第二話 「過去編2」
その日の放課後は、係の仕事で僕と颯太と楓は教室に残っていた。
というより、残されていた。
「悠馬ー。僕もう部活行きたいよぉー。」
無言でやっていた颯太だったが、もう限界か。
「うーん。そんなこと言われてもねぇ…。ほら、あともう少しだから。な?」
僕は机に突っ伏した颯太を見下ろして言った。
駄目だ。全く動く気配が無い。
「むー。僕、背低いから掲示係は無理なんだよー。」
今度は机の上であぐらをかいてふくれっ面をし、向こう側を向いた。
「颯くん、3人で掲示係になろう、って言ったのは誰?」
楓!!楓が話に入ってくれれば、颯太はちゃんとするんだよな。大抵は。
「3人でなろう、って言ったのは悠…「颯くんだよね?」
「うっ。」
楓が颯太の言葉を遮って、ニコニコの笑顔で言った。
いや、こわいよ。真面目に。
「颯くんがなりたい、って言ったんだから、ちゃんとやらなくちゃでしょ?それに、颯くんはセンスがいいから、綺麗に掲示できるよ?」
そう楓が言った瞬間、後ろ姿の颯太の体が、ぴくっと跳ねた。
「本当に?」
颯太が後ろを振り返って言った。
目が赤い。泣いてたな、こいつ。
いや、まあ、確かに楓はこわい。
「うん!だから、一緒にやろう?」
楓が掲示物を颯太の前に差し出した。
颯太はそれを受け取った。
「うん!僕、悠馬と楓と一緒にやる!」
すご…!あの颯太があれから10分間、文句も言わず、黙々と作業をしている。
やっぱ楓はすごいな…。
「悠馬!それ、なんか位置おかしい!センス無い!!」
颯太は人差し指で僕を指差して言った。
「…は⁉︎なっ…!センス無くはない!!」
「センス無い!!それ、位置おかしい!!」
颯太はおかしいおかしい、と、言い続けてくる。
「うるっさいなー!分かったよ!もう、イラっとするなぁー!」
僕はそう言いながら一度掲示した掲示物を剥がし、颯太の言った通りに掲示し直した。
「イラっとするってひどいー!悠馬のバカ!!」
「バカじゃないよ!!バカって言う方がバカだよ!!」
その後約1分間「バカ」の言い合いは続いた。最後は楓が僕と颯太に「バカ」と言い、終わった。
少しイラっとするけれど、やっぱり、楽しいな。
こんな日が、ずっと、いつまでも続くといいな。