「門の巫女」天下人の証である自分を盗み出した男へ語る巫女の独白
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まだ着かんのか?いい加減、縄が食い込んで苦しいのだ。
それに、お前もそろそろ休んだらどうだ?だいぶ息が上がっておるし、足元もふらついているぞ。
────おっと。
言ったそばから。もうまっすぐ歩けていないではないか。
……ああ、そうだ。それがいい。
ふう。
埃とカビ臭いな。なにかの小屋か。
……廃墟?なるほど、どうりで風が吹き込むわけだ。山の中にこのような場所があったとはな。
……わかるのか、だと?木々の匂い、鳥のさえずり。その程度なら私にもわかる。
ああそれと、ついでに手枷も外してはくれんか?木枠が手にこすれて痛いのだ。
見ての通り目は見えんし、歩くこともできんからな。逃げたりはせんよ。
外せぬか?まあ、お前がつけたものではないからな。だが、小刀くらいは持っているだろう?
……すまんな。世話をかける。
それにしても、随分と遠くまで来たものだな。馬も篭もなしでこの距離とは、随分と無謀な計画だったのではないか?
いや、感心しているのだ。『門の巫女』である私を、あの厳重な石積みの塔からこうして見事盗み出せたわけだからな。
……なぜ門の巫女だというのにこんな仕打ちをうけるのか、だと?
知っているだろう?門の巫女は皇帝の象徴だ。
門の巫女は『天国への門』を開くことができる。
神々の住まう極上の世界、そこには一切の悩みも苦しみもない、幸福のみの世界。英雄だけがそこへ向かう資格があるという、天国への門だ。
そして、英雄を選ぶのは皇帝。門の巫女を手にするものだけが、天下を治める資格をもつ。
だから帝国が滅びた今、諸国の群雄共がこぞって争い求めるのだ。
……それがどうしてこんな目に、だと?
ふん、巫女とは名ばかり、ようは皇帝を名乗る為の道具。戦で勝ち取る戦利品。
だから勝手に歩かれては困るから目を奪われ、足の腱を切られた。手枷に首枷、酷い時は鎖につながれ好き勝手に凌辱もされたわ。不老不死の巫女は、なにをしても死なぬからいいおもちゃであったろうよ。
……なんだ?
ふ、泣いているのか?安い同情だな。なに、どうせお前だって私を荷物のように縛り、背負って来たではないか。
今までも、こんなことは何度もあった。連れ出して初めは同情する。だが敵に奪われ、取り返し、を繰り返すうちに、結局みな最後は繋ぎ、縛り、閉じ込めるようになる。戦乱の世に生きるというのはそういうことだ。
お前がこれから私を誰のもとに連れてゆくのかは知らんが、せいぜい長く飼ってくれるとよいな。あまりあちこち連れまわされるのは好きではないからな。
それとも、お前が自ら天下に覇を唱えるつもりか?私を守り通せるのならそれもいいだろう。全ての勢力を敵に回す覚悟があるのならな。
なに、簡単なことだ。私が天国への門を開いて見せればいい。門が開けば、天国へと至る階段がこの場に出現する。それだけで、誰が門の巫女を手にしているかはっきりとわかる。
もっとも、今ここでそんなことをすれば、追手に居場所が知られるが。
……なんだ?追手に今頃気付いたのか?
それとも追手を巻いたとでも思っていたのか?奴がそう簡単にあきらめるはずがあるまい。門の巫女を失えば奴の勢力は空中分解するだろうからな。
……今のは犬の遠吠えだな。
なんだ?もう発つのか?
まあ、それがいいだろうな。お前は血の匂いが濃すぎる。追手はすぐ近くまで来ているだろうよ。
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……ん。縄か。大丈夫だ。さっきよりは痛くない。
お前こそ大丈夫なのか?休む前より息が荒くなっているぞ。それに気ばかり急いて、さっきよりも足が遅くなっている。
私を背負ったままでは、体がきつかろう。
どこまで向かうのかは知らんが、いざとなったら私を投げ捨てて行け。そうすれば、お前が逃げのびるくらいならできるだろうよ。
……そんなことはしない、か。
まあそうだろうな。ここまで命を懸けて、ようやく門の巫女を手に入れたのだものな。天下まであと少しで手が届くというのに、手放すのは惜しいものな。
だが、命あっての物種だ。見切るべきところを見誤ることのないようにしなければ、命がいくつあっても足りないぞ。
……は?違う?
なにがだ。
……私を救い出すために来た?
はっ、なにを言うかと思えば。
私を閉じ込めていた奴は、たしかに暴虐の限りを尽くした将軍だった。奴の城は日々嘆きと怨嗟の声で満ちていたわ。
だが奴は強かったのだろう?戦に出れば勝ち、敵をことごとく打ち滅ぼしてきた。天下に最も近いのは奴であったはずだ。
もっとも、そのせいでかえって敵を増やし、近頃は戦続きだったようだがな。
どうせお前も、奴の敵の中の一人なのだろう?
まあ、どのような戦も大義は必要だからな。ただ奪うのではなく、奴から巫女を取り戻す、救い出す、と言った方が聞こえはいいからな。
……取り繕わなくてもいい。
みな初めはそう言うのだ。だがな優しい英雄さまよ、お前も本当の目的は皇帝の椅子なのだろう?門の巫女を手に入れたものがなにを欲するかなど、当たり前のように決まっておるのだからな。
群雄諸侯を従え、天下に号令する。それこそが英雄を目指す者の本懐なのだろう?お前は今まさに、それが手の届くところに来ているのだ。
もっとも、私を連れて安全なところまで逃げおおせたら、の話だが。
なに、私を置いて逃げたところで気に病むことはない。門の巫女は不老不死、殺されようとも死ぬことはないからな。それに、奴らは私を取り戻せれば気が済む。追手の足も鈍るだろうよ。
……まだ言うのか。
お前が、私をただ助ける理由がない。あるはずがないだろう。
私は生まれた時から門の巫女として、この国の移り変わりを見守って来た。平和な時代であろうが乱世であろうが、私はずっと権力の象徴として扱われてきた。
私は半分は人であり、半分は人ではない。そういう存在だ。
私を人と同じように見、人と同じように同情するなど、正気の人間の考えることではない。
仮にお前がそうであったとしても、周りの人間が放っておくまいよ。いずれお前は、皇帝の座に持ち上げられるか私を奪われて殺される。
それでもお前は、私をただ助けるためだ、と言うのか?
だとしたら、心底呆れた奴だ。命を無駄に捨てるためにやっているとしか思えんな。
────おっと。
また足がふらついているぞ。もう一度休んだ方がいいのではないか?
追手が気になるのはわかるが、まだ距離はある。
ほら、咳き込んでいるではないか。このまま歩き続けていたら、どのみち動けなくなるぞ。
近くに休める場所はないのか?森の中とは言え、少しは開けた場所もあるだろう。一度私を下ろして────。
っと。
転んだのか?言うそばからだらしのない。今のは少し痛かったぞ。
……おい。だいぶ息が荒いではないか。怪我でもしているのか?
大丈夫か。まったく世話の焼ける奴だ。自分の体力すらわからんとは。いいからそのまま座っていろ。
おい、縄を勝手に解くぞ。私が背中から降りねばお前が横になれないだろう。
どこだ?目が見えんからろくな手当てもできん。
やれやれ。盗品に心配される盗人がいるか。
────おい。返事くらいしろ。おい。
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気が付いたか。
なに、ほんの十秒ほどだ。意識を失ったときはどうしたものかと思ったぞ。
……逃げなかったのか、だと?
バカめ、私にはここが森のどこかもわからん。一人でうろつけば、森の中で行き倒れになるか、獣に食われるのがオチだ。それでも私は死にはせんが、痛いものは痛いからな。
また咳が出ているではないか。だいぶ無理をしたようだな。
いくら己の野望のためとはいえ、命を削るのはあまり賢い選択ではないな。そのまま少し休んでおけ。
まったく。
お前が無理をすれば、悲しむものがお前にもいるだろうに。
……はっ、なぜ謝るのだ。
まるで私が心配しているようではないか。私は呆れているのだ。心配などではない。
……昔にも、同じことを言われた?
誰に言われたのかは知らんが、お前は人に心配をかけてばかりなのだな。
……私に?
それを、私が言ったというのか?錯乱でもしているのか?
その言葉をかけたのは私ではない。お前に近しい別の誰かだろうよ。
……それが、お前の名か。
ふん、聞き覚えがないな。というより、どこにでもある名だ。どこの誰かなど区別がつかん。それに、仮に私がさっきの言葉をお前に言ったのだとして、それがどうしたというのだ。
……思い出す?なにをだ。二十年前?
そんな昔のことなどとうに忘れてしまったわ。それほど長く戦が続いていたからな。
帝が倒れ、お決まりの後継者争いが始まったのもその頃だったか。あの頃はまだ、都の周りは平和だった。
だがそれでも、戦に追われて逃げてきた者たちが次第に増えていったな。
私は、身寄りを亡くした子供を引き取って面倒を見てやっていた。帝に我儘を聞いてもらい、孤児院を建ててもらってな。
あの頃はまだ目も見えていたし、歩くこともできたからな。
……その時の孤児?お前が?
まさか。そんなはずはない。いや……。
そうだな。確かにその名には聞き覚えがある。
両親を失い、兄弟も姉妹もみな亡くし、生きる気力も亡くしていた子。
字の読み書きを教え、人として生きる道理を教え、一人でも生きてゆけるように面倒を見、育ててやったな。
お前が、その子だと言うのか?
そんなはずがない。だって、あの子は……。
いや、違う。わかったぞ。危うく騙されるところだった。良く調べたものだ。驚いたぞ。まさかそんな昔のことまで持ち出してくるとはな。
危うく信じてしまう所だった。
危ない、危ない。
昔の縁故を騙って近寄ってくるものは数多くいた。お前もその手口か。
まったくよく考えたものだ。まさか私に助けられた孤児を名乗ってくるとはな。その手には乗らん。
バカめ。調べが足りなかったようだな。
────その子は死んだよ。
両親と同じように、戦に巻き込まれて。私を奪いに来た辺境の将軍が都を襲撃したときにな。
惜しかったな。
私を騙すにはもう少し足りなかったようだな。
……死んで、いない?
────ふん、信じるものか。
嘘。すべてが嘘。門の巫女を利用するためだけの嘘。
信じない。信じたくない。私を救い出すなどと。そんな言葉に希望はない。二度と信じない!
……待て。
なぜ。
────その呼び方を知っている?
誰に聞いた?いや、誰も知るはずがない。なぜお前がその呼び名を知っている?あの子にしか明かしていない、私の幼いころの呼び名を。
────まさか。
でも、本当に……。
この世界はみな醜くてゆがんでいる。おぞましく穢れている。そう思って、憎んで恨んで生きてきたのに。
────お前の声を聴いていると、つい信じたくなってしまう。
……おい、今の咳はなんだ?
ただの咳ではないな?それに呼吸に水音が混じっている。
無理に体を起こすな。今支えてやる────。
おい!手に濡れたものが付いたぞ。温かい。返り血ではないな?これはなんだ?
お前の怪我か?どこを怪我している?
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手か?手を握って欲しいのか?
震えているではないか。おい、もういいから横になれ。
着ているものは脱げるか?止血をしてやる。
いや、無理ならいい。
なぜ、怪我を黙っていたのだ。すぐに手当てをすれば、いや私など捨て置いて逃げておれば助かったかも知れないのに。
おい、しゃべるな。体を起こすなと言っているのに。
……あの日、か。
あの日。辺境将軍の兵士たちに追われ逃げる私をかばって、お前は────いや、あの子は斬られたのだ。あの子だけではない。孤児院にいた子らはみな殺された。
そして私は将軍のもとへ連れ去られ、そして将軍は皇帝を名乗った。門の巫女を庇護するものとして。
地獄であったよ。
庇護とは名ばかりで、ずっと石牢に幽閉されて。だがすぐに次の簒奪者が都を襲い、私を遠く辺境の地へ連れ去った。
ようやく都へ戻って来れたのは、私の所有者が幾度か変わった後だった。
孤児院の跡には、行きたくても行けなかった。自由な行動などできなかったからな。
……そうか。敵の指揮官に拾われたのか。
身寄りもない、縁もないお前を引き取り、面倒をみたというわけか。
あんな暴虐な将軍の下にも、そんな人間がおったとはな。子供が死んでゆくのを見捨てられなかったというわけか。
────私と同じだな。
あれは、贖罪でもあった。世が乱れるのを知りながらなにもできない自分に、せめて慰めと言い訳を作るための行為。無意味で下衆な行為よ。
だが、そのおかげでお前は助かったのだな。
おい。もういいからしゃべるな。
呼吸が弱くなっているぞ。手を握っていてやる。だから────。
……二十年。
そうだな。もう二十年にもなるな。
国中、どこへ行っても戦ばかり。裏切り、謀略、騙し合い殺し合うのが当たり前の世界。
安寧の地などどこにもなく、ただ弱いものが貪り食われるだけ。
そんな地獄のような世界を、お前は長い事旅をしてきたのか。
────長い、長い旅であったろうな。
……ずっと、私を探していた、のか。
バカめ。私など忘れて、自らの幸福を求めておれば、こんなことにはならずに済んだかも知れぬというのに。
私などのために命と人生を賭けるなど、愚かにもほどがあるだろう。
しょせん、私は門の巫女。皇帝を名乗るために必要というだけの存在。
所詮、私は門の巫女としてしか見られない。皇帝の証として求めるだけの存在。誰のもとへ行こうが、誰も気にしない。
私がどんな目に合っていようが、悲しんでくれるものなどどこにもいない。
……お前がいる、と?
────。
────────そうか。そうだったな。
お前は子供のくせに狩に出かけて、子供の猪を獲って来たのだったな。それがどれだけ危ないか、ひどく叱ったっけ。
……そうだ。
お前が死ねば、悲しむものがお前にもいるだろう、と私が言ったのだったな。
そしてお前は言ったな、そんな者はいない、と。
────だから私は。
……そうだ。よく覚えているな。
ああ、私も覚えているとも。私はお前に『私がいる。私が悲しむ』と言ったのだったな。
────っと。
無理して体を起こすからだ。
よい。体を支えていてやろう。
随分と大きくなったものだ。お前の方が私よりも大きくなってしまうとはな。あの細っこい子供が。背中まで手が回らんな。
よく食べているのか?痩せているではないか。鎧がスカスカだ。
だいぶ傷んでいるな。どれほど長く戦ってきたのか。
────私などのために。バカものが。
動くな。傷が開く。
────髪か。恥ずかしいからあまり触れないでくれ。見えぬから、手入れなど。
ああ、重たい。いや、このままでいい。
久しいな。人の心臓の音を聞くのは。
泥と汗の匂い。子供だった頃と変わらんではないか。
誰かのぬくもりに包まれるというのは初めてだ。が、悪くないものだな。
……私を、救う?
そんな、こと────。
そんなことのために、そんなことを考えて、いたのか────。
お前は。
────私などより、お前が幸福であって欲しかった。
────おい。
もういい。もう手に力が入っていないではないか。
ああ、待て。お前は動くな。
今、包帯を巻いてやる。私の衣を割けばいい。小刀をくれ。
くそ。手が震えて上手く裂けぬ。このボロ布め。普段は勝手にほつれていくくせに。
血が止まらぬ。嫌だ。待ってくれ。今裂いた布を巻くから。
体温が下がってきている。
頼む。待ってくれ。血よ止まれ。ああクソ!
目が見えぬ。目が見えればもっと。
おい。待て。待ってくれ。
私に希望を与えるだけ与えて、勝手に死ぬな。
ちゃんと最後まで救え。こんな中途半端で終わらせるつもりか!
おい!
…………。
…………頼む。
返事をしてくれ。
────私を、救ってくれ。
※※※
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※※※
────静かだな。
小雨か。
血の匂いも消えてくれるとよいのだが。
────。
お前は、ひねくれものだったな。
なにかと言うと私に歯向かい、楯突き、素直に言うことを聞かなかった。
寂しさから、ということはわかっていた。だから私は叱らなかったのだ。
だが私はわかっていた。
お前は、本当は心優しい子なのだと。
猪を狩ってきたのも、私に渡すつもりだったのだろう?
お前は、私へのお礼のつもりだったのだろう。
まったく。自分のことなど顧みず、いつも無茶ばかりするから。
ほんとに、昔からそういう奴だったよ。お前は。
でも。
嬉しかったのだ。ほんとうは。
誰かが私のために、なにかをしてくれるなど。
なんの見返りもなく、ただ純粋に喜ばせようとしてくれるなど。
────はじめてだった。
お前だとわかったときは、信じられなかった。
というより、信じたくなかった。こんなに嬉しいこと、どうせすぐ奪われる。裏切られる。だから、どうしていいかわからなかったのだ。
────ああ、そうか。
私は嬉しかったんだ。
お前に会えて。お前が、私を求めてくれて。そんな者が、私にもいてくれて。
私は、お前のことなど忘れてしまっていたというのに。
お前は、ずっと私を探し続けてくれていたというのに。
失うことなど、奪われることなど、とうに慣れた。
────慣れた、と思っていたのに。
こんなに、こんなに胸が苦しいものなのだな。
ああ。
もっと。
もっと早く、お前に気付いてやれていれば。
いや、ダメだな。目を失った私では、どうすることもできん。
それに、私などがお前の運命を救えたはずも────。
────。
いや、そうだな。
私など、という言い方は、やめよう。
お前が、悲しむ。
天国への門。
英雄だけが通ることが許される門。
そして、神々の住まう国へと至る階段。
────門の巫女が命ずる。天国への門よ、ここに開け。
目が見えずとも、そこにあるのはわかる。
暖かい光が、差し込んでくる。
静謐。澄んだ空気。優しい風。
わかるか?今、お前を運んでやる。
────お前は、私にとっての英雄だ。
門の巫女を守る為に命を捧げたお前には、この天国への門をくぐる資格がある。
皇帝の認可など必要ない。
この巫女が許可する。
私がお前にできるのは、このくらいだ。
そして、これが最後だ。
私が巫女として誰かを救うことができたのなら、それが私の救いとなる。
私を救おうとしてくれたお前を、この世界から救ってあげる。
さあ行け。苦しみも、悲しみも、悪い事はすべてない世界へ。
※※※
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※※※
男は、目を覚ました。
静かな森の中、柔らかい日差しが心地いい。
体を動かす。痛みはない。
流れていた血は止まり、脇腹を深く裂いた怪我も治っている。
男の手には、さっき狩って来たばかりの猪がぶらさがっていた。
ふと顔を上げると、目の前には小さな小屋が建っていた。
小屋の扉がゆっくりと開く。
そこには、自分を拾ってくれた、あの優しい巫女が立っていた。
綺麗な白絹の巫衣と、長く美しい黒髪が風に揺れている。
それで、男は、自分の長い旅がようやく終わったことを知った。
巫女は、男に微笑んだ。
「おかえり」
「ただいま」




