1.ここは竜の背/あらすじ
お待たせした方も、そうで無い方もお久しぶりです。
タイトルを見れば分かりますが、こちらシリーズ物の6作目となります。
前作までを読んでないと意味不明展開も多いかと思います。
気になった方は前作までを参照下さい。
一応、今までの流れをさらう意味で今回はあらすじ回をつけました。
皆様お久しぶりです、リアンカです。
今、私は竜の背にいます。
そして、ここ重要。
何と此処は、魔境じゃありません。
私、初めて魔境を離れています。
一日じゃ帰れないくらい魔境を離れるのは、少しドキドキしますね。
え、どういうこと? 何があった?
そう思われる方もいらっしゃいますかね。
それではここはひとつ。
ざっくりさっくり、今までのお話の粗筋いってみましょーか。
昔、昔。
→ざっと半年前
場所は魔境。
人類最前線と呼ばれる平凡とは呼べない村に、一人の勇者様が現れました。
→現在、勇者の称号を持つ人は限定一人。
人類最前線とは、悪鬼羅刹の巣窟たる魔境に唯一の人間の村。
勇者様はセオリー通り、この村へ最後の補給に訪れて叫びました。
「って、近い! 近すぎる! 魔王城にこんなに近くて大丈夫なのか、この村!?」
それは村に初めて来た人々が口にするのと、同一のもので。
ご多分にもれず、勇者様も村を目にして頭を抱えました。
魔境に着いて、初の頭抱えですね。
人類最前線と呼ばれる我がハテノ村。
立地が少々特殊になっております。
何しろ魔王城最寄りの村で、魔王城の城下町より近いんですから。
魔王城の城壁がどーんと続いているその隣、まさに隣接。
城の門から村の入り口まで道なりに沿って歩いて、距離五分。
道を無視して城壁沿いに歩いて三分。
そして魔王城の壁を無視して、塀を乗り越えたら距離二十五秒ですよ。←落下時間。
ええ、うちの村、ちょっと異常なんです。
村の創始者である御先祖が何を考えていたのかは、よくわかりませんが。
私達村民はお隣さんたる魔族の方々と平穏無事に親密なご近所づきあいを重ねておりました。
それを証明する、という訳ではありませんが。
現村長は先代の魔王さんの婚姻を介した義兄になります。
ええ、先代の魔王さんが人間と結婚したので。
そうして生まれたのが、当代魔王バトゥーリと妹姫セトゥーラの二人。
私の従兄弟の、まぁちゃんとせっちゃんです。
ちなみにまぁちゃんの「ま」は魔王の魔からきています。
まぁちゃんは昔から私とも仲良く遊んでくれる気さくな兄ちゃんで。
最近は畑いじりにはまって、仕事をサボっては村でジャガイモを育てています。
そんなお兄さんが魔王だとは、勇者様も思わなかったようで。
ええ、ちょっと顔は美しすぎる超絶美形ですが、勇者様も並び立つレベルの美形だったので。
完全に人間ベースの姿をしているまぁちゃんに、違和感も何もなかったらしく。
勇者様はまぁちゃんが魔王だと気付かずに一週間と五日を過ごしました。村で。
村に着いて、最初に手合わせした相手がまぁちゃんだったのも運の尽きだったのかもしれません。
まあ、元々勇者様の運なんてあって無きようなものですが。
圧倒的強さでまぁちゃん、圧勝。
自分を見つめなおす必要に迫られた勇者様は己の鍛えなおしを決意。
そしてまぁちゃんを、魔王討伐の仲間に誘っちゃったり。
まあ、当然断られましたが。
そのあとも友好な関係を築き、うっかり打ち解けちゃった勇者様。
真実を知った時にはショックのあまり、引き籠っちゃったりしました。
勇者様は、精神面が弱い人だったのです。
すぐに打ちのめされ、頭を抱えて苦悩する。
だけど復活が速いので、ちょいちょい落ち込んではさっさと回復するという感じです。
そうこうする内に自分の中でどう折り合いをつけたものか。
勇者様は、自力で復活なさいました。
まぁちゃんが魔王で、その魔王とうっかり友誼を結びそうになっていたという現実に。
それから勇者様の事情を顧みない、馴合い生活が始まりました。
その後、なんだかんだありまして。
魔境の常識非常識に振り回されながらも、勇者様の苦難過ぎる日々は過ぎていきます。
勇者様は次第に魔境に染まったり、受け入れたり、達観したり、諦めたり。
気付いてみれば、結構受け入れている状況です。
あの日にはもう戻れない(笑)、ってやつですね。
良くも悪くも魔境の住民化しつつあった勇者様。
しかしある時、そんな彼の元へ使者がやって来ました。
派遣元は勇者様の故郷、人間の国々の盟主国。
勇者様は、その国の王子様だったのです。
勇者様は超絶美青年。
そして生まれつき複数の神から加護を受けておいでです。
陽光・美・愛・幸運を司る神々の加護。
その副次的効果のせいで変な相互作用が起こり、勇者様は過酷な人生を歩んで参りました。
勇者様は人間なのに魅了の状態異常効果を常に放っている状態で。
即ち、幼少の頃から洒落にならない女難に苛まれてきたそうです。
幸運の女神の加護がなければ、とっくに死んでいておかしくないとはまぁちゃんの言で。
つまり、そんだけヤバいと。
勇者様は必然的に女性を避ける生活を送るようになり、自衛手段として剣の腕を磨いたとか。
気付いてみれば女性不信の女性恐怖症になっていたそうです。
魔境は状態異常への耐性がある人が多いので、そんな勇者様の境遇に実感はありませんでしたが。
当人にとっては堪ったものじゃなかったのでしょう。
それが原因で、十九歳の今に至るまで決まった婚約者がいないままに過ごされています。
それに焦ったのは、お国の重鎮さん達で。
お世継ぎの嫁問題に口を挟んだ結果、勇者様の意思は丸無視である決定が。
勇者様が勇者として旅立つことが決まった時、その供に彼らは要望をねじ込んできたのです。
つまり、勇者様の供に選出されたのは全員貴族の未婚女性。
勇者様は逃げました。
もう逃げるしかあるまいと、力の及ぶ限り逃げました。
逃げすぎて、うっかり本来の予定をすっ飛ばしていたことにも気付かずに。
勇者様は、旅立ちに定められていた日よりも一年近く先に国を飛び出してしまったのです。
王子としての勇者様が出席を義務付けられた式典が、一年後にあることを忘れて…。
その事実を突き付けられ、勇者様は一年ぶりの帰郷を余儀なくされました。
そうして勇者様は、お国に一時帰国することに。
面白そうなのと興味本位と、勇者様が心配なのとで。
私、まぁちゃん、せっちゃんも同行させていただきながら。
勇者様が半年をかけた道のりを大幅短縮する為に。
竜種の長とされる、真竜族の背に揺られながら。
三頭の真竜を並べ、私達は魔境を離れたのです。
………というところで、今回のお話はじまるよ☆
ここは人類最前線6
~光を受けし人の国~
勇者様の厳しい戦い(笑)が、いま始まる…!
本格的な本編は、登場人物紹介以降となります。
勇者様の受難をお楽しみに☆