表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/30

Hallelujah!!

 僕の名は濱田悠太。―今やその名前も、僕の脳内から薄れつつある。僕は元々元素だ。濱田悠太という名は、人間界で互いを区別するための、ただの文字に過ぎない。名前が本質というわけでは、ないのだ。

 僕は今、『無』という世界の中にいる。何もない。目の前には広がるのは、漆黒の世界であって、光輝の世界でもある。時間という概念も、空間という概念も存在しない。物質という概念もだ。じゃあ、僕はなんだろうって考える。でも、それさえも『無』は教えてくれない。

 僕は光だった。でも、この世界のルールじゃ、『光』ではない。とにかく、僕の薄れつつある記憶の中で考えられるのは、『光』という呼称だった。

 光は僕の他に、二つあった。

 僕の目の前だ。でも、これは僕の背後かもしれないし、僕の右側かもしれない。

 僕の薄れつつ記憶の中でも、この二人の光には、名前があった。

 『新海政貴』

 『アンノ』

 という名だ。可笑しな名前だ。僕の名もそうだが、人間というのは意味の不明な名前を付けたがる生き物だ。『濱田悠太』『新海政貴』『アンノ』。法則も何も見出せない、ただの文字の羅列。でもそれが、人間にとっては意味を持つ。


僕は政貴とアンノに、過去を教えてもらった。この過去も、一秒前の過去かもしれないし、数億年と前の過去かもしれない。

 ―かつてこの無という世界は、存在していなかったらしい。『世』というものが存在していたらしい。どこか懐かしい感じだ。

 政貴は僕に、いろんなことを教えてくれた。政貴自身も、記憶を段々失っていくというのにも関わらず。


 その『世』は、僕と政貴の衝突によって消滅したらしい。

 僕の力と、政貴の力。その二つに共鳴した『種』が、反応を起こして、瞬間的に爆発的で膨大な途方もない力を発生させたらしい。


 それが、『世』を消滅させた。

 

―聞いた話だが、僕は『世』の終末を止めようと政貴と戦ったらしい。おかしな話だ。同じ元素同士で殺しあうなど。

 殺すことは、『存在を消す』ことだそうだ。この世界には、『存在』という概念もないから、それもよく分からない。じゃあぼくは何なのだろう、って考えても、実は考えていないし、頭が痛くなるようで、痛くならない。

 そんなカオスな世界で僕は突然、あるビジョンを見た。

 ―小田義明。

 ―新海直人。

 ―中込宏太。

 ―川口翔馬。

 ―高崎明。

 ―鬼塚陽。

 ―野中高亮。

 

 この文字達は、僕が戦った『仲間』だと気付いた。そして、僕はある衝動に駆られた。


『世界を創生しないか』


 元来、元素に欲は存在しない。しかし、人間という存在が僕の元素に、ある欲を刻み付けたのだと思う。そうでないと、僕はこんな行動を起こすはずもない。

 政貴とアンノは最初は驚いていたが、やがて行動を起こす気になった。彼らの元素にも、何かが刻み付けられていたのだろう。


 そして僕は、刻み付けられた『欲』に従い、計画を立てた。


 『幸せ』というものに、みんなをさせるらしい。僕と共に戦った『仲間達』を、幸せにさせるらしい。みんなが『笑い』というものを常に持ち続ける世界にするらしい。『人間』という存在らしく生涯を生き抜かせるらしい。

 『幸せ』という定義は難しいものがあった。でも、僕はその『欲』に従うことで、なんとか『幸せ』にする計画が立ったと思う。その『幸せ』でも、不充分なのかもしれない。

 ―そして最後に一つ、ある『ルール』を付け足した。これは、『欲』によるものではない。アンノの願望だ。アンノは何故か、最後の最後まで記憶を保っていた。


 ―そして完全に、僕は記憶を失った。いや、これから失うのだろう。他の『光』もだ。





 三つの光が結合した。三つの光は多大なる力を発生させ、瞬間的に高密度の大爆発を引き起こした。

 ―こうして、世界に『空間』と『時間』、そして『火』と『水』が誕生した。




 ―世は、創生された。










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ