………の、人間の国。

 そこでまぁちゃんは一体ナニを捕まえたというのでしょう。


「ま、まぁちゃん……? なに捕まえたの?」


 恐る恐る聞いてみたら、「ん」と左腕を突き出してきました。

 その手に、握りこまれていたのは……………


 じたばた、じたばた。

 暴れる小さな手足。

 ふわふわひらひらと翻る、大輪の花のつぼみのような…すかーと。


「!!!?!??」


 勇者様の、意味不明な驚きの声。

 がっちりと凝視して、勇者様は顔を引きつらせています。



 まぁちゃんの、手の中。

 そこには、全長十二cmくらいの小さな…


 ちいさな、女の子の姿をした妖精が握りこまれて。


 ものすごく、ぐったりしていた。

 




今更ですが、活動報告のほうで月曜日からアンケートっぽい何かをとっています。

案件は、番外編置き場のネタに関して。

何かこんなの読みたいという意見のある方がいましたら、そちらにご意見いただけると幸いです。

一応、次の日曜日まで待ってから集計し、今後の優先順位を決める予定です。

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