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ここは人類最前線6 ~光を受けし人の国~  作者: 小林晴幸
御前試合 ~本戦開始~
125/182

124.宿命、因縁、とりあえず対決

 まだ見ぬアドレナリンゴンザレフ…君に決めた!


 本戦が始まった一日目。

 私は今日も元気に賭けています。


 トーナメント表が発表され、対戦表が出揃ったので賭けも本番です。

 予戦で目をつけた選手や、他国の戦士。

 様々な名前に、じゃんじゃんお金が集まっています。

 庶民にとって他国の勇士は知らない名前が多くても、出身国の軍事力等を判断基準にみんな楽しそう。

 うん、それぞれの国から生え抜きの戦士が出るそうですし。

 国の騎士団やら何やらが強ければ、その分期待が持てるというのが賭けの予想表を作っていたおじさんのお言葉です。


 勇者様の権力(ちから)で、トーナメント表も勿論仕組まれました。

 要は、サルファが四回戦まで行くか、フィーお兄さんを倒せば良いのです。


「………てか、今気付いたけど四回戦って決勝じゃね?」

「はっ そう言えば…!?」

 

 まぁちゃんのぼそっとした一言に、顔を上げる私達。

 選手は十六人なんだから、四回戦なら確かに決勝だよね…!?

 え、そんな無茶な要求してたの!?

「くっ シフィ君計ったな…!?」

 サルファも当然、愕然としていました。

 というか、早く気付こう当事者。

 勇者様は言われなくても分かっていたのでしょう。

 驚くことなく、遠い目をしています。

 わあ、とっても無茶な要求じゃないですか!

 ………うん、それを目標にするのは、とっても困難だと思うな。


 それでも、やっぱり勇者様は対戦表に配慮してくれていたみたいです。


 第二会場第一試合

  サルエルぱん 対 シフィラレンジ・フィルセイス


 一回戦の、一試合目。

 最初も最初、初っ端から宿命の対決が仕組まれているんですが。

 この対戦カードを見た瞬間、大笑いしちゃいましたよ。私。

 さっさと終わらせろってことですね、わかります(笑)

「勇者のにいさ~ん…」

「長く頑張らなくて良かったじゃないか」

 そう言いながら、勇者様はふいっとサルファから目を逸らします。

 後ろめたいのかな? それとも勇者様も笑いを堪えていたりとか?

 わかりませんけど、私は勇者様にこの言葉を送りたい。

 私は親指に思いっきり自己主張させて、勇者様に笑いかけました。

「勇者様、ぐっじょぶ!」

「楽しそうだね、リアンカ」

「取り敢えず笑いの準備だけ万端に整えておきます」

「嫌な準備だなー…」


 ちなみに勇者様は別のブロックで、そちらで試合があるので今日も別行動。

 二つのブロックは試合会場さえ別です。

 ………式典の期間に入ってから、何だかんだと公務が重なったり、忙しくされているみたいです。

 お陰で行動が全然重ならなくて、ちょっと寂しい…かな?

 勇者様の試合は後の方だということなので、多分大丈夫かな?

 サルファの試合が終わったら駆けつけようと思います。


 そう思って、対戦表で勇者様の名前を確認したら………


 第一会場第四試合

  ライオット・ベルツ 対 アドレナリンゴンザレフ


 ……………。

 ………こ、これは…絶対に見に行かないと!!


 気付いたら、目的が変わっていました。




 サルファの試合が行われる第二会場には、結構な観客も動員されています。

 前年、結構な戦いぶりを披露した騎士の弟ということでフィーお兄さんは注目株だそうです。

 予戦でも、大層な活躍だったそうですよ。

 騎士らしく、その戦いぶりは正攻法一直線。

 有象無象を寄せ付けぬ、正攻法一本でも全く危うげのない戦いぶりだったとか。

 ちなみに私達は露店を冷やかすのに夢中でフィーお兄さんの戦いぶりは確認したことがありません。

 い、いや、一回は見とこうと思ったんですよ…?

 でもフィーお兄さんの試合、決着が早すぎて。

 駆け付けた時には対外終わってたんです。終わるの早すぎですよ!


 それに対して、サルファは小賢しいまでに小細工と反則すれすれの汚い戦いぶりで、評価は綺麗に真っぷたつ。

 見ている分には面白いと無責任に囃し立てる柄の悪い人達とかに大人気!

 …決して、潔癖なお姉様方の評判はよろしくありません。

 うん、それで当然だと思います。

 さてさて、うまい具合に正攻法vs.邪道の戦いになりつつありますが…

 サルファに問いたい。

 それで良いのか、騎士家跡取り…。

 でも本人は継ぐ気なさそうなので、それでも構わないのかも知れません。

 こんな奴を叩き直し、騎士として仕立て直すとなったら…

 ……フィーお兄さん、見たことないサルファのお父さん、がんば!

 それ以外に言葉が見つかりませんよ。


 そうして、正体を明かさぬまま。

 全身黒づくめ覆面面のまま。

 宿命の叔父甥対決は幕を開けたのです。




「……………」

「………」

 

 審判の開始宣言から、無言で向き合う二人。

 大きな剣を構えるフィーお兄さん。

 鎖鎌をひゅんひゅん言わせるサルファ。

 ゆっくりとした足運びで円を描くように、互いの位置が移動していきます。

 ああして間合いを測っているのかな?


 無責任な野次を飛ばしたり、固唾を呑んで見守ったり。

 観客は私達も含めてそれぞれがそれぞれ、個人の方法で見守ります。

 ちなみに私は、焙じ茶と甘しょっぱいお煎餅片手に見守りました。

 せっちゃんは豆大福をむぐむぐ言わせています。

 そしてまぁちゃんの片手には、 (ウォッカ) 。

 うん、物凄く物見遊山ですね。

 甘いようなしょっぱいようなお菓子を貪りながら、試合を傍観。

 すると、やがて試合の方に動きが…!

 

 先に動いたのは、フィーお兄さんの方でした。

 彼の口が、はっきりと形を変えます。


「お前、フィサルだろう」


 ぴくりと引き攣り。

 サルファの身体が、一瞬止まりました。

 その隙にすかさず、フィーお兄さんが…!


 ……………足下の砂を、蹴りあげて。


 あれ? 眼潰しですか?

 

 サルファの顔面を覆う怪しい覆面は、目元以外は完全防御です。

 つまり、顔面を狙うなら眼潰しは効果的。

 サルファもそんな弱点を守ろうという意識が動いたのでしょうか。

 それとも反射でしょうか。

 人間、顔面に何かが向かってきたら咄嗟に防御しちゃいますからね。

 サルファもそうだったのでしょうか。

 咄嗟に、奴の腕が顔を庇う位置に動きました。

 その隙を見逃さず、フィーお兄さんが走ります。

 決して真正面から、予想されて当然の道は選ばず。

 サルファの掲げた腕が、丁度視界を覆うような死角へと体を滑り込ませます。

 そのまま低い体勢で、狙うのはサルファの足首…!


 あれ? 正攻法…?


 辛うじて後方への跳躍でサルファが体を逃がすと、そのまま低い位置を保ってフィーお兄さんが猛追を仕掛けます。

 概ね狙うのは膝から下という、何とも防ぎにくい場所ばかり。

 足下を狙われて思わず跳躍しようものなら、今度は滞空中の動けぬ体を全力で切り捨てようとしてきます。


 ………なんだか、事前に聞いていた戦法と全然違いますね。

 全然真正面から行かないんですけど。

 あれー?と首を傾げてしまう、私達。

 彼も所詮は、サルファの叔父、肉親。

 血の繋がりは確かにあるのでしょうが、あの真面目そうなフィーお兄さんもサルファの同類だというのでしょうか。

 なんだか、印象が違います。


「し、シフィ君…っしばらく見ない間に、宗旨替え!?

随分趣向が変わっちゃったみたいだけど!」

「……やっぱりフィサルか」

「っ…さっきのカマかけかよ」

「いいや? 確信はしていた。後は確認だけだった」

「ちっ…なんだバレちゃったかなぁ~」

「そうだな。フィサルの戦い方なんて見たことなかった。

そもそも戦えるなんて知らなかったが………足運びの癖だけは、昔のままだ」

「え、マジで?」

「ああ。果樹園の果物盗み食いに行く時の、お前の足運びそのまま」

「…うげっ」

「フィサルの逃亡の手段や身のこなし、逆に忍び込む時の手口…

今まで一番近くで見てきたんだ。見破れない訳ないだろう?」

「うわー………」


 何だかサルファったら、叔父様に色々と行動を把握されているっぽいですね。

 というか、碌な幼少期過ごしてなさそうですね。あの二人。

 人の家の果物盗むぐらいなら、可愛い子供の悪戯で済むかも知れませんが…

 果樹園は人の生活かかってますよ。

 うちの村だったら、まず全力の罠を掻い潜る必要がありますね。

 果樹園の主と果物泥棒のリスキーな勝負になります。

 

「フィサル…観念して、年貢を納めるんだ!」

「それは米農家に任せる!」

「意味が違うだろう、この馬鹿…!」

 

 そして、叔父甥の追いかけっこが幕を開けました。

 フィーさんの戦いぶりは、本格的に正攻法とは乖離しつつあって。

 手段も形振りも構わず、頑張っておられます。

 本来は汚い手など使わないのか、時として躊躇いながら。

 それでもそんな行動の隙を甥っ子に突かせないくらいには、鋭く容赦なく。

 あ、今度は石投げ始めた。


「シフィ君!? ホントどしたの、らしくない!」

「フィサルを捕獲するのに、形振り構う訳がないだろう…っ

元より、正攻法でお前のことを捕獲できるとは思っていない!!」

「わ、断言しちゃったよ!?」

「兄上でさえ取り逃がしていた相手を、正攻法に拘って捕獲できるか!!」

「うわーっ!」


 …うん、本当に形振り構ってないよ。あの騎士様。


「はあ……っ」


 フィーお兄さんは裂帛の気合とともに………

 ……って、あの人剣の刃先から真空刃出しちゃったよ!?

 お、おお…魔境の魔族さんならともかく、人間でも簡単に真空刃出せるんだ。

 勇者様だけかと思ってた…。

 遠距離攻撃できる騎士という、隙のない生き物がそこにいました。


 そしてそんな不可視の攻撃を、サルファは…って!

 ええ!?

 あ、あいつ……腕で撥ねとばしちゃったんですけど!?

 あの手甲、何製…?

 私の記憶が確かなら、ただの(なめし)革(鹿)の筈なんですが。

 私の用意した品と、いつの間にか摩り替った???

 そしてマルエル婆、あのチャラ男をどれだけ鍛えたんですか?

 一体どんな鍛え方したら、あんな常識さようなら状態になるの…?


 あれが勇者様なら、きっと私はそこまで驚きませんでした。

 百歩譲って、センさんでもここまで驚きませんでした。

 ちなみに魔族なら、出来そうな人がザラにいます。

 でも、サルファですよ?

 あの(・・)サルファですよ???

 そ、そりゃ器用な奴ですけど…いや、騙されないで、私。

 器用とかどうとか、そんな問題じゃないでしょう!

 それをあのサルファがやったかと思うと、物凄く釈然としないんですけど!?

 サルファって、超人タイプの人間じゃないよね!?


 …って、あ、もしやナシェレットさんの血液効果!?

 もしかしてサルファも人間捨ててる組の一人…!?

 ……ん? あれ、でもその兆候ってもう出てたっけ?


 釈然としない私の意識も置き去りに、事態は進みます。

 試合はますます人外の様相を呈しつつあります。

 ………どうなってるの、この試合。

 そんな感想とともに、周囲からも戸惑いの声が聞こえてきて。

 私は他の観客共々ポカンとした顔で成行きを見守ることしかできませんでした。




アドレナリンゴンザレフのキャラをどうしようか迷っています。

今のところ、案は以下のとおり。

1.ストーカー

2.弟子志願者

3.小汚い武蔵坊弁慶

4.けだもの

5.マジカル・プリンセス

多分、このうちのどれかになります。

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