27.おうさま
勇者様のお父様が出てきます(笑)
リアンカちゃんたち、初対面☆
昼餐の席へと到着した私達を出迎えてくれたのは………
何と言いましょうか、『王さま』でした。
それはもう、ものすっごく『王さま』でした。
王様としか呼べないくらいに『王さま』でした。
あざといくらいにあからさまな『王さま』でした。
「お、おおぅ………王様だ」
「あ、ああ………王様だな」
「絵から抜き出てきたようですのー…」
挨拶も何も、なんのその。
私達三人、その姿を見た途端にぽかんとしてしまいました。
何を言っていいのかも真っ白な頭には浮かびません。
目の前の異形(爆)を前に、挨拶すらできずに棒立ちです。
リリフとロロイは、他の絵柄をそのまま実際の人物に変換したような絵柄人間がいないか周囲をきょろきょろと目視で探しています。
待って、探さないで!
きっと探してもいない…はず。
お願い、いないといって!
でも探して出てきたらどうしよう!?
たった一人でもこんなに衝撃的なのに!
これで更にこれ以上、他にも出てきたら私の頭はパーンッてなりそうな予感がしました。
私達を無言の威厳で出迎えてくれた、その人物。その姿。
それを具体的に説明せよと言われたら、私達は一つの言葉しか思いつきません。
『王さま』です。
それ以外に何を言えと。
世界的カードゲームの絵札『K』からそのまま抜け出してきたような、その姿。
真っ白く塗りたくったような、四角い顔。
鷲の様に眼光鋭い、不気味な目。
ちょんと赤く色づき、目を引く小さな口。
立派な鼻の下、丁寧に整えられた白い鬚。
頭に被っているのは仰々しい王冠ではなく、豪奢な布を用いた帽子でしたが、布に埋まりながら強固に存在を主張する宝石類が、まるでそれを王冠のように錯覚させます。
そして帽子の下、顔の横。
鬘かと思えば実は地毛らしいのですが、これまた地毛か疑いたくなる素敵過ぎる髪型が…
明かに人為的に整えられた段々状態の巻髪が、物凄く目を引きつけてなりません。
ああ、王様だ。
それ以外に何と呼べばいいのでしょう。
その存在を疑うくらい、その方は絵に描いたような王様でした。
いえ、絵に描いた王様のような人でした。
大国の王様って、その存在感も姿も『王様』そのものなんですね…
自分の目で見ながらも空想の生き物を見たような信じられない現実を前に、私、棒立ち。
まぁちゃんも度肝を抜かれたように足を動かしません。
もう凝視。
凝視です。
その人物以外に何を見ろというのか。
他のもの等、一切目に入らない。
見つめずにはいられない、奇妙な魔力がその『王様』にはありました。
こんな魔性の生き物が、人間の国にいるなんて…!
予想外すぎるほど、私達の意識を彼の威厳が搔っ攫います。
注目せずにはいられない。
もう彼以外目に入らない!
「これが、威光という奴ですか………!」
「違うと思う」
無情にも、私の出した結論は勇者様にばっさり切り捨てました。
そんな、あんな素敵に立派な王様にカリスマ性がないとでも…!?
いえ、あるでしょう?
あるはずです?
現に世界最強であることに疑う余地のないまぁちゃんが、魔王陛下が魅入られたように見つめたまま動けなくなっているんですよ!?
何の状態異常ですか!? って疑うくらいに呆然と見入ってるんですよ!
本当に、意識を掻っ攫われて全然動きません!
そんな生き物に、カリスマがないはずはありません。
総じて言うと、あの王様は凄い『おうさま』です!!
私が信じられないと露骨に目で訴えながら、勇者様に疑いの眼差しを注ぎます。
勇者様は困ったように首の後ろを掻きながら、
言ったのです。
「リアンカ、俺の父はあっちだ」
「「「えーっ???」」」
三者三様、私達の声は揃いました。
勇者様が示す先を見れば…そちらにいるのは、経験豊かに齢を重ね、しかし年を重ねながらも損なうことなく美しさを残した中年男性。
まあ、美しいといっても勇者様ほどではありませんが。
あっちの『おうさま』とは別の意味で頼りたくなるような威厳のある、しかしながら心温まるような優しさを感じる存在感。
頭上で燦然と輝く王冠に、負けることのない輝き。
着られるのではなく、着こなし自分の一部へと国王の装束を支配する圧倒的な威光。
………ああ、ですよねー。
普通に考えて、超絶美青年のお父様は此方の方ですよねー。
ぽむっと手を打って、私達は納得しました。
あのイロモノ丸出しの『おうさま』は他の追随を許さない程に『おうさま』っぽいですけど、勇者様の父親と考えるとどう考えても役不足です。
主に、美貌的な意味で。
それに比べてこちらの『おうさま』…『国王様』という感じの人物は、中年ながらも引き締まった体躯、経年に損なわれない美中年ぶり。
若い頃はさぞかしモテにモテたことでしょうと予想できます。
そしてきっと、今でもモテることでしょう。
感情豊かに煌めく茶色の瞳。
勇者様と同じく、陽光の輝きを閉じ込めたような金髪。
ああ、うん。
見るからに分かります。
血の繋がりを意識させるのは、確かにそのお姿が勇者様と似ていたから。
雰囲気にも、見目の姿かたちも。
面差しだって、よく似ています。
彼の御方は、間違いなく勇者様と親子でした。
――え、でも。
それじゃあ『おうさま』は?
もう一度、とっくりと『おうさま(謎)』を眺めてから、笑顔で勇者様に問いかけました。
ええ、もうこれ以上はないほどの笑顔で。
自分自身、きっとあの『王様(謎)』はそういうモノだろうと確信して。
「勇者様、一体どなたがあんな素敵な幻獣を呼び出したんですか?」
どこから、あんな素敵過ぎる魔性の生き物を召喚したのでしょう。
魔境でも見たことのないタイプです。
あんなのが大量にいたら、怖くて泣くかもしれません。ビジュアル的な意味で。
あんな珍しいイキモノ、生息していたら絶対に名が知れ渡っています。
それがないってことは、きっと異界かどっかから召喚されたんですよね?
純粋な興味と確信でもって尋ねると、勇者様が引き攣った笑みを浮かべました。
はっきりと『幻獣』を指差した私の指を、そっと掴んで下します。
「リアンカ、あれはうちの大臣の一人だから…」
疲れたような、そのお言葉。
聞いて、私の笑顔も強張ります。
え゛……マジで?
え゛え゛え゛ぇぇ…アレ、人間なの?? 本物の???
紹介を受けたと感じたのか、『おうさま』が頭を下げて言います。
「吾輩めは、王国の儀典礼を司る職務につかせていただいているヘルバルトと申し…」
「喋った!?」
「そりゃ喋るよ! 喋るから! だから大臣なんだって言っただろう!?」
だから頼む、失礼な態度は控えてくれと。
そう言う勇者様は、今にも頭を抱えてしまいそうなのを明らかに我慢なさっていました。
魔境なら、もうとっくに沈没してそうなのにね!
流石に王子としての体面か、臣下の手前でしょうか。
勇者様は両足を踏ん張って踏み止まり、私の両肩を強く掴んで頼み込んできます。
縋り付く様なその体勢に、態度に、周囲の臣下さん達が両目を飛び出さんばかりに見張っていることにも全然、全然まったく気づかずに(笑)
後で、知ったことですが。
この『おうさま』っぽい大臣さんは、内外問わずお城で最も国王に間違われる人だそうです。
でしょうね、と思った私は悪くないと思います。
更に言うと、この大臣さんの非公式なあだ名は『おうさま』だそうです。
それ非礼じゃないの?
思いましたが、なんと言うことはありません。
当の国王本人が、偶に大臣を「王様」と言い間違えるそうです。
国王に「おうさま」呼びされる大臣(爆笑)
こっそり内心で何と呼ばれているのか、露骨にあからさまですね(笑)
「どうも最初に目が行くのか…他国からの使者でも、初めて謁見に来た者はまず最初に大臣に目が行くらしく…そこから、視線を逸らせなくなるらしい」
「つまり?」
「他国の使者にも、よく大臣が国王と間違えられる」
「うわーお」
それ、お国の威信として大丈夫なのか…?
それとも国王を間違えるという非礼を誘発させてるんですか?
敢えて礼を失しさせて、権益とかふんだくる外交政策でもしてるんですか?
そんなことはないと勇者様は首を横に振ります。
しかし、私は見ました。
否定する勇者様の背後、遠く壁際に控える偉そうな姿の重臣っぽい何人かが顔を逸らすのを。
ちょっ、重臣さんたち(笑)
笑いを招く背後には全く気づかず、勇者様は真摯に否定します。
その姿が更に私の腹筋を苦しくさせるんですが、勇者様気づいて!
これ以上笑いを堪えたら、後で呼吸困難になりそう。
「他国の使者も大臣が否定して初めて、本物の国王の存在に気づくらしい」
本物よりも、余程大きく衝撃的なインパクト。
しかも職務の一環として、大概の場合国王移動の先導をヘルバルト大臣が行うそうで。
国王より先に、予定の場所に現れるものだから、より一層勘違いされるという(笑)
もう、これ王様の影武者にしちゃえば良いんじゃない…?
私は興味の向くところを我慢することができず、初対面の大臣さんに気安く寄りました。
その鬚や髪の質感を確かめるように、指でピローンと引っ張ります。
手を離す。
しゅるるるるる………っぱちん!
そんな擬音が聞こえてきそうな勢いで、巻き髪は元の形状に。
「わあ、記憶形状合金もびっくり!」
「お褒めいただき、光栄にて」
そして大臣さんは、驚異的に寛大な方だったようで。
なんというか、平然としていました。
不思議なテンポの人だなぁ…。
私の突然の行動に、勇者様が肩をがっくり落として言葉にならない呻き声。
言葉にならない様子で、顔を物凄く引きつらせていようと私の行動は止まらない!
「ヘルバルトの大臣さん」
「なんでござろうか」
え、まさかのござる語尾…!?
挫けそうになった己を叱咤しながら、素朴な疑問を口にしました。
「なんでそんなに王さまっぽいんですか?」
「躊躇いゼロにダイレクトすぎる! リアンカ、もうちょっと迂遠な言い方はなかったのか…」
詰め寄ってきた勇者様を、まぁちゃんが羽交い絞めにしました。
「まぁ殿!? なにを…っ」
「まあ、待て勇者。俺も気になる」
「くっ…相変わらず己の欲求に素直すぎる!」
「それが魔境のクオリティだ。諦めろ」
悔しがる勇者様を、まぁちゃんがお座成りにあしらっています。
せっちゃんがするすると寄って行って、うなだれる勇者様の頭をよしよしと撫でていました。
ちっちゃい身長を、精一杯に背伸びして…!
あの爪先の、ぷるぷる具合が可愛い!
なのに上半身は物凄く安定しているあたり、せっちゃんのバランス感覚は完璧です。
「それで、どうしておじさんは王さまっぽいの?」
「ふむ。良い質問であるな」
うむと頷く、ヘルバルト大臣。
今まで聞く者もいないので放っていたのだが、と。
そう前振りをおいて話し始めます。
どうやら直接尋ねたのは私が初めてだったようですね。
「普通、直接本人に聞けることじゃないだろう…?」
疲れたような勇者様のお言葉は、黙殺しました。
さて、本物の国王様(勇者様父)を前にこんなことをしている訳ですが。
本物の国王様(勇者様父)も気になったのか、興味深そうに耳を傾けています。
話の行方を気にしてか、挨拶をしない私達の非礼も、羽交い絞めにされる息子も放置です。
話の分かる方なのか、好奇心旺盛なのか。
ちょっと気になりましたが、国王様との会話は後回しにして今は『おうさま』です。
この大臣さんの容姿の秘密に迫る方が余程興味深いし。
「話は我輩の幼少期、我輩の祖父殿に遡る」
「ご先祖代々そんなビジュアルで過ごさないといけない呪いでもかかってるんですか?」
「否」
否定は一言でした。
でもそんな呪いが本当にあったら、私だったら嫌だなぁー。
そんな呪いにかけられたら、全力で呪いをかけた人に復讐しますよ。
意識をちょっと横に飛ばしかけましたが、大臣さんの話が続くので拝聴します。
「我輩の祖父は、常々こう言ってござった」
「なんて?」
「『男児たるもの、生まれたからには国の頂点を目指せよ』…と」
「勇者様ーぁ、ここに国家転覆を目論む逆臣がぁー!」
「これこれ、娘よ。合点するには早すぎよう」
『おうさま』にたしなめられた!
何故でしょう…微妙な気分。
物凄くイロモノの外見をした人にたしなめられて、うっすら屈辱!
大臣やってるくらいだから、中身は真っ当なのかもしれないけれど、屈辱!
私のそんな心境も知らず、『おうさま』が続けます。
「無論、我輩とて祖父には頷きつつも理解しておりもうす。
神の恩恵深きこの国にとって、国王様は女神の意を受けることのできる『祭祀』。
即ち、誰にも取って代わることのできぬ、無二の存在であると。簒奪など以ての外」
「今この人、堂々と簒奪とか口にしちゃってんですけど!」
「うむ。以ての外である」
平然と自分真っ当なことを言ってます、みたいな顔をする『おうさま』。
この人も、結構な変わり者臭が…いえ、それはもう外見から明らかだけど!
「実際に国のトップを目指すのは不敬である。そこで祖父殿の権力欲と我輩への期待を満たすため、このような絵に描いたが如き『国王』スタイルを真似ることとしたのでござる」
「王さまは王さまでも、イロモノの王さまじゃないですか…!」
それ、おじいちゃんの意図する方向とは全然違うんじゃないのかな!
というか、おじいちゃんはそれで納得したの!?
勇者様も、信じられないみたいな顔です。
「ヘルバルト大臣、それ何歳の頃の話だ…!?」
「殿下のお生まれになる前…我輩が、紅顔の美少年であった幼少十歳のみぎりにござる」
「嘘だぁ…! このおじさん滅茶苦茶イロモノの顔なのに美少年だったなんて絶対嘘だ!」
「そっちか! リアンカが気にするのはそっちなのか!! そして失礼だろう!」
「だって勇者様もそう思うでしょう!?」
この『おうさま』顔は真似たからってどうにかなるものじゃありません。
絶対に、最初っからそういう素養のある顔だったとしか…!
きっと、絶対に、最初からかなりの『王さま』顔だったはずです!!
「うむ。真似ている内に板についてしもうてな。我輩自身、しっくりと馴染んでしもうた」
うむうむと何度も頷く『おうさま』
馴染んだとか、そんなレベルじゃなく『おうさま』そのものなんですが…。
「祖父殿が没した頃にはすっかりこれが定着し、スタイルを変えようとすると違和感が凄まじいことに。その違和感に、我輩自身が気持ち悪くなってしまうのでござる」
「え、じゃあその格好は惰性でしてるだけですか?」
「今となっては我輩の趣味でござる」
「言い切った! しかもやっぱりござる語尾で!」
色々とびっくりな人だ…。
勇者様のお国にも、こんな個性的というかなんというか…その、キワモノがいるんですね。
充分にツッコミどころ満載なのに、なんで今まで誰も触れなかったんだろう。
「………容姿や格好の話題に、堂々と触れられるわけないだろ…」
なるほど、腫れ物扱いだったんですね。
「それで、格好だけ王様を模倣してるんですよね?」
「うむ」
「それじゃ、本当に王様になりたいとか思ってる訳じゃないんですか」
「娘御の言う通りである。祭祀でもある国王様に成り代わるなど、とてもとても…」
「格好は凄いのに謙虚(?)なんですねー…」
「血の近しい一族から娘を選び、王子殿下に宛がって次代の王の外戚を狙うのが精々である」
「違った! 全然謙虚じゃなかった!!」
「うむ。そうやって次代の権力を握るのが臣下として正しい野心の道である」
「むしろ野心ばりばりですか!?」
国王の前で堂々と言い切る『おうさま』の強心臓に驚嘆を隠せません。
どうしよう、一瞬痺れるかと思いました。
「豪胆! 勇者様、この人物凄く豪胆ですよ!」
良いんですか、こんなツッコミどころ満載な人を放っておいて!
というか、絶対にツッコミ待ちですよね!?
「勇者様、このおじさんを登用していて良いんですか!?」
野心を全く隠さず、私を見てとばかりに曝け出してるんですけど!
こんな人を大臣の座にさらりとつけている勇者様のお国も凄いですよね!?
思わず、国王様(勇者様父)の前だってことも構わず、勇者様をがくがくと揺さぶります。
勇者様も気まずそうに顔を引きつらせながら、それでも優しく、そっと私の手を解きます。
「ヘルバルトは…確かに、彼の一族は代々野心への興味津々の癖にそれを隠さないんだが」
「一族郎党こうですか!?」
なにその一族。滅びたいの?
「だが、彼らは口で言うだけで実際には全く悪事や謀略に手を出さないんだ…」
「そんなの表向きだけで、実際に裏じゃばんばん手を出してるんじゃないですか?」
「それが、全くの白で」
何故に、そう言い切れるんでしょうか…。
…と思ったら、どうやら言い切れるだけの裏づけがあるようです。
「彼らはこうだから、何かあるごとにまず疑われるんだ」
「そりゃー疑わない方がおかしいよ」
「そして、何年かに一度は容疑者として更迭される」
「何年かに一度で済んでるんですか。そしてなんで今ここにこの人がいるんですか」
「ああ、捕まりはするものの、実際に何もしていないから直ぐに疑いが晴れるんだ」
「晴れるような疑いなら、最初から捕まえなきゃいいのに…」
「この言動だからな、どこにでも目の敵にしている者がいるらしい。
そういった者が彼以外に犯人はありえないと捕縛の命を出すが、詳しい取調べで白と出る」
「すっごい不毛じゃないですか!」
この人、領地にでも引っ込んでてもらったほうが良いんじゃないかな……
そしたら間違えて逮捕されることも逮捕する人も出なくて、みんなハッピーじゃない?
でも、このおじさんは国政への取り組み姿勢が強いらしく、何があっても参内するそうです。
それならまず、その言動を何とかしようよ………
いや、「正直は美徳である」じゃないでしょう。
嘘をつかないにしても、本心を曝け出す必要がどこにあるんです…?
「………結果として、間違って捕まえたこと対して後ろめたい国が便宜を図ったり、色々と取り計らったりすることが何度も重なり…間違って捕まえる度に、昇進。結果、大臣に至る」
「出世コースが変則的過ぎる!?」
逮捕→昇進とか、狙ってできることじゃありませんよ…!?
「それだけで昇進という訳でもないんだけどね。結果としてそう見えるというだけで。
…大臣にまで登り詰めたのは、本人が職務に見合う優秀さを発揮したからだし」
「優秀なんですか!? この見た目で!?」
大臣にしたら面白そうとか、お城の黒幕的な誰かが思いついたからじゃないんですか!?
「リアンカ、優秀さに見た目は関係ないからな!?」
勇者様、それ暗に見た目は優秀に見えないって肯定していませんか。
本人を前に、散々な物言いでした。
途中から我に返って、勇者様も平然としている『おうさま』に謝ります。
それから、勇者様のお父様にも。
御前を騒がせ、見苦しいものを見せましたと。
内輪の人間しかいないからこそ、許される態度だったのでしょうね。
勇者様は己の迂闊な言動をちょっと叱られていたようです。
それから、ですが。
気を取り直したらしい勇者様が、「そうそう」と口を開きました。
どうやら、私達に何か伝え忘れていることがあったようです。
勇者様は私達に再びヘルバルトさんを示し、言いました。
「ちなみに彼は、あの………ミリエラ嬢の伯父上にあたる」
「その節は、姪がお世話になり申した」
「「マジで!?」」
あのお嬢さんに、こんなイロモノのおじ様がいたなんて…!?
本日、何度目の衝撃でしょうか。
とうとう堪えきれず、私の腹筋が暴走しました。
全開の大爆笑。
人の目も、勇者様の立場も。
あれもこれももう、全く気にしていられません。
私とまぁちゃんは、ついに堪えること敵わず。
止まることを知らない笑いの渦に落ちていったのでした。
え、じゃあこの人がミリエラさんを勇者様に差し向けたお偉いさんですか?
この人の一族、どうなってるんですか?
イロモノとキワモノだけで構成されているんでしょうか!
…………………リアンカちゃんの感想より。




