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2-16 その名は、アイフ16

 すると、ジェニーは、あとの5日間、TV局に泊まり込みで、当時撮影された映像を片っ端から見ていった。そして、3日目のこと、手術が始まる直前の映像を見ていたジェニーは、ふと、あることに気がついた。これは、何回も観たことのある映像だったが、エリーゼに向けて、怒って怒鳴っている女性の娘だが、その声にほとんどかき消されているが、やけどを負った女性の声が、あらためて、とても気になっていた。ただしゃべっているのではなくて、一生懸命に言っているようにも感じられる口調であった。だが、怒鳴っている声で、ほとんど聞こえない。


 すると、ジェニーは、それを、局内の映像編集部の担当者を訪ねた。


「あら、ジェニー、なんか用事かしら。」 


担当者の、エリス・フェアウェル。

「実は、この映像を見てほしいの。」

「ああ、これ、こないだの話題になった事故の映像ね。」

「そうなの。それで、ここのところ、見てほしいんだけど。」


やけどをした女性の家族が、怒って怒鳴っている。そこに、かすかな声がダブって、、、。


「ここのダブっている声、小さな声の方をどうしても聞きたいのよ。」

「これだと、全くわからないわね。」

「そうなの。それで、あなたなら、もしかして、この二重の2人の声、別々に分けることってできる?」

「ああ、それね。簡単よ。今、すぐにやってあげるわ、ちょっと待ってて。」


すると、映像データを自分のパソコンに移すと、あっという間に声を分離した。

「できたわ。この小さい方の声を聞きたいのよね。」


すると、多少荒れたような音声だったが、音声フィルターで雑音をとりながら、無事に聞き取れるように変換していった。すると、


「これでいいわ。再生してみるわね。」


すると、


「「「、、、いいのよ、いいから、先にあの人から、治してあげて、、、お願い、、、」」」


「こ、これは、あの、やけどした女性は、自分はあとでいいって、言ってるわ。」


すると、女性の声は、まだ続いていた。

「「「、、、えっ、、そんなこと、、、だめよ、言ってあげて、、う、うぐ、うぐ、、」」」


「ええ、これは、やけどの女性は、何か言われて、答えているのよね。今度は、家族が怒鳴っていたあと、何か言ってるかもしれない。今度は、それを聞かせて。」


すると、その声は、やはり、とても小さな声だったので、処理をして、聞き取れるようにすると、


「「「、、、だめよ、お母さんは、黙っててちょうだい、、、」」」


 なんと、やけどした女性は、自分よりも命の危ない方を助けてと言っていて、それを聞いていた家族は、黙っててくれと、言っていた。家族は、やけどをした本人が、自分よりも先に命を救うように言ったことを知っていて、それを隠していたのであった。


「それに、女性が最後には、う、うぐ、うぐ、って、いうのは、口を塞がれていたんだわ。これ以上、よけいなことを言わせないために。ということは、自分はあとでいいって言ってたのを、口封じしたことになるのよね。つまり、ノクターン先生は、女性の言う通りに処置をしたことになるのよ。」


すると、音声編集をした担当者の、エリス・フェアウェルも、

「これは、立派な証拠になるわ。」


 そして、ジェニーは、その映像と分離した音声データを持って、警察に行った。すると、これは、女性の美貌に関わる事件のことなので、美警察に行くように言われ、そのまま、美警察に連絡が入った。


そして、その時の担当者が、映像と音声を確認した。


「ジェニー、これは、やけどした女性から、医師に対して、命を救うことを優先するように言っていることに間違いないですね。つまり、エリーゼ・ノクターン被告は、無罪ということになります。いくら、美貌が、最優先でも優先すべく本人から、あとにして、と言われて、その通りにしたのなら、それは当たり前に認められることですよ。それから、エリーゼ・ノクターン被告が無罪なことに加えて、やけどした原告ミレーナ・クロスハートが、私の治療は後でいい、という発言を、聞いていながら、それを隠していた、家族であるセリナ・クロスハートは、証拠隠滅罪に当たります。とにかく、エリーゼ・ノクターン被告の判決が覆ることに間違いないですね。早速、この証拠を提出しましょう。」


すると、ジェニーは、喜び、泣きながら、

「ありがとうございます。宜しくお願い致します。」


 そして、判決は覆り、エリーゼ・ノクターン被告は、無罪となった。だが、それは、刑の執行日の執行時刻2時間前であり、刑の取りやめには、手続きが進んでいるが、執行される時間には間に合わなかった。刑は、予定通り、執行されることとなった。


 その日、刑の執行が行われる美警察本部の玄関前の広場では、ジェニーが涙をその目にためて、刑の執行時刻を待っていた。自分の努力が、


 刑の執行に間に合わなかった無念さと、エリーゼに対しての申し訳ない気持ちが、刑の執行される場所に、できるだけ近くで待機して、エリーゼの辛い気持ちに寄り添いたい一心で、ここに来たのであった。


 美警察本部内の処刑室では、午後1時の執行時間を前にして、処刑の準備が進められる中、本部長より、エリーゼが無罪となったことと、だが、残念ながら、刑の執行が中止には間に合わず、そのまま執行することになったことが、直接、本人に伝えられた。


 それを直接、本部長から聞いたエリーゼは、一筋の涙を浮かべたが、こう言った。

「仕方ないですね。そのことが判明したのが今から1時間前では、これまでのことを1人で決めてきたのではないですから、これは、どうしようもないことですね。しかし、今からの処刑は、私は、もう罪がないので、実質的には、罪に対するものではない、と自覚ができましたから、私は、爽やかな気持ちで、それをお受けいたしますよ。」


すると、本部長は、泣きながら、

「ありがとうございます。エリーゼの、その寛大な心遣いに感謝いたします。本当に、申し訳ありませんでした。」


 その言葉に、エリーゼは、本当によかった、と嬉し涙に変わっていた。このことには、誰も悪い人はいない。本当に、多くのちょっとした不都合が重なって起こったこと。そして、そのことで、2度とこのようなことが起こらないための教訓となってくれれば、とエリーゼは思い、本当に爽やかな気持ちで、処刑椅子に進んでいくのであった。


 そして、午後1時、定刻通り、刑は執行された。処刑室に連れられて、椅子にすわるエリーゼ。手足、身体を固定され、目隠しをされる。その目の前には、アームのついた装置が置いてあり、1人の係官がやってきて、そのアームの先に、ガス銃を取り付ける。係官が部屋から出ていくと、アームがゆっくりと水平に下がり、ガス銃の銃口がエリーゼの正面に降りてきた。処刑室の向かいにある執行管理室に5人の担当者が進んでいく。


 5人が横並びになると、1人1人目の前には、白いボタンがみえる。時間の3分前に、処刑執行委員より、声がかかる。5人のうちの誰かのボタンが、実際にガスを放出する本物で、あとの4人は、ダミーである。これは、実際に、刑を執行したのが誰だったのかがわからないようになっている。


「これより、エリーゼ・ノクターンの、留顔の刑を執行いたします。お時間まで、しばらくお待ちください。」


「それでは、3分前になりました。刑の執行役員の方々、白いボタンを押す体制に、右手を置いて下さい。5秒前より、カウント秒読みをいたします。ゼロの掛け声と共に、ボー、っという音が、この部屋と、本部外に鳴り響きます。同時に、白いボタンを押して下さい。それでは宜しくお願い致します。」


 すると、時間がすぎ、処刑執行委員より、カウント秒読みが始まった。5、4、3、2、1、、、ゼロ!


 ボー、っという音が本部の内外に大きく鳴り響く。そして、同時に、5人は、白いボタンを押した。その瞬間、ガス銃よりガスは放出された。すると、エリーゼの目からは一筋の涙が頬をつたった。


 その、ボー、っという音を聞いたジェニーは、感慨深い思いで、その音を聞いていた。刑の執行されたのがわかったからであった。


 そして、ここで、別室から、それを目撃していた刑の執行見届け人である2人の女性が、静かに処刑室に入っていく。すると、エリーゼの両側に立ち、2人同時に、ゆっくりと、その顔をのぞいて確認している。


「只今、エリーゼ・ノクターン、刑の執行終了を確認いたしました!」


すると、処刑執行委員より、


「以上で、無事に、エリーゼ・ノクターンの刑の執行の終了を報告いたします。」


 それから、1時間ほどして、中央玄関より、エリーゼは、でてきた。その顔には、マスクをしているが、それでもジェニーは、下を向いたまま、エリーゼの両手を握って、


「おかえりなさい、エリーゼ。本当に、お疲れ様でした。」


 すると、こみあげた涙をこらえながら、


「、、、エリーゼ、、ご、ごめんなさい、私。」


 すると、エリーゼは、微笑もうとするが、顔に力が入らないのに気づいて、その声に、できる限り、優しさを込めて、

「いいのよ、ジェニー。あなたは、本当によくやってくれたわ。だって、私、とうとう無罪になったのよ。一緒に、喜んでちょうだい。」 


 と、言いながら、エリーゼも込み上げる涙が止まらなくなり、2人は、抱きしめあったまま、しばらくは涙が止まらないのであった。


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