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其の弐 また、路小佳

後世の人々が知ったならば、かつて江湖で最も名高き殺し屋である路小佳が、ただ師匠のロバを見失ったがために故郷に帰れず、ついには殺し屋という帰らざる道を歩むことになったと知れば、何と思うだろうか。

だが、事実はかくも滑稽なり。我はただロバを見つけられぬという馬鹿げた理由によって、江湖を流浪し、ついには一介の殺し屋に身を落としたのだ...すべては家を離れる際、師匠が放った一言の厳命にある。

「あの畜生が見つからないなら、お前という畜生も戻ってくるな!」

この言葉を我は肝に銘じ、江湖に出たての数年間、ロバ探しの重責を常に心に抱いていた。やがて生計に迫られ、阿天と出会い、彼に導かれて殺し屋の副業に手を染めた。人を殺しながらロバを探す日々。そして歳月は指をパチンと鳴らす間に過ぎ去り、主従逆転し、かつての副業は本業となり、我は江湖最大の殺し屋組織「北辰」の首位となった。しかし幾年経っても師匠の言葉を忘れることなく、今日に至るまで、殺しを終えた後は必ず相手の厩舎を覗く良習を保ち続けている。殺しを終えれば酒楼に酒を飲み、遊女を抱く輩どもと同じ穢れた道を歩むことはなかった...

だが我が孤高の振る舞いは、殺し屋界隈で清流の誉れをもたらすどころか、かえってこの輩どもに江湖中に噂を流される原因となった。「北辰最強の殺し屋・路小佳は変態であるに違いない。さもなくば、なぜ仕事を終えた後、人が花街に向かい、情婦の家に向かい、さらには殺し屋界の一部の下衆どもに至っては...唯一彼だけが、必ず相手の厩舎に向かうのか。変態でなくて何であろうか?」これに対し、我は弁明の術もなく、語れば信じる者もなく、城の濠に飛び込んでも疑いは晴れぬ...

このような出鱈目な噂話は置いておくとして、幾年経っても師匠のロバの行方は知れず、我もまた師匠の家に帰ることができずにいる。

幾年の後、我はすでに江湖に名を馳せる殺し屋となり、金銭も美酒も、佳人も名馬も、思うがままに手に入れられるようになった。しかし我は常に師匠の誓いを忘れず、あの畜生を連れ帰れなかったゆえに、この畜生もただ江湖を漂い、帰る家なき身となった。

幾年の後、我はかつての地に遊び、悠然と故郷に戻ったが、それでも師匠の家には戻らなかった。ただ翠花の口から聞き知ったのは、師匠が大分老い、髪も白くなり、もう酒も飲まなくなったということだけだった。

彼女がこれらを我に語る時、すでに村の入口に住む沈跛子(※跛子は足が不自由の人を意味する)に嫁ぎ、産んだ子供も少し跛であった。

その年、我は錦の衣に馬を誇り、長剣を歌い、千金を惜しまず投じ、江湖に名を轟かせていた。だが彼女は我を二度と見向きもせず、ただ昔話をぽつりぽつりと語り、古酒を酌み交わすのみだった。

その時、彼女が奥の間に向かったのを見計らい、我は阿天に、さも見識ある風を装い、厳かな表情で尋ねた。彼女をどう思うか、と。阿天は笑った。狐のように笑った。笑い終えると、絹の手巾で口を拭い、真面目な顔で我に言った。「小路よ、もしあんたが俺と出会わなかったら、おそらく彼女とお似合いのこのちっぽけ酒屋の大将になっていただろう。しかし今のあんたでは彼女に釣りあわない!」

我は眉を上げ、立ち上がって剣に手をかけ、この男と刃を交えんとした。だが彼は笑いながら立ち上がり、手を我が肩に置いた。我は愕然とした。普段はこの男の武芸は我に及ばぬはずなのに、彼の圧に剣を抜くこともできず、ただ座り直し、呆然と彼を見つめるしかなかった。

「酒だ!酒だ!人生得意の時は尽くすべし、金の盃を月に向かって空しく対するなかれ!」(※「人生得意須尽歓、莫使金樽空対月」は唐の詩人・李白の「将進酒」の一節で、「人生の楽しい時は思う存分楽しむべきで、金の酒杯を月に向かって空しく対するなかれ」という意味です。)

彼は笑いながら我に杯を挙げた。我は我に返り、卓上の酒杯を掴んで、頭を仰け反らせて一気に飲み干した。烈しい燒刀子(※酒の名前)の辛さに喉が焼けるように痛み、咳き込んでしまった...

涙に濡れた目の端に、かつて奥の小部屋へ通ずる敷居の端に隠れ、こっそり顔を覗かせていた二つの小さな影が見えたような気がした。だが時は流れ、昔は今にあらず。すべては戻らぬものとなった...

おそらく、阿天の言うとおりなのだろう。今の我は、もはや彼女に相応しくない...

……

その日、我は泥酔し、阿天が我を支えて帰った。帰り道、我は道中狂ったように言葉を発し、月に向かって歌った...後に彼の話によれば、我が声を張り上げて最も多く叫んだ言葉はこれだったという。

「翠花、酒を持ってこい!」

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