第一話 「過去編」
「悠馬!ここ教えて!」
楽しい楽しい夏休みが終わり、僕達は休み明けテスト前で切羽詰まっていた。
休み時間になると、僕の机のまわりには人だかりができる。
夏休み中に勉強しときなよ、まったく…。
「ここ?ここは、…………ってこと!分かった?」
面倒くさそうな顔をしながらも、僕は幼馴染の颯太に問題を教えてあげた。
毎回、休み時間の度に、颯太は僕のところに「勉強教えて!」と来る。
別に教えるのは構わないが、休み時間の度に来るのは、正直やめて欲しい…。
「う、うん…?ごめん、もう少しゆっくり説明して…。」
…ゆっくり⁉︎
これでもかなりゆっくり説明したつもりなんだけど⁉︎
「え?かなりゆっくり説明したつもりなんだけど…。」
そう言うと、僕の机のまわりにいたクラスメイト全員がピタリと動きを止め、僕をぽかんとした顔で見てきた。
「…はあ⁉︎今のどこがゆっくりなのさ!あのねぇ、悠馬は頭良すぎなの!僕達とは大違いなんだよー!」
「うあー!」と言いながら、颯太は僕の机に突っ伏した。
そんな事言われても…とも思いつつ、僕は颯太の頭を軽く叩いた。
「ごめんごめん。もっとゆっくり説明するから。」
僕がそう言うと、颯太はぱっと顔を上げた。
「うん!あ、じゃあねー、ここも教えて!」
「俺もここ教えて!」
「私も!ここ、分からないんだよね…。」
颯太に続いて、他の人も教科書やノートを開いて、僕に聞いてくる。
もう、面倒くさいなあ…。
いや、でも、
ものすごく楽しいのかもしれない。