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 冷たい石の感触で目が覚める。起き上がると背中がバキバキッというのと同時にゴミ捨て場のような匂いが鼻につく。

「ここは…?」

 見渡すと汚い石畳の上で寝転ぶ人間や、ゴミを漁るカラスが目に止まる。

「日本ではなさそう。本当に転生?したんだ…」


 (なぜ彼女はこんなにも冷静なのか。彼女の過去を見てみよう。齋藤文香21歳。小説家のおと)

 んもう!自分のことは自分で説明するわよ!

 (おやおや、楽しみですね。)

 はぁ…私は本が大好きだった。でもその本に殺された。大学図書館で戦争小説を読んだあと、史実とどれくらい違うのかを比べたくて資料を探したの。やっと見つけたけど、それは上の方にあったし分厚くて…。しょうがないから踏み台持ってきて取ろうとしたところまでは良かったんだけど、問題はその後!その本が落ちてきたのよ!で、目覚めたら目の前によう分からん男!『君は死んだよ。』とか言われても分からんから!

 (その通り!彼女は死んだのです!ではこの状況はなんな…)

 うるさい!今私が説明してる最中でしょ!

 (はい。ごめんなさい。)

 ったく…その男は私に選択を迫ったわ。君の死に様は実に面白いって馬鹿にした理由でね!でもその提案は素晴らしいものだったわ。君が読んだ小説に近い世界へと転生させてあげよう。飛びつくしかないでしょう!したいわよ!ただそいつの勝手な行動だからチートはなし、言語能力も与えられないからある程度成長した14歳で記憶戻すってことになったわ。んで多分それが今。

 にしても汚いところね。14歳になったら戻るのなら誕生日でしょ?なんでこんなところで寝てるのよ…

 (現実逃避をしたいのだろう少女はもう一度横に)

 なろうとしてないわよ!孤児でしょ。わかるわそれくらい。とりあえず状況把握ね。

 

 改めて周りを見る。石畳に煉瓦の壁。ボロ布のような洋服を着てる人間。遠くから聞こえる騒音。馬っぽい音と、汽笛。

やっぱりここは定番異世界ファンタジーの可能性が高い。

「魔法使えるかな?」

 使いたい!魔法と言えば水かな?よし!

 手のひらを見る。煤だらけで細く小さな手。14歳にしては小さすぎるようにも見える。しかしそれを無視し呪文を唱える。

「ウォーター?ウォーターボール?water?」

 それっぽい言葉を並べてみるものの汚く小さな手は何の変化ももたらさない。

 ダメだ。何にも出てこない。それもそうか。使い方も魔力量も知らないのだから。

 とりあえず街を歩いてみよう。それが状況把握には1番有効的だろう。

 フラッ。ドタッ。ギュルギュルギュル。

「え…?」

 視界がぐるぐると周り、お腹が大きな雑音を奏でる。

 動くのを諦め、ため息をつきながら上を向く。その時に手が動いたのか何かに当たった。しかしそれを気にせず鈍色の空を見ていると黒く大きい鳥が見えた。気を取り直してさっき手に当たったものを確かめる。

パンだ。若干白いもはもはがついているもののパンだ。でも流石にこれは食べれない…。

 しかし手は勝手にそれを口に運ぶ。不味い。不味い。心の声と裏腹にパンは減っていく。不味い。食べ終わった頃には口の中でカビの味が広がっていた。吐き気すら覚えてくる味と匂いであった。しかし、カビてるとしてもやはりパン。食べたことで元気が出てきた。

 ゆっくりと立ち上がりおそらく路地裏であろう道を音のする方に壁伝いに歩く。そこらじゅうにいる細くぼろぼろの人間たちが不審そうに見てくる。街の喧騒が近い。もう直ぐだ。

 石畳を叩くいくつもの靴跡、怒鳴り声や笑い声に交じって、焦げたパンの匂いと排気ガスのような匂いが体も包んだ。スーツかタキシードに似た格好をしている男性や、レトロなワンピースに身を包む女性が多くいる。

「Come here! It's freshly!(いらっしゃい!パン焼きたてだよ!)」

「Look! The popular One-piece dress! I discount now~ (見てみて!今流行ってるワンピース!今なら値引きするよぉ〜)」

「ちょっと負けてよ。おじさん。最近ちょっと高いわよ〜」

 様々な声が聞こえてくる。最初は耳が慣れなかったがすぐにわかるようになった。

「都会だ…!」

 ぎっしりと並ぶ屋台、香ばしい匂い。

 ここはどんな街なんだろう。もっと見たい、知りたい。

 だけど、街の明るさに対して人の波は冷たかった。誰も彼女に目を向けず、ただ自分の生活に急いでいる。取り残されたような感覚に、背筋がひやりとする。

 それでも足は勝手に前へ進み、人混みの中に飲まれていった。


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