月と宝石
あれから五分後。
メールが来た。
〈窓をあけろ!〉
窓を開けると、さあっと夜風が吹き抜けた。ちょうど窓の下に真樹斗が立っていた。唇に指をあて、静かに…と合図している。
(真樹斗、どうする気だろう?)
その時、真樹斗がふっと微笑むのが月明かりの下で見えた。
『飛び降りて』
(え?)
真樹斗は口を動かしていない。なのに声が聞こえる…?
『テレパシーだよ。異星人のコミュニケーション方法だ。さあ、飛ぶんだ』
(え、な、何で?嘘でしょ?けど、聞こえる…)
ここから飛び降りたら、ただじゃすまない。いくら丈夫な真樹斗でも私を支えきれない…
でも、何故か真樹斗の澄んだ瞳に見つめられると、真樹斗が受け止めてくれるような気がした。
『大丈夫』
真樹斗が、両手を広げ微笑んだ。
私は、もう窓に足をかけ、窓から飛び降りていた。
(落ちる…)
我に帰り、一瞬ぞっとした。
だが、私の身体は月明かりのなか、ふわふわと浮いていた。そして、すーっと真樹斗の手の中にゆっくりと落ちていった。
驚く私を抱きしめた真樹斗は、にっと笑っている。
「な、大丈夫だろ?」
私は、あまりのことに言葉をなくして真樹斗の顔を見つめるしかなかった。
「さあ、裏山へ行こう。」
真樹斗は、私をまた自転車の後ろに乗せた。真樹斗の指には、見慣れない青色の宝石が光っていた。
私達は、町の小さな裏山へ向かった。