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世界の果てまで  作者: 秋田原 充
はぐれ者編
12/14

第11話 医者を夢見る者のプライド


「えっ...?」



......

僕は気づいた。

「っ!体調悪いのに無理してたってことか...!」


今は23時17分...誰かを呼べる時間帯じゃないな...いやしかしここははぐれ者の本拠地、きっと誰か起きているはず。ただ緊急事態だ。焦らず、こういう時こそ冷静に...

リーダーに連絡だ。

「...南海。龍星さんの連絡先は持ってますね?」


「う、うん。」


「龍星さんに電話で事情を話してください。その間に僕が架世くんの状態を確かめます。」


「う、うん。分かった...!」


「もしもし?市橋s...」


南海がリーダーに連絡してる間に、僕が心臓を動いているかのチェックを...

っ!動いていない!とりあえず人工呼吸だ。


架世の鼻をつまんでから、僕の力いっぱい吸った息を2回流す。その後すぐに心臓マッサージを開始する。胸の真んなかに手の付け根を置き、もう片方の手を重ね、両手の指を組む。その後に、肘を伸ばして、垂直に圧迫する。この時は、速いテンポで行うようにする。だけど、舞台やドラマのように胸が戻る前にまたすぐに圧迫するのは良くない。しっかり胸が戻ったのを確認してからまた圧迫する。これを30回ほど続け、また人工呼吸に戻る。心肺蘇生法だ。


自分の記憶喪失に疑問を感じる事が、度々ある。何故こういう知識が豊富にあるのか全く分からない。

...実は、本当に思い込んでいただけの記憶喪失だったのだろうか?

でもそれじゃあ、あの人が信じてくれた事が、全部無くなってしまう。

究は、松坂堂時のことを思い浮かべていた。


本来、僕は記憶を取り戻すために無理やり退院して、あの人に服も借り、迷惑をかけてこんな旅をした。


今はバクテリアを止めるのが確かに最優先だ。

ただ、僕には別の任務がある。


今の状態を好都合と思って、今の僕の謎にある知識、そして人を、



全部利用させてもらおう。


”利用”という言い方は悪いけど、少しでもあの人に顔向けできるようにしないと。


...そんな事を考えている時、リーダーが部屋に来た。

「すまない。遅れてしまった。」


こちらに首を向けた。

「あぁ、緊急処置をしてくれたんだね。ありがとう。後は任せてくれ。」


そうして、少し歩み寄ったあと、市橋は目を瞑り、斜め下を向きながら、右手で心臓の辺りに手を当て、左手で銃の形を作った。そうして葛城の心臓の辺りに銃の形を作った左手を向けて、こう言い放つ。


「ーーー”ハートオーバー。”」


言い放ったあと、ピュンと小さな音が少し響く。まるでサイレンサー付きの”本物の銃”のように。


「っっっ!はァっ!!」


架世は目を覚ました。何が起こったのか僕には理解が出来なかった。


「えっ...?市橋さん、一体何をしたんですか...?」


「いやぁ、僕の能力って奴なんだ。能力のことについては葛城くんから聞いたろ?」

「まあ、はい。」


「僕はまぁ、先導者らしい能力というか。皆からの信頼とか忠誠心が高いと、この左手の銃はどんどん強くなるし、蘇生に使うことだってできる。今のは血を循環させるよう葛城くんの器官にお願いしたんだよ。」


...まあ、よく分からないが凄いことをしたんだろう。こういうのはもう慣れた。


「それ...医者になって使ったら革命ですよ...市橋さん。」

「まあ、南海くんの言うことも分かる。ただ医者志望が目の前にいるんでね...それに、医療は少しずつ進化させていった方がいい。急になんでもを投入すると、僕が引っ張りだこになるし、僕の能力を悪用されたりするかもしれない。

ーーーだから、僕が医者になるのは破滅への前兆だと、僕は思う。」


「なるほど、一理ありますね。」


「まあ一番の理由は、器官が動くのには僕の血がいるんだけど、半分以上体の血液を使うからね...貧血になる。...じゃあ、もう疲れたし、僕は寝るよ。」


「はい。お休みなさいリーダー。」


「ごめん八中くん...私も少し疲れたから部屋に戻るね。」


「分かったよ南海。僕はもう少しここに残る。まだ架世と話したいことがあるから。」


「分かった。じゃあ、お休み...八中くん。」

「ああ、お休み。」


ガチャ

南海が部屋から出たのを確認してから、僕は架世に話しかけようとしたが、


「もうすっかり、タメ口になったね...下の名前で呼んでくれてるし、俺は嬉しいよ。」


先手を打たれてしまった...しかも僕が言おうとしてたことを言いにくい雰囲気になってしまった...


「...ごめん架世。浸ってるようで申し訳ないけど、少し聞かせて欲しい。


なんで、体調悪いのに無理して僕たちに話したんだ?言ってくれたら良かったのに...」


「いやぁ...なんでだろうね...多分、少し安心したのかもね...」


「安心?」


「俺はさ...いつもこんな所に閉じこもってるから人と直接話す機会が少ないんだ。この組織の人達ともいつもは連絡しか取り合わない。もし会って話したとしても、あまり話が弾まない...話をするのは苦手だから...」


「でも、この組織って架世と同じくらいの同年代の人いたよね...?」


「あぁ〜〜シアとか、屋良さんとかね......

2人とも女の子だけど。」




......






「...なるほど。それはしょうがないね。」

「でもね...南海?さんはなんか話しやすそうだったよ。話せなかったけど。」

「ま、まあ今度また話したら仲良くなれるよ。僕も協r」

「さっきの出来事覚えてますかぁ?」


「...うす...」

あらぬ方向を向きながら返事した。


「まあ”絶対”に変な事をしなかったら良いけどね?」

「今君の信頼この場所みたいに”地の底”だからね?」


おお、上手いこと言う...じゃなくて

結構心に来るなそれ...まあでも確かに自業自得だな。

ここはエラリオさんを見習おう。


「...はい。了解致しました。架っ...いや葛城サマァ。」

「媚び売るなァ!」

ボカァン!

......


怪我しないだけマシだったな...

「はぁ...まあとりあえずそろそろ部屋から出た方がいいよ。僕の能力制御もそろそろキツくなってきたから...」

「あぁ。ずっと体調悪いんだったね。申し訳ない。すぐ出るよ

ってぇ!?」


しっかり殴られた後僕は、立ち上がって部屋を出ようとした。


その時。散らばってる注射器で足を滑らした。やばい。盛大にコケてしまう...!


「ああっ!究!?」


ブゥゥゥゥゥン...


痛っ!っくない...?


「ふぅ...危ないとこだったね...能力があって助かったと思う瞬間だったよ。」


「あ、ありがとう。それが、細菌とかを操るっていう...?」


「そうそう。今のは簡単に言うと、俺の強ぉーい免疫君が本来敵であるはずの病原体に命令して、体の器官をバクらせたんだよ。それであの位置からでもすんごい推進力を得て君を助けられた。」


「まあ、今言うけど、下の注射器はウイルスの抗体じゃない。ウイルスそのものだよ。」


「え?こわ。ん?うーん」


「まあ異常な免疫力があるから抗体なんて要らないってことだよ...病原体不足だよ病原体不足。まあでも体調悪い事を無視し続けるとさっきみたいな感じで倒れちゃうけどね...」


言っていいのかは分からなかったが、言う事にした。

「それって、治らないもんなの...?」






「裏切ってしまうようで申し訳ないけど、...自分だけなら、本当は...簡単に治せてしまうんだ。」


「!?じゃあなんで...!」


「まあ、いずれ医者になるものとして...プライドがあるんだろうね...患者の痛みは理解しなきゃならないっていう...俺の”信念”が...」



なんなんだ...毎回僕が出会う人は素晴らしい心の持ち主ばかりじゃないか...場違いだな...僕は...



「僕はてっきり、可哀想な能力だと思ってしまったよ...本当にごめん。

架世にピッタリの能力だよ...有り得ないほどに...」


「はは...そうかもね...ありがとう。でも、今究に一つ頼みが出来てしまったんだ。」


「いいよ。なんでも聞こう!」


「...俺の、初めての患者になってほしい。」

「え?」


そう言われた途端...視界がフラッシュバックした。

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