7-6 マリスガス・ミレニスの憂鬱⑥
そして、美麗隊の開発チームの研究所に移ってきたミレニスは、新作の研究を始めた。しかし、これが企画からということから、かなりの困難を極めたこともあったが、やはり、その才能に火がついた。そして、店に行くのは、週に一度に減らして、おまけに休み返上で、開発を進め、その熱心さには、開発チームのスタッフも驚いていた。
やがて、半年が過ぎて、ミレニスから美麗隊本部に、完成の連絡が入った。
そして、数日後、研究室の一室で、ミレニスから、新作の特殊ガスのプレゼンが行なわれた。出席している審査官は、美麗隊本部長のレイラ・ナターシャ・シュミット、美麗隊・特殊部隊サージ隊長のアニエス・エリザベス・デルフィーノ 、そして、開発チームからスタッフの1人、ジュリア・アルデン。
「おはようございます。本日は、お忙しい中、私のために、お時間を頂きまして、ありがとうございます。私は、ミレニス・ジャクリーン・ペネストリアです。この度、美麗隊の開発チームの所属をお赦し頂きまして、ありがとうございました。この機会を与えて頂きまして、この新しい立場において、相応しい新作のガスを発表させて頂きます。
その名前は、マリスガスといいます。マリスとは、悪意という意味で、このガスによって、人の心に潜む悪意を読み取ることができるというものです。」
そこにいる美警察の審査官たちは、まず、そのガスの名前を聞いて、度肝を抜かれた。そんな強烈な名前と、そして、そのガスの驚くべき効果に、次々と驚かされたが、実際に、その効果を目にすると、さらに驚くこととなった。
ミレニスの説明は続けて、
「それでは、こちらへご案内します。」
すると、全員、美の極みの称号の申請受付センターに向かった。
すると、申請受付室の隣りにある部屋から、ガラス越しに、女性が申請受付をしているのがみえる。
その女性は、かなりの美貌の持ち主であり、オーラもその発せられる程度や、そのオーラの繊細さなど、どこからみても、全く怪しいところは見受けられない。そして、オーラ高感度センサーにかけても、全く問題はないと判断されている。
「さて、ところが、ここに用意した、最新の高密度測定機にかけてみると、首から上と首から下の生体エネルギーの値では、測定値が0.001ティカロンのずれが測定されています。この程度の数値のずれは、一見、ただのエラーのように思われてしまいます。そこで、まず、ここに私が今回開発したマリスガスとともに機能する眼薬を用意しました。審査官の皆さん、この眼薬をお使い下さい。」
審査官たちは、その眼薬をとりあげると、特殊な形に目を奪われ、それぞれ眼にさし始め、口々に、
「こんなものは初めてみましたね。」
「珍しいですね。」
すると、ミレニスは、目の前にあるマイクをオンにすると、マイクに向かって、
「それでは、お願いします。」
「了解しました。」
そう答えると、申請受付室の担当者の女性は、机の下にあるスイッチをオンにした。
「今、マリスガスを申請受付室に入れてもらいました。それでは、先程の女性をみて下さい。その顔を、よくみて。」
審査官たちは、申請している女性の顔に注文した。
「いったい、何が起きるのかしら。」
すると、徐々に、その女性の顔が黒くなっていく。
審査官たちは、あまりのことに驚き、審査官の1人、美麗隊本部長のレイラ・ナターシャ・シュミットは、ミレニスの説明を待てずに、言った。
「これはいったい、何が起こっているの!」
すると、ミレニスは、こう言った。
「皆さん、驚くのも無理もありません。しかし、この現象が見えるのは、審査官の皆さんだけなんですよ、先程の眼薬のせいで見えるんです。
実は、この女性は、既に、虚偽美貌の現行犯で逮捕が決まっているんです。まだ、本人にも伝えてはいないので、本人はもう申請が通ると思っています。審査官の皆さんに、この現象をみてほしくて、この女性の罪を伝えずに、今、見て頂いているんですが、この女性は、特殊なマスクを装着しています。
このマスクは、世間には、まだあまり出回っていない最新式の生体マスクで、今皆さんの見ているこの女性の美人顔は、生体マスクの顔なんです。」
すると、審査官たちは、驚きの声をあげた。
「なんですって。この顔がマスクだなんて。」
「本当に驚きだわ。私も、こんなに精巧なマスクは見たことがないわ。信じられない。」
「皆さんを騙したようで申し訳ありませんが、この女性のことは、皆さんにはわからないように、申請受付センターにお願いしていました。
そこで、先程のマリスガスですが、この女性は、このマスクを装着して、まんまと申請受付を騙せたと思っていて、その悪意があることで、皆さんは、顔が黒く見えたのです。」
「しかし、この女性は、その精巧なマスクを装着しているんでしょう。それなら、顔が黒く見えるのはおかしくないですか。マスクを通して顔が見えるはずはないのかと。」
「そうですね。一見、顔そのものが黒く見えるのですが、実は、顔のすぐ手前に黒い影のような状態で見えているのです。そして、その黒色の濃さがその悪意の程度を示しています。たとえば、この女性は、かなり影は黒くなっています。ですから、その女性の見た目が優しいからといって、その見かけに騙されてはいけない。
実は、この女性は、これまでも幾度となく、多くの女性を生体マスクを使って送り込んでいます。大きな組織のトップであることが、今回判明したようです。この情報も、申し訳ありませんが、このプレゼンのために皆さんには、かくしていました。この影からみれば、かなり悪意があるわけで、どんなに装っても、この影の濃さが悪意の程度を物語っています。
それに、このように、虚偽美貌の犯罪は、最近急激に増えているので、今回のように巧妙なマスクを暴く前に、このガスで、まずは、悪意があるか調べることで、早期の発見に繋がるのかと思います。あとは、何か事件が起こって、今現在、大勢の中に犯人がいる場合など、犯人探しに最適な方法かと思います。」
すると、審査官たちは、頷きながら、
「それは素晴らしい。今後の様々な状況下で対応できそうね。」
「そうですね。犯人の取り調べにも使えそうだわ。」
美麗隊本部長のレイラ・ナターシャ・シュミットは、
「とにかく、ミレニスの新規ガスの評価は、採点するなら、かなり高いレベルで合格点よ。この調子で、開発を続けてほしいわ。おめでとう。」
「ありがとうございます。」




