2-9 その名は、アイフ⑨
すると、一方では、顔に大やけどをおった女性の家族が、叫んでいる。
「あなた!何やってるの!こっちには、もっと大事な患者がいるのよ!顔が大やけどしているのよ!こっちの美人の顔から治療する方が先に決まっているでしょ!」
しかし、エリーゼは、そちらには取り合わない。
再び現場に戻ると、エリーゼは迅速に準備を整え、即席の手術台を作り上げた。周囲の人々は息を呑んで見守る中、彼女は、冷静に手術を始めた。鋭利な金属片を慎重に取り除き、出血を止めるために縫合を施した。その手術の手早さと、正確さは、周囲の人たちを驚かせた。
時間が経つにつれ、彼女の呼吸が安定し始めた。エリーゼは最後の縫合を終え、深く息をついた。
「これで大丈夫です。救急車が来るまで彼女をこのまま安静にしておいてください。」
その女性の処置が終わると、エリーゼは立ち上がり、やけどの女性の元に急いだ。
しかし、その家族は怒っている。
「あなたね、あの人の命と、私の家族の美人の顔と、いったいどちらが大事なのか、わかっているの!この国じゃ、命よりも、美人の顔が優先に決まっているでしょ。先に、手当したら、やけどの跡がこんなひどくならなかったわよ!あなた、訴えてやるから、覚悟しなさいよ!」
「ごめんなさい。でも、あの女性から処置をしなければ、手遅れになっていたわ。」
手早く、やけどの処置を終えると、
「これで、2人とも運ばれても大丈夫です。後は救急車にお任せします。」
やがて、救急車が到着し、救急隊員が女性2人を担架に載せる頃には、彼女の冷静かつ的確な対応のおかげで、2人の女性は安定した状態に戻っていた。救急隊員が、エリーゼに感謝の言葉を述べると、彼女はただ微笑んで、
「2人とも無事でよかったわ。」
と答えた。
しかし、やけどをした女性の家族は、エリーゼに言った。
「あなたねえ。この人を誰だと思っているの。このままでは、ただではおかないからね。覚悟しなさいよ。」
そう言い放つと、一緒に救急車に乗って行ってしまった。
そして、それから、1週間後、ロイヤリング大学病院に、数人の女性が、エリーゼを訪ねてきた。病院の受付で、
「すみません。外科医のエリーゼ・ノクターンは、いますか。」
すると、受付嬢は、驚いて、
「アポイントがない方は、お会いできません。それに、先生は、今、手術中なので、お伝えすることもできかねますので、また後日、ご連絡下さい。」
すると、手帳のようなものを出しながら、
「私たちは、美警察の者です。外科医のエリーゼ・ノクターンに逮捕状がでています。手術が終わるまで待たせてもらいます。」
受付嬢は、奥に戻り、このことを別の係の者に伝えに行った。
そして、手術が終わると、受付にでてきたエリーゼ。病院のロビーにいた美警察の女性たちに連れられて出ていった。




