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ここは人類最前線6 ~光を受けし人の国~  作者: 小林晴幸
御前試合 ~謎の黒い影~
117/182

116.懐かしい姿

今回は前話から数日経過してからの話になります♪

御前試合編に突入ですv

 とうとう、やってきた。

 今日の、よき日。


 ――その名も、前夜祭。

 

「おまつりで・す…!!」


 私、大はしゃぎ。

 もしかしたら何日か前の毒草園を見学した時より、はしゃいでいるかもしれません。

 だって仕様がありません。

 ハテノ村の…魔境の、お祭り好きの血が騒ぐんですもの…!


 そもそもの勇者様の、お里帰りの主目的。

 そう、勇者様の(パパ)上様の即位十周年式典。

 その前夜祭が今日から(・・)始まるんです!

 

 ………って、あれ?


「なんか、表現おかしくありませんか?」

「何か気になるところがあっただろうか…?」

「いや、今日から(・・)って。から(・・)って」

「?」

「前夜祭なのに、数日続きそうな空気なんですけど」

「前夜祭は、二日間だ」

「それ最早、前夜じゃないじゃないですか…!」

 うわ、珍しい…。

 私が勇者様にツッコミ入れちゃいましたよ。

「そう言われても、式次第がそうなっているんだ。考えたのは儀典礼を司る部署だから」

「責任者は?」

「ヘルバルトだが…彼の感性は、時に理解し難いからな」

「………なんかその人、どっかで聞いたことあるような?」

「え、」

 あれ、何となく聞き覚え…でも、どこで聞いたんでしょう?

 よくある名前…かなぁ? でもそんな知り合い、いないし。

 本気できょとんと首を傾げる私に、勇者様はふかぁく溜息。

 困ったように眉尻を下げて、一言。

「…リアンカ、ヘルバルトだぞ?」

「うん、誰ですか?」

「――『おうさま』、だよ」

「あ、ああ! あの!」

 ああはいはい、あのオープンに健全な野心を隠さない、イロモノ変態大臣ですね!

「………今、言外に物凄く失礼なこと考えなかったか?」

「気のせいです(笑)」

「(笑)ってなんだ、(笑)って…!」

 口では文句を言いながら、も。

 なんだか勇者様も、私の言いたいことを理解しているような…

「ところで前夜祭で二日なら、本祭はどのくらいあるんですか?」

「五日、だな。式典の本番は四日目にある。

五日は無事恙無く式典が終了したことを寿ぎ、民衆に王族の顔見せを行う日なんだ」

「パレードですか?」

「………パレードだね。更に言うなら、バルコニーから見世物状態になる」

「あは、難儀してますね♪」

「そして御前試合の本戦は本祭一日から三日の間に行われる」

「……………あー…」

 サルファが年貢の納め時に遭遇する日、ですよね。

「ついでに言うが、予選は今日から明日の二日間だ」

「あ、それなら今日明日に命運が決まるかもしれませんね」

「さあ、どうだろう」

「…勇者様から見て、サルファはどんな感じですか? 首の皮」

「良くも悪くも、本人次第…だな」

 気苦労の絶えない勇者様は、ひどくお疲れの顔で。

 困ったように肩を竦めます。

 でも本人次第って、決して悪い評価じゃありませんよね? 

 だって、本人がその気になって力を尽くせば道が拓けるってことなんですから。

「勇者様、意外にサルファの評価高いんですね」

「ひどく、癪だが」

 まあな、と溢して勇者様は苦く笑います。

 サルファに脅迫(おねがい)されて手回しした裏工作が、余程心を痛めたのでしょう。

 魂ごと吐きそうな溜息と一緒に、勇者様は言うのでした。

「協力した手前、少しは責任も感じる…からな。

今回はサルファの行く末を、行動の結果を見届けるとしよう」

 王子としての業務を全うしながら、余所事に囚われて意識は出張。

 式典を開催する国の王子様なので、勇者様はとってもお忙しい。

 それなのに余計な仕事まで抱え込むんですから…

 

 勇者様が過労死しないように、特製栄養剤を後で差し入れようと思いました。

 ちなみに原材料はこの間入手したマンイーター(改)です。

 サイケな夢が見られるよ☆



 今日から予選。

 そんなことを聞いちゃうと、素通りで遊びに行くわけにもいきません。

 いや、祭りという単語ひとつでとってもうずうずしてるけど!

 今にも飛び立つ鳥の如く、遊びに行きたくてならないけど…! 

 それでも私の周囲に関わりのない話という訳でもないし。

 それに勇者様が国際的に責められるか否かの瀬戸際で。

 ここで知らぬふりを決め込むほど、非情でも知らぬ仲でもないつもりです。

 勇者様とは。


 という訳で、勇者様を奈落の底まで道連れにせんばかりの野郎のことを、一丁陣中見舞いしてやろーかという話になりました。

 負けたらそこまで、ですからね。

 せっかくなので空気を読んで、負ける前に行っておきましょう。

 具体的に言うと、予選一回戦が始まる前に。

 調子はどうかくらい聞いてあげますよ。

 勇者様やオーレリアスさんも、そわそわしてたし。

 ここは偵察がてら、様子を見に行きましょう!


 そんな次第で、私は予選会場の選手控室に向かった訳で。

 暇な子竜やまぁちゃん、せっちゃんを引き連れ鼓舞してやろうと陣中見舞い。

 危うく参加者と間違われそうになったりしましたが、問題ありません。

 受付でしっかりはっきり言ってやりました。

「こんな炎天下、脱水症状ギリギリの極限状態を体験しようなんて思うほど、被虐趣味じゃないんで私!」

 言った瞬間、四方八方から吹雪な視線が突き刺さりました。

 でもそこは気にせず意に止めず。

 受付のお姉さんの頬が若干引き攣っていましたが、気にしたら負けです!

 若干注目を集めながら目的に控え室(大部屋、参加者四十人で共用)に向かったら…


 私は扉を開けた途端、動きを止めて。

 目に飛び込んできた姿に、唇を戦慄(わなな)かせました。


 果たして、そこにいたのはサルファで。 

 だけどその姿に、私は言いたいことを抑えられませんでした。


「見損なったわ、サルファ…」

 それは、我ながら怨めしげな声でした。

 出会い頭に不機嫌さを隠さない私。

 サルファが狼狽えて、きょろきょろと首を巡らせます。

 視線が固定されて動けない、首を。

「え。え? なんで俺、出会い頭にいきなり見損なわれてんの」

 ぎっと音のしそうな勢いで奴の顔の辺りを睨みつける、私。

 …と、我ながら凄まじい気迫を込めて言ったのです。

「同じ仮装(ネタ)を蒸し返すなんて!二度ネタは見苦しいだけよ…!」

「え、そこ!?」

 それ以外に何か重要なことがあったでしょうか…いえ、きっとありませんね!


 私が見たのは、一月前に自らが刺繍を施した、赤いマント。

 そしてそれを身につける、木彫りの仮面(マスク)をつけた男…。

 その仮面の形状は、某大型ネコ科肉食獣を模ったもので。


 そう、その姿はアレです。

 故郷からの刺客に(おのの)く勇者様の替え玉となった時のもの。

 ドッキリ大作戦を敢行した時のもの。

 『獅子と見せかけ、子猫(こにゃんこ)マスク』がそこにいました。


 なんでこんな格好をしているのか、と。

 私達は誰ともなく尋問を開始していて。

 みんなでかごめかごめと取り囲む輪の中心。

 正座させたサルファが、気まずそうに身を縮めています。


「それで? なんでこんなことしたの」

「えーと…俺、こうやって責められるよーな凄いことやったかな」

「なんで、終わったネタを蒸し返してるの」

「仮面をつけて仮装する理由なんて、一つじゃん☆」


 圧迫感を加える私達に、少しも怯むことなく。

 言い切る奴は、まさに能天気。

 いや、仮面つけてるから中身がどんな表情(カオ)してるのか知らないけどね?

 一向に怯まない此奴は、へらへらと軽薄な声でなんてことない様子。

 でも語る内容は、一理と思わせるもので。


「ほら、俺さ? 実家から探されてる身じゃん。

今回はシフィ君がまだ黙ってくれてっけど、国内には俺の親父殿もいるワケ」

「ああ、そういえば父親がいるんだっけ」

「うんそうそう。何か、さも俺に父親が存在することがおかしいみたいな言い方だけど☆ でもいるワケ」


 そう言われると、サルファの仮装の理由も段々わかってきました。

 要は、こう言うことですよね?

 そもそも今回のアレコレは、後継ぎの癖に家に帰りたくないサルファが、自分のことを発見したフィーお兄さんに見逃すように頼んだことが発端で。

 その、見逃してもらえるか否かをかけた勝負の最中。

 家の主たる実の父親に見つかっちゃったら、本末転倒ですものね?


「理由は分かりました」

「あ、わかってもらえた?」

「だけど私が言いたいのはそこじゃありません」

「え」

「仮装したいのなら、じゃんじゃんやっちゃえば良いんです。そもそも他人で何の縁もゆかりもないサルファがどんな格好しようが、私は基本どうでもいいんですから」

「あ、あれ……いたたっ 胸が痛い。何かが刺さる…!」

 いたた、と胸が痛む仕草を見せるサルファ。

 言い方が酷い酷いと訴えるサルファは無視して、私は自分が最も言いたかったことを断固とした主張を持って厳かに告げました。

「だけど、これは我慢できません」

 そう言って、私はサルファの衣装をちょい、と摘みます。

 これは私がこさえ、用意した衣装です。

 勿論、あの時はネタの為に全力を用いました。

 その衣装を前に、これだけは言いたい。


「私が準備した衣装を使って、二度ネタは許しません…!」


 終わったネタをずるずる引き摺るなんて笑止千万!

 サルファも芸人なら、それくらい分かっているでしょうに…!

 一発ネタだったのは、誰がどう見ても明らかでしょう!?

 私が関わったネタで、見苦しい引き摺り方は許せません!!

 

 カッと目を開いて言いきってやったら、サルファはあわあわと慌てだしました。

「その…リアンカちゃん? 俺、今回はネタとか笑いを取るつもりじゃ…」

「そんな明らかにネタ全開の格好しておいて何言ってるんですか!」

「いや、ぶっちゃけ正体が隠せるような格好なら何でも良かったんだよ…!

そしたらこれ、顔も存在も隠れるからいっかなー、なんて思っちゃって!」

「サルファ、貴方はそれでも芸人なの!?」

「リアンカちゃん、俺、芸人は芸人でも軽業師だからね!?

コント芸人じゃないからね!? そう、もっと 硬 派 な感じの!」

「え、今更………?」

「そこで懐疑的な顔をされると、俺、傷ついちゃうよ!?」

 何言ってるの、こいつ。

 えーと、コウハ? コウハってなんだっけ?

 黄派? それとも光波?

 まっさかー…硬派、なんて言いませんよね?

 あの(・・)サルファが、そんな馬鹿なこと言いませんよね!

「何言ってるの、サルファ。あんたコント芸人でしょ」

「違うからね!!」


 この、無茶なことを言うサルファの口を、どうやって封じようか。

 あまりにも馬鹿なことを言うものだから、眩暈がしそう…。

 私はあんまりな言い分にくらくらです。

 くらくらしながら、腰のポーチから縄を手繰り寄せ、ぎゅっと引き締めました。


「え………リアンカちゃっ 何すっ…!?



…………………………………ぎゃぁぁあああああああっ!!?」





問題:このあとのサルファはどうなったでしょう


 a.厳しい持ち芸指導が入る

 b.埋められる

 c.沈められる

 d.シメられる

 e.吊るされる

 f.父親に引き渡される

 g.新たな扉を開かれる


答えは次話にて☆


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