5-12 プリンセスの娘、誘拐の謎12
すると、実務は、椅子を3脚選び出し、2脚を相対して向かい合うように並べ、その1つを、その横に並べた。そして、横に並べた椅子には、マリアと麗奈が座り、麗奈の前の椅子には、実務が座った。
「さあて、麗奈、いいこと。一世一代の移面術の始まりよ。」
それを聞いて、麗奈は、焦りながら、
「じ、実務さん、そんなこと!無理よ!マリアの顔を治すなんて、そんなこと!いくら、移面術でもできないわ!」
ところが、あくまでも、強気の実務は、引き下がらない。さらに、語気を強めていく。
「麗奈、あなた、以前、オービスの顔移しをした時、最後に、目の前に写真とか具体的な顔のイメージがない自分の顔に戻したでしたでしょう。覚えているわよね。」
「ああ、だって、あれは、自分の中の、元々、生まれてから持っているDNAからデータを読み取ることができたからよ。実務さんが、教えてくれたでしょ。」
「よく覚えているじゃない。それと同じことを、いいえ、もう少し、上のレベルのことを、今、ここでやるだけのことよ。」
それを聞いて、麗奈は、少し興奮しながら、
「だって、あれは、顔移しの回復の術をやったのよ。私の顔に戻すことだもの。でも、今回、マリアの顔は、こんなに傷んでしまって、この状態ではやりようがないわよ。顔を作るようなものよ。」
だが、実務は、さらに語気を強めて、麗奈に攻めていく。
「麗奈、あなた、私が何も知らないとでも思っているの?」
驚く麗奈!
「麗奈!その、しまった、という顔は何?実は、可能性がある、ということでしょ。」
はるか昔から、くノ一のような活動をしながら、多くの事件を解決してきた、琥珀の翼。その数ある術の中でも、特出してすばらしい移面術は、彼女たち独自の術であるが、そのまた遥か昔に、ただ1人の、伝説のメンバーが存在していた。後にも先にも、主命という、その特別な立場は、ただ1人。これまで代表といえる、主理を遥かに超える、主命を名乗れたのは、彼女だけであった。
実務は、今、ここで、麗奈に、その可能性があるとはいえ、これまでの移面術の、もっと先のことをやらせようとしている。こんな土壇場の、ぶっつけ本番で、しかも、やったことのない麗奈に、こんなに緊迫した状態で、マリアには、絶対に治してみせると言い切る実務は、誰からみてもあまりに無責任すぎて、皆は、驚きしかなかった。
実は、実務は、主命のことなど全く知らなかった。ただ、これまでの移面術をみてきたことから、過去にそこまでやっていたメンバーが、必ずいたに違いないと、自信を持って言っているだけなのであった。
皆が、呆然としている中、
「何をぐずぐずしているの、麗奈!始めるわよ!」
だが、あくまでも、どう考えても、自分にはできないことを主張して、1人で勝手に、簡単にできるように指示をする実務に、麗奈は、かつてないほど反発をした。
「いいかげんにして、実務さん!やったこともないことを、それも、簡単にできるようなことを言って、プリンセスたちにまで、ぬか喜びをさせて、何が楽しいの!これまでは、色々とアドバイスをもらってきたけど、今日だけは、言わせてもらうわよ、そんな勝手なことを言って!」
だが、あとへは引かない実務。逆に、さらに強くでていく、
「麗奈、あなた、何を言ってるの!今日のことは、ただ個人的な問題じゃないのよ。イミリア共和国の行く末がかかっている大切な大問題なのよ。マリアは、このままだと、おそらく、次期プリンセスにはなれないわ。そうなると、王室が血族の流れが途切れてしまい、そうなると、イミリア共和国の国民は、血族以外は、王室を認めないから、このまま行くと、イミリア共和国は危機を迎えることになる。国が破滅の道を突き進むことは間違いないのよ。そうなったら、すべてあなたのせいなのよ。あなたが、今、マリアの顔を治さないと、すべてが終わってしまうの。1つの大きな岐路に立たされているのよ。それを、麗奈、あなたがやれるかどうかということなのよ。」




