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其の参 尓中天

厳密に言えば、阿天は我の先輩である。結局のところ、我が殺し屋になったのは彼に手ほどきを受けたからなのだから。

だが、時が流れ、一人前になった今となっては、この先輩を心底馬鹿にしている。

その理由は、江湖で広く知られる川柳に表れている、

「路小佳の無情剣、尓中天の多情手」。

この男の人となりは、これだけでわかるだろう!皆さん、考えてみてほしい。殺し屋として、こいつは殺した人間より寝た女の数の方が多いのだ。まさに殺し屋の恥と言うほかない。

この男が江湖最大の殺し屋組織「北辰」の首領だとしても、こんな情けない実績が広まれば、北辰の名声は地に落ちるのも時間の問題だろう…

組織の仲間たちの不完全な調査によれば、阿天が関係を持った女性はざっと九十人以上。この調子でいけば、数年もすれば、たとえ朝廷が賭博・売春・殺人の取り締まりを強化しても、阿天は殺し屋を辞め、女たちを連れて山に籠るだけで、それなりに生きていけるだろう。

もちろん、本人の言葉を借りれば、彼の最終目標は山賊になることではなく…

「俺には夢がある。いつか殺し屋を引退したら、遊郭を開いて、世界中の美女を全員集めて花魁にしてやる。芸を売るが体は売らない。江湖の爺々どもには見るだけで触れさせない。あははは!」

実を言えば、この発言自体に問題がある。江湖にはもはややる気はあってもやれない人ばかりだから…

……

話を戻そう。阿天について言えば、組織の仲間たちは一様に頭が上がらず、心から崇拝している。その理由は、彼が殺し屋として優れているからではなく、とにかく女を落とした数の多さだ!

この点について、我はどうしても納得できない。我に言われてみれば、我の方がよほど尊敬に値する。理由は二つ。一つは、我は人を殺すとき、男女老若、太いも痩せも、醜いも背が低いも関係なく、手早く一刀両断。しかし阿天が手を出すのは女性だけで、しかも「絶世の美女」に限る。二つ目に、我が殺した人間は間違いなく「初死」だが、阿天が寝た相手が「初夜」という保証はどこにもない!

組織の連中と酒を飲み、酔いが回って騒ぎ出すと、阿天はいつも武勇伝を始める。これに対し、娼婦以外では女を知らないような下品な連中は当然のように拍手喝采、盲目的に崇拝する。

だが我だけは常に彼に反論し、奴が酒の席で自慢話を始めると、容赦なくこの二つの理由で突っ込み、顔を上げられなくしてやる。

長い間、最初のうちは彼も組織の首領という立場上、体裁と品位を保つため、ただ我に愛想笑いを浮かべて聞き流していた。だが、何度も繰り返し挑発され、堪忍袋の緒が切れて、よく言い争いになるようになった。

正直に言えば、二つ目は彼を責められないもので、天災のようなもの、どうしようもない。しかし、一つ目も、後に我はあまり持ち出さなくなった…その理由は、ある時我が彼を揶揄したところ、恥ずかしさと怒りのあまり、仲間たちの前で大声で怒鳴ったのだ。

「くそっ、小路よ、もう一遍その口を利いてみろ、てめえを女装させて俺の男色初体験にしてやるぞ!」

そんな物騒な言葉を聞いて、我はもう何も言えなくなった…それ以来、お互い一歩引いて、なんとか丸く収まった。

ところが、予想もしなかったのは、この野郎どもがそれ以来、陰で我をあれこれと品定めするようになったことだ。その表情がまた実に下品で…

阿天本人さえも真剣にこんなことを言い出した…

「うーん、考えてみれば、小路のこの顔立ちと体つき、肌なら、ちょっと着飾れば、間違いなく絶世の美女になれるな。江湖の男たちの半分以上を魅了できるだろうよ!」

南無阿弥陀仏。仏様、どうか慈悲をお垂れになり、この色気に溺れた淫らな輩どもをお救いください。

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