表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/182

20.マジ狩る3 ~いえす、まむ!~

今回は短めです。

ちょっと次回に備えて区切りました。

そして、以前にやったネタが再臨しました(笑)


3/14 偽りありになっちゃったので、後書きを消させていただきました。

 まるで疾風のような、鋭い気迫が伝播します。

 竜という本性も剥き出しに、爬虫類全開の目に勇者様がマジびびり。

 ちょっと待って、ねえ勇者様。

 なんで貴方の方が過剰反応?

 範疇外にない方にまで威嚇はばっちりです。


「あぁ………終わった。本気で終わった。この離宮は瓦礫の一欠片に至るまで粉砕される」

 勝手に不幸な未来を決め付けて、勇者様は頭を抱え込んでいました。

「あにうえ…そう悲観なさらなくても、あの方々はあにうえのお友達なのでしょう?

友に当たる方が、そう酷いことをしますか? 例え竜であろうときっと加減して…」

「レオン……やる。彼女達なら、きっと。お前は知らないから言えるだけだ」


 直ぐにわかると言い添える勇者様は、今にも倒れてしまいたいと言わんばかり。

 意識を失って現実逃避をしたいのでしょう。

 でも、変なところで強靭な勇者様の性能が、それを許さない。

 どんまい、勇者様(笑)

 大人しく、そこで見守っていてください。


「………あの人達が精神破壊されるのを…」

「ちょっと待てリアンカ! 本当に何をするつもりだーっ!?」


 必要とあれば、己が命を張ってでも止めなくては、と。

 悲壮な決意を勇者様が固めるのが、何となくわかりました。

 案じなくてもね、勇者様。

 流石に私も自分のお友達の命を投げ打たせるようなことは……………

 ……………………………うん、しないから!

 しない、という結論に至りました。

 だから安心してください、勇者様。

 生死の境目ギリギリを狙います。


「ぜ、全然安心できない………」


 最後の一線、というわけでもないけれど。

 私自身、殺害はタブーという倫理観は持ち合わせています。

 私も、自分の手を汚すのは流儀ではありませんし。


 殺しはしませんよ。

 殺しは。

 

 …でも、世の中に、さ。

 死んだり殺されたりするより辛いことって、ありますよね?


 にっこりと笑う私の顔に、勇者様の顔がより一層青褪めた。

 女の子の笑顔に青褪めるとか、勇者様ったら失礼ですよ!



 自分自身、どんな顔で笑っていたのかは知りません。

 でも、私の顔を見て覚悟を決めた方々がいました。

 勿論、相対するオーレリアスさんとシズリスさんの青年二人です。 

 隠し持っていたナイフで触手の魔の手から逃れたシズリス青年は固唾を呑んで槍を握り。

 再びナニかを召喚しようというのか、両手を光らせたオーレリアス青年が眉間を寄せる。

 何を呼んだとしても、所詮は哺乳類。

 しかも体長一m以内。

 それで真竜(リリフ)を相手に、何をどうやろうというのでしょう。


 後々聞いた話ですが。

 オーレリアス青年が戦闘の際に呼び出す常套は、ご自宅で飼育する猟犬の群れ。

 青年本人が手ずから鍛え、調教師顔負けに統率力を磨いた犬の集団。

 その能力の特性ゆえか、彼はかなりの動物好きらしいです。

 いえ、動物好きというか…必要に迫られてか、動物を使うのがかなり得意だとか。

 そして己の限界へ挑戦し、無理に召喚を試みて種々様々な動物を飼育する結果になったと。

 呼び出したは良いけれど、どこから召喚したか分からないものは送還できないそうです。

 どこから呼び出したのか分かってさえいれば、返すこともできるそうですけど。

 そんな訳でオーレリアス青年のお屋敷は、カーラスティンの島顔負けの動物天国だそうです。

 マメで世話焼きな青年の気性が好影響して、毛並み艶々に管理された元気な動物の無法地帯。

 いえ、無法地帯じゃなくて、細かく管理されているみたいだけど。

 何にせよ、少なからず動物好きじゃなければ生活に耐えられない環境だそうです。

 動物好きには堪らない住環境みたいだけど。

 

 神経質に(ああ)見えて、青年はかなりの動物愛の人らしい。

 いえ、動物が好きじゃなかったら、とてもじゃないけど使いこなせない能力ですけど。


 そんな彼が、竜の女の子を前に延命を望み、本気で呼び出すもの…


 それこそ、彼の最も洗練された戦闘技術の粋…大量の猟犬でも、呼び出すのでしょうか。

 犬、いぬ、いぬ、いぬ………たっくさんの、犬の群れ。

 

 嫌いじゃないです。


 猟犬、カッコイイ。


 私は少々の好奇心と多大なる期待と、興味本位で一杯です。

 だってどうせ呼び出したとしても、リリフに守られる私には何の被害もないに違いない。

 そんな私に、ちらりと向けられる青年達の視線。

 ん? その目配せは何でしょうか…?

 ぼそぼそと呼びかけあっているようですが…口元を隠して囁き合っていますね。

 何を言っているのか、さっぱり分かりません。

 

「わかっているね、シズリス」

「ああ、この場合強いのはどう見ても女の子。だけど主導権を握っているのは?」

「そう。あの一見何もしていない、ただ悠然と立っているだけの少女」

「見るからに隠すことなく、堂々と守られてるしな」

「守られるだけの、重要な人物ということ」

「だよな」


「………手っ取り早く、無力化を図るにはどうすればいいか、言わなくても分かるね?」

「そーだよな。生き延びる為に、必死になるなら手段は選ばず」

「今はただ、この場を乗り切って弁解の機会を待とう」


 うんと頷きあう、お二人。

 どうやら何がしかの方針を決められたようで。

 悲愴な決意を固めたお顔は、流石幼馴染。

 切羽詰った時の勇者様に、なんだかとてもよく似ていました。


 それで許す私では、ありませんけれど。

 

 例え勇者様のお友達でも。

 例え勇者様によく似ていても。

 それで私は寛恕なんてしませんとも。

 悪いことしたあの人達が、ちゃんと許されるだけの行いをしないことには。

 許す理由も切欠も、こちらの怒りを納める如何な理由もありません。

 ちゃんとそれなりの行動を取ってくれないと、絶対に許してなんてあげません。


 だ か ら


 私は右手をゆったりと掲げ、声を張り上げました。


「薙ぎ払え!」

「いえす、まむ!」


 カッ と。


 光竜のドラゴンブレス、一本いってみましたー。


 カパリ開けられたリリフの口から、光の奔流。

 それは魔力の操作によって束ねられ、一本の太くまっすぐに伸びる光となり。

 青年達の方へ向けて、迸る。

 あれを食らったら、どうなるかな?


 A. 吹っ飛ぶ。

 B. 吹っ飛ぶ。

 C. 吹っ飛ぶ。

 D. 陥没する。


 さあ、どれかな~?


 

次回予告!

 「な、なんですこれ…!?」

 「リリフ! 動いちゃだめっ 動いちゃだめよ!?」


 次回:マジ狩る4 ~わんにゃん天国~

 お楽しみに☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ