知覚
真樹斗にあの話をされたのは、三日前だ。
「俺は、異世界の王になることになった」
夜中に話があるなんて、近所の川原に呼び出されたからなんだろうと思ったが…
「はぁ?何ふざけてるの~意味わかんない。もう寝る用意してたんだよ」
よくわかんないと思って、帰ろうとしたけど、何だか胸騒ぎがした。
真樹斗とは幼稚園から一緒の幼なじみだ。いつも仲良しで、小学校も中学校も高校まで一緒だった。
真樹斗が中学になって剣道部に入るまで、毎日学校への行き帰りも一緒だった。
思春期になって少し距離ができたと感じた時もあったけど、基本的にお互いの存在を必要としていた。そして今も…。
周りには付き合ってるのか聞かれることもよくあったけど、そういう関係ではなかった。
真樹斗は何も言ってくれないし、子供の時以外は手も握ったこともなかった。
しかし、真樹斗とは一番私にとって大切な存在であることは間違いない。感情表現が上手じゃない真樹斗だけど、彼が考えていることはわかってると思う。
その私には、真樹斗が全くふざけていないことがとてもよく分かった。
「向から呼びに来たんだ。キールという男だ。俺は、王系の最期の男の末裔らしい。行かなければ、あちらの世界で沢山の人が死ぬことになるんだ。」
「真樹斗…」
涙がこぼれた。真樹斗の真剣な顔を見てふざけないでと言えない。
何のことかさっぱりわからないけど、大変なことが起きている…
(真樹斗が、真樹斗がいなくなる…?)
「俺は、18才の誕生日に向こうへ行く。」