5-18 プリンセスの娘、誘拐の謎18
麗奈は、これ以上は、やりようがなかった。しかし、後戻りはできない。
こうなったら、目の前のことをやり続けるしかない。しかし、読み取りは、終わったので、これ以上は、進まない。でも、自分から読み取りをしてはいけないって、言ってたわね。感覚のセンサーは、開いたままだけど、開いたままにするって言ってたわね。
いったい、ここからどうしたらいいの?
待って。読み取りが終わったけど、本当に終わったのかしら。顔を治すための読み取りなんて、こんなに早く終わるわけないわ。前回の回復の術と同じくらいの読み取り方だったわ。
あら、感覚のセンサーは、開いているだけじゃなくて、センサーは起動したままだわ。何かをやっているんだわ。
麗奈は、注意深く、感覚のセンサーの動きを感じ始めた。すると、これまで以上の細かい動きになっていた。つまり、回復の術での読み取りが終わって、さらに深い読み取りのためにセンサーが動いていたのであった。
これは、回復の術よりも、さらに深いDNAの必要なデータを読み取り始めたのである。その繊細なデータの読み取りがセンサーから自然に始まったのを確認した麗奈は、自分からもさらに読み取りを開始した。
すると、繊細な深いデータにもかかわらず、その読み取りスピードがアップし始めて、マリアの元の顔を完全復元するための構築の準備が、同時に開始された。そして、そのデータに基づいて、やけどによって、壊れてしまった顔の細胞を新しい細胞との入れ替えが開始された。徐々に、そのスピードはアップしているが、その細胞の繊細さは驚異的なので、超高速にもかかわらず、その所要時間は、回復の術とは、比べようもなく、長くかかるだろう。そこで、トラブルが起こらないように、状態を安定させ、終了することも、復活の術の上での必要なことであった。
その読み取りと、新しい顔の構築が、続いてほぼ同時に行われている。ただ、とてもクラッシュが起こりやすい状況なので、その読み取りの速度を、クラッシュしやすい状況なら、読み取りを遅くしたり、早くなれば、途切れないようにスピードアップするという調整をするのは、ものすごく困難なことなのであった。
だが、顔の構築も、全体の70%をすぎて、少しずつ安定してきた。
そして、読み取りが、ほぼ100%に近くなり、構築が90%を超えてきた。もはや、安心していいと思えるレベルまで来ていたのだが、実は、ここに来て最大の難関を迎えていた。
それは、最後の最後に、構築の仕上げの99%から100%にかけてのところであった。この100%への仕上げに移る瞬間だが、ここまでの速度で100%に移ると、その最後のところで、その丁寧さが欠けると、そこから悪夢が訪れる。ここの終わりの瞬間こそ、その速度を落として、丁寧に終えて仕上げる、というのが何よりも大事なのであった。
読み取りの場合は、顔にもDNAにも何の影響も与えないのだが、構築で、顔の細胞の作り上げを行なう際には、この100%への瞬間を丁寧さを怠ると、この最後の瞬間で、これまで行なってきた顔全体の構築が崩れ始めて、全く元の状態に戻ってしまうという落とし穴が待っているのである。
実は、この段階での的確な判断や、その対応ができるか否かこそが、伝説の「主命」となれるかどうかに1番要求されることであった。そして、それを成し遂げた時にこそ、本当の意味で、その能力も得られるのであった。




