2-19 その名は、アイフ19
そして、2ヶ月後、ミレーナとセリナは、美警察の機関内にある、美の極みの称号の申請機関であるオーロラエージェントを訪れた。
以前の際にも、申請手続きをしてくれた申請管理責任者のカタリナ・アリス・ガブリエル は、再びやってきたミレーナをみて、驚きを隠せなかった。
「あなたは、ミレーナ・クロスハートですね。たしか、あなたは、事故で顔を大火傷して、美の極みの称号は、無効になったはずですね。」
「そうです。しかし、今回、外科手術を受けて完全に治ったので、再申請に参りました。」
「よろしいでしょうか。今まで、かなりの美貌の方であっても、顔に数ミリの傷でもあれば、申請は通りません。年間に、高額の美認金が支払われるのですから、それだけ審査は厳しいのです。ましてや、大火傷を負って、回復したといっても、たとえば、百歩譲って、前回と全く同じになったとしましょう。それでは、審査は通らないのです。
前回と比べて、多少でも前回を上回らなければ、申請は通らないのです。つまり、同じ方が、一度やめて、もう一度申請しようとすると、2度と通らないようになっているのです。これは、一度やめた人を、なるべく2度と受け入れないための仕組みなのです。今回も、同様かとは思いますが、とりあえず、審査はいたします。しかし、手術の痕など残り、あるいは、こちらに登録の前回の写真や、詳細なデータよりも美しさが上回っていなければ、アウトになることはご承知下さい。それでは、こちらへどうぞ。」
審査のための様々な機器が揃っている。
「まず、こちらにお座り下さい。これは、ビューティーセンサーといいまして、これに、前回の画像とデータが登録してあり、今から、本日のお顔をスキャンさせて頂きます。同時に、皮膚の真皮まで調べさせて頂きます。そして、結果は、各項目について、順番に表示いたします。その数値は、100%にて前回と同じ。すべてにおいて、100%であれば、前回と同様で、申請はアウトになります。1つでも101%以上があれば、再申請を受理いたします。」
すると、その項目が、1つずつ結果が表示されていく。
まず、輪郭、100%、続いて、顔の対称比率、100%、眉、100%、目、100%、鼻、100%、口、100%、頬、100%、そして、なんと!肌、108%!!!?真皮107%
「ええっ!肌が、どうして、108%?ちょっと、待って!」
すると、前回の画像と、現在のミレーナのカメラ越しの画像をどちらも左右に並べて拡大してみる。
しかし、明らかに、前回よりも、肌の綺麗さや、真皮の繊細さはアップしている。そして、さらに、皮膚細胞のレベルまで確認したのだが、その細胞組織は、さらに綺麗になっているというか、エリーゼが培養した細胞は、ミレーナのさらに若い時の細胞に似ていて、顔全体の細胞は、もはや培養細胞レベルに処理されていたのである。
申請管理責任者は、もはやあまりのことに、驚きを隠せない。
「これまで、様々な申請者に対応してきましたが、再申請で、これほどレベルが上がった人は、見たことがないわ。本当に、手術をしたのかも疑ってしまいますが、あなたが大火傷をしたのは、美警察を通じて、確かな情報は入っていますから、その手術のせいなのは、それ以外には考えられないですね。ちなみに、手術は、どちらでされましたか。不都合がなければ、お教え頂きたいです。」
「ロイヤリング大学病院で、執刀医は、エリーゼ・ノクターン医師です。」
それを聞いた申請管理責任者は、驚きと共に、深く頷きながら、
「そうでしたか。それなら、納得しかないです。あの天才外科医の先生から、執刀して頂けたなんて、そちらの方が、奇跡に近いですよ。手術費用についてはお聞きしないことにしておきますが、さぞかしかかったことでしょうね。でも、美認金が再び受け取れるようになれば、1年で取り戻せますから、安いとは思いますね。とにかく、あの先生に執刀して頂けたのは、本当にラッキーでしたね。再申請を受理いたします。それでは、次回、2か月後から、再び美認金が毎年、振り込まれます。」
そして、帰りながら、セリナは、母から、再申請が終わったことを告げると、
「よかったわ。これでまた、毎年2,000万ミラが入るのね。これで、また私も、その中から700万ミラもらえてよかったわ。」
すると、ハッと気がついたように、
「そうそう、そういえば、今度から、私以外の人から、このお金は使えないように、手続きをしてきたから、どんなことをしても、どこに入れても、私が知らなくても、たとえ家族でも使えないから、よろしくね。」
「なんですって!そんなこと、ひどいじゃない、お母さん!」
「ひどいのは、あなたたち姉妹よ。あなたのせいで、ノクターン先生は、あんな顔になったのよ。それなのに、先生は、あなたたちを許してくれたばかりか、私の顔まで無料で治してくれた。私が、もしも、今回の裁判官だったら、あなたたちを懲役にしてあげたかったわよ。反省しなさい。」




