ファカルティ
俺の名は、小田義明。
小さな地球の、小さな国の、小さな県の、小さな町に住む中学三年生。
中学三年生は、やはり受験に追われる。勉強という壁が押し寄せ、どうしても俺は逃げ出したくなる。
今、季節は秋だ。肌寒くなってきたから、恐らくもうそろそろ冬だ。十一月なのだから、当然のことだが。
今日も終業のチャイムが鳴った。俺はすぐに身支度を整え、帰りの準備をする。誰かと会話したいが、今日は帰る気の方が大きい。なんだろうか。
いつもは親友の中込宏太と帰るが、今日はその予定をすっぽかした。何故だろう、理由は分からない。しかし、宏太も川口翔馬と遊ぶ予定だったらしいので、ちょうど良かった。
俺は玄関に出ると、いつものように新海直人に「さよなら」と告げ、玄関に立つ二人の先生に別れを告げた。二人の先生の名は鬼塚陽、高崎明という。二人は学校でも評判の仲の良い夫婦だ。結婚十年目なのに、未だ新婚気分という可笑しさだ。学校での姿は、微笑ましすぎて見ていられない。
俺はいつものように自転車を引きながら、坂道を登って家を目指す。
何故かその行動が、定められていたかのようだった。
そんな俺を、誰かが引きとめた。
振り返ると、野中高亮がそこにいた。いつもは下から帰るのに、何故か今日は上からだという。
「話がある」
おいおい、決闘かよ。受験の前に喧嘩は―
高亮は真っ先に否定した。思いつめた表情で、
「頼むから聞いてくれ」
と言う。なにかあるらしい。恋の相談は、受け付けてないよ。
高亮が突然話し出したのは、とんでもない話だった。
世界が『終末』を迎える危機を救うため、俺や、新海直人や、『濱田悠太』という少年が、中込宏太、川口翔馬、『新海政貴』という少年と戦うらしい。なんだそれ。しかも俺は空気の能力者。馬鹿らしい。
そう、普通に聞けば、馬鹿らしい話だった。そもそも、『濱田悠太』、『新海政貴』って誰だよ。聞いたことがない。
しかもこの話は全て、生まれてからいつも見ている夢なんだそうだ。こんな可笑しな夢を見させられている高亮は、病院に行ったほうがいいのかもしれない。
でも、その話に俺は魅了された。何故だから分からないが、体ごと引き入れられるような感じだ。
そんな俺に高亮は、
「この夢で、小説を書いてくれ」
と言った。
俺は小説を書くことができる。小説を書くのが、俺の生きがいだ。最近は勉強そっちのけで、小説を書いている。それが俺の長所でもあり、特技だった。
俺は二つ返事で承諾した。面白そうだからだ。
そして俺は、高亮から夢の詳細を聞きだし、メモして、小説を書くことにした。
メモの時点で、その話は魅力的だったし、可能性をも感じさせた。
今から俺は、その話を書こうと思う。だからこうやって、パソコンの前に座っているのだ。
俺は上を見上げた。もちろん、上には無機質なゴツゴツとした天井があるだけだ。
でも、青空が見えるような気がした。高亮の夢の中の『濱田悠太』という少年は、青空をしきりに見ていたらしい。それも分かる気がする。母なる海というが、母なる空でも、十分その壮大さを感じる。
『濱田悠太』
『新海政貴』
良い名前だ。何故か、心の奥がポカポカと温まる。
俺はパソコンを起動させ、wordソフトを開いた。
リズムよくキーボードを叩き、俺はその真っ白な世界にもう一つの『世界』を構築していく。小説とは、世界の構築だからだ。
題名はもう、考えてある。語呂も良いし、夢の中の戦士にはピッタリだ。
―ファカルティ。
素晴らしい名だ。
この物語を、夢の中の『元素』達に、贈ろう。
命捨てて戦った、戦士達のために。
みなさん、ご愛読ありがとうございました。
これは、最初、中二妄想でした。しかし、皆さんのお力添えで、具現化することができました。ありがとうございました。
見ての通り、ただの中二病の小説です。
ところでみなさん、この世界が、「ファカルティ」の様な世界だったら、どう思いますか?僕らの知らないところで、『濱田悠太』や『新海政貴』のような人々たちが、世界を創生したのかもしれません。
そんなことを考えたら、案外この世界も面白いなぁ、なんて考えるものです。
最後に、したらばのごく一部のみなさん、ご協力、ご参加、ありがとうございました。