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世界の果てまで  作者: 秋田原 充
病院編
1/14

第1話 監禁


実際の団体や企業等の名前は改変が入っています。

それでは、どうぞ。







今は、西暦2054年。時代も進み、様々な提案や開発が進められた。


そんな時代でも、技術の発展はというと...


...そう、乏しい。恐ろしく乏しいのである。


全てが失敗に終わっているのだ。


国産総会が採択したSVOICsえすぶいおいしぃーずの開発目標。


これを2045年までに解決させる!

なんて言うのは理想。もちろん失敗した。


色んな政治家が様々な改革を進めるのを半ば諦めた結果であろう。


だがしかし、逆に考えれば変わらないというのはいいことでもある。プラスにもマイナスにも作用しないのは、それだけ、平和な時代であることの証明だ。




なんてことない日常。そんな中でも、サイレンの音は鳴り響く。1人の青年が救急車で運ばれていた。

「ピーポーピーポーピーポーピー...」




それから、随分時間は経った。3年の月日である。


その日、青年は目を開けた。


◆◇◆◇


ーーー目が覚め、僕の眼前にあったのは、知らない天井だった。


とりあえず左を見た。


視点を切り替え、右を向いた。


ベッドで横になったままだったことに気づき、起き上がり、前を見た。


この場所はカーテンらしきものに囲まれていた。

が、ここはどうやら部屋の端っこのようで、窓側の方だった。その窓からは夕焼けがかった空が見えていた。


カーテンを...バッ!と開いても良かったのだが、こういうとき、目覚めてすぐに行動するのは気が早いと考えた。



蝉、、、らしき虫の鳴き声も聞こえる。季節的には、夏だと推測できるだろう。


(それにしても、白びっしりだなぁ、ここの空間は...)


そう。カーテンで全体像は分からないが、天井、ベッド、床、全てが白に染まっていた。


......


僕はとある違和感を感じていた。

その言葉を止めることも出来ず、頭の中で思い浮かんでいたものを口に出してしまった。


「監禁...?」


......


......?

(いや待て待て、こんなに設備が整った監禁ってやつがあるか!)



ーーーと、というか...て、手に...!?


最初は気が付かなかったが、手に針らしきものが刺さっていた。その針はどうやら何かからたどって手に刺されていたようだった。


体を後ろにひねり、その先を辿った。


透明な液体が入った袋、点滴であった。点滴に繋がれていたようだ。



「ぼ、僕はどうしたらいいんだろう...」


青年は、困惑していた。



「ガラガラガラ」


困惑と恐怖が入り交じっていた時、扉の開く音が聞こえる。


ーーーん?なんだ...カーテン越しで音だけしか聞こえないけど、ドアが開いたような音が...


コッコッコッコッ...

足音が聞こえる。その足音はそこらかしこを歩き回っていたようだ。


(!?? こっちに向かってくる...!?)


足音がこちらに迫ってきていた。


(い、息を潜めなきゃ...)


そうして、息を潜める。心臓の音さえ許されないような、そんな心持ちだった。



あ。緊急事態だ。

このままだと、まずい...や、まて、落ち着いてくれ僕...


はっ、はっ、ふぅ...


ぐぶぅぁ!


「がぁはっっくしゅゅゅん!」


しまっっったぁ...!?


まさかこんなタイミングでくしゃみが出るとは...生理現象許すまじ...

監禁されてるっていう危機感もってくれよ...


ーーーありがとう、僕の人生...



「はぁ!?な、なんだなんだ!?」

ドッドッドッドッ



シャャャャァ

カーテン越しに影が見えたあと、呆気なく開けられ見つかった。


「はっ!よかった!目が覚めたんですね八中はちじゅうさん!」


「ん?」


(なんなんだこの人は、僕のことを変な名前で呼ぶし、この状況でめちゃくちゃ明るく話してくるじゃん。悪い人じゃないのか...?)


というかまず僕の名前って、なんだっけ?


「...さん、八中さん?八中さん聞いてます?」


青年は当たり障りの無い対応をすることにした。


「ああ、ごめんなさい...少し考え事をしてて」


「まあ、目が覚めたばかりですしね。混乱しても仕方が無いでしょう。なんだって、3年もの歳月の間、眠っていたんですから。」



「は?えっと...まあ、そうですか。」


(と、とりあえず気にしないほうが、相手も刺激せずに済むだろう。うん。)


さっきの”八中”という名前について、追求してみることにする。


「と、というか、さっき言った八中さんってのは僕のこと、ですよね?名前に聞き覚えがないんですが...」


「!!!なんですって!」


「いや、その変な名前がもしかして僕の名前だったりするのかなぁと思いまして...」


「は...?何を仰っるんです?あなたは八中究はちじゅう きゅうという名前で、年齢は16歳。無職ですよ?って...いや...もしかして...?改めてお聞きします。名前に本当に聞き覚えがないんですね?」


「え、えぇっと、名前も聞き覚えがないですし、年齢が16歳だと言うのにも驚きました。知らなかったので...」


「......そうですか...分かりました。お身体には異常ありませんか?」


「はい、一応...」


「それでは、この後お食事の方を看護師に持っていかせますので。」


そう言って、謎の人物は立ち上がる。

「それでは私はこれで。」



ああいやまてまてまて一番大事な質問をしていないじゃないか!


...まさか名前程度でここまで話が脱線するとは思わなかった...


聞こう。


「少し待ってください!」



「はい?どうされました?」


いや、言ってしまおう。


僕にとって、

今1番大事な質問を!


「一体僕は、」




「どんな実験を受けさせられるんですか!!!」




......





「えぇーと、、、はい?」


「いやいや、謎の点滴を繋げて僕に繋いでいる時点で怪しいと思いましたし、このふかふかなベット........で油断させようという考えならば、合点がいきます。しかも!?さらに!?食事も持っていかせて僕に食べさせるなんて、どうせ何か変な薬剤でも入れて実験に使われるんでしょう!」


「さあぁ!大人しく白状してみるんだぁ!」



......


「...なるほど、これは重症ですね。」

「えっ冷静。」「名前だけでなく、どんな場所なのかすらも知らないし覚えていないと...」


ん?なんか的外れなことでも言ってしまったのか?

いやそんなことは無いだろう。僕の推理は完璧っ.....って待てよ?

聞き覚えのない名前...

自覚なしの年齢……

そして困惑したようなこの人の言動と顔……

しかもさっき看護師って言ってたよな...?




あっ...やっと気づいた。

僕は、記憶喪失だ。

そしてここは怪しい実験施設でもない。ただの病院だ。


なんでこんな簡単なことに気づかないんだ僕は...馬鹿じゃないのか...失礼なことをしてしまった...


「あの......

すみません。」


「いやいや、謝ることは無いんです。記憶喪失だと言うのも信じられない話ですが、その様子だとホントなのでしょう。」



「えっとぉ...ここは病院、ですよね?」


「あの、言葉は知っていても、場所というか風景がイメージできないんです。」


「病院だとも知らずにこんな無礼を働いてしまって...常識がなくて本当にすみません...」


「...なるほど。ああいや仕方の無いことなのは重々承知なのですが、言葉自体は知っていても場所や風景がイメージできないと、、、」



「脳機能障害だとしても、考える力は持っていて、喋ることも出来る...

かなり特殊な記憶障害だと見受けられます。」


「この場合は、CTよりもMRIの方がいいかな...この後でも明日でもいいですので、脳のMRI検査をしましょう。それで何か分かることがあるかもしれません。あ、お金は大丈夫ですよ。身寄りの方もいないようですし、こんな若い人にねだる方が大人気ないですしね。負担しておきます。」



「な、なんとお優しき方...ありがとうございます。ぜひお願いします。あ、あと...」


この人は松坂堂時まつざかどうじさん。職業はもちろん医者で、後で看護師の方に聞いたけど、かなり優秀な部類に入るらしい。優秀な医者が担当なのは有難いのだけど、僕がこんな変な記憶喪失だとは、この人も運が悪い...


記憶喪失ということなので、僕は尚更どうしてこんな所にいるのか疑問に思い、聞いた。


3年前の今日、2051年7月5日。僕は、道端に倒れていたところを救急車で運ばれたらしい。その時の僕はほぼ植物状態だったらしいけど、こうなるまでに陥った状況が分からず、病院側ももうお手上げ状態だったらしい。


僕には身寄りもいなく、裏で”人権剥奪”という形で手当ても受けられないようになっていたらしい。


しかし、僕が3年寝ている間、ずっと松坂さんが僕を諦めずに介抱をしてくれたおかげで、僕は今日まで生きられている。それに...


◆◇◆◇


これは、究が病院に運ばれてから数日経った時の話。


「若い命を捨ててはダメだ!何故それが分からないんです!?」


「もうその子供は起きる可能性も低いんだろ?それじゃあこのほうが世のためだ。」


「...呆れました。もういいです。私がこの子の面倒を見ます。気にしないでください。」


「お前は優秀なんだ。松坂ぁ。しっかり、立場を弁えろよ?お前が勝手にやるのは勝手だが...私たちに影響のないようにしろ。

そんな”要らない子”、目に入ったら嗚咽しそうだ。」


間で、別の取り巻きの医者が口を挟んだ。

「ははは、”要らない子”見て、”要らないもん”出しちゃってるじゃないすかぁ!」


「ははは!上手いこと言うなお前はぁ!」


「いやいや、医院長のおかげでユーモア覚えちゃいましたよーーー!.........っと、はぁ....

さあ松坂、医院長の言うことがわかったかぁ?わかったならさっさと出てけ!!!」



「...ええ。分かってますよ。」

松坂は、唇を噛み締めながら、じっと耐えた。


◆◇◆◇


腐った連中にも松坂さんは反発し、僕は生き残っている。もう僕からしたら神のようなお方だ。



ただ、記憶喪失自体、元々信じられないような話だし、それがこんなややこしい状態だと、さらに信じられないだろう。


松坂さんと看護師の方には、他の患者さんに言わないで欲しいとだけ僕は伝えた。


色々整理もしたいので、MRI検査は翌日にしてもらうことにした。


「じゃあ、少しだけ歩いてみようかな。」

病室の状態を細かく確認したあと、気分転換ついでに、病室の外に出て病院内を回ることにした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

CT:CTスキャン。人間の身体の場合内部構造をそのまま投影して異常がないか確かめる。放射線を用いる。


MRI:MRI検査の事。CTスキャンとやる事は同じだがこちらの方が身体は細かく描写される。そしてCTより身体への負担が極めて少ない。

究の場合は不可解な記憶喪失のためMRIが選ばれた。

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