2-10 その名は、アイフ⑩
美警察本部の取り調べ室に。今回の通報者からの内容から、話し始めた。
「エリーゼ・ノクターン、あなたは、今から1ヶ月ほど前、MD23街通りで、大型バスと乗用車の事故に遭遇しましたね。そして、その際に、事故に遭った女性に、緊急の手当てをしましたね。まあ、1人の女性の方は、処置どころではなく、緊急手術をその現場で行ない、命を救ったということで間違いないですか。」
「間違いないです。」
「ところが、もう1人、怪我人の女性がいましたが、その女性の怪我の処置は、その手術の後から行なったという通報がありましたが、これも間違いないですか。」
「ええ、間違いないわ。手術した女性は、先に対応しないと命がなくなっていたかもしれなかったので。」
「その時に、まず、やけどをしていた女性の顔を見なかったのですか。」
「見ました。その時に、2人の女性の状態を、まず確認して、どちらが緊急かを判断して、手術を先にしました。」
「あなたは、そのやけどをしていた女性の顔をよく見なかったでしょう。」
「いいえ、よくやけどの具合を確認しました。たぶん、その女性の顔のやけどは、もう1人の女性と比べたら、そこまで緊急とは感じられなかったので、手術の方を優先しました。」
「実は、その、顔にやけどを負った女性は、美の極みの称号を持つ女性だったのです。あなたは、称号を持つかどうかがわからなかったとしても、その美顔が損傷していることは確実に理解したはずですね。」
「ええ、というか、その時見ただけでも、おそらくは、この女性は、その称号を持つだけのレベルの方だとは、理解しましたよ。だけど、命を優先しました。」
「そうですか。それでは、改めて、ここに申し上げておきますが、美法典の第328条第3章の項目ですが、あなたほどの学歴をお持ちなら、知らないとは言わせませんよ。わかりますよね。」
「もちろんです。私は、美法典は、ぜんぶ暗記しておりますわ。どんな場合においても、その命よりも、女性の美顔が尊く、何よりも最優先される。そして、それは、どんな例外もあてはまらない、ですよね。だけど、あのやけどの女性は、私が先に処置をしても、あとからにしても、回復に大きな違いはなかった。私は、そこまでの判断をして、緊急性の高い方から処置をしたのです。」
「エリーゼ、いいですか。この法律にうたっていることは、そういうことではないのです。その怪我や処置の必要性や、回復に影響することなど、何も関係はありません。とにかく、先に、女性の美についてのことを先に対応すること、どちらが尊いことであるかを、常に示さなければいけないのです。あなたは、あの女性の顔よりも、命の方が大切だと示した。それは、美貌軽視罪にあたります。」




