2-6 その名は、アイフ⑥
ある日のこと。そのイベント会場は、多くのモデルを迎えて、華やかな照明と期待に満ちた観客のざわめきに包まれていた。その時、照明の調子が悪く、スタッフの女性が会場にある配電盤をあけて、調整をしていた。
「おかしいわ。なかなか、上手くいかない。」
すると、その女性は、その配電盤にうっかり触れてしまい、そのショックで、突然倒れて意識を失ってしまった。
すると、次の瞬間、ありえないタイミングで、その時は、偶然やってきた。
舞台裏の道路から、バスが舞台めがけて突っ込んできたのだ。会場の空気は一変した。
近くにいた人々が驚いて叫び声をあげ、騒然となる中、イベントは、すぐに中止となった。幸いにも、バスの乗客や運転手には、大したけが人はいなかったのだが、その事故の起こる数分前に、突然倒れた女性もいる。すると、そのモデルたちの中にいたアイフは、一瞬、立ちつくした。
こんなことって、ある?あの時と!あの時と!本当によくにている!外で、事故に遭遇するこの状況。だが、仕方ない。同じように、気持ちは、うごいた。
「誰か、救急車を呼んで!」
そう叫ぶと、すぐに、バスの乗客を目視で確認をした。
ここで、慌ててはいけないわ。いったい誰を、誰の処置を優先するのか、その時、アイフの脳裏には、トラウマのようになっている、その思いが駆け巡っていた。誰から、誰から、処置をしたらいいの!
すると、ハッとなり、ここは、違う!ここなら、大丈夫だわ!我に帰ったアイフは、1番状態の危ない倒れた女性の元に向かった。
もはや、倒れて意識のなくなった女性は、何の反応も示さない。アイフは、近くの控え室から持ってきた自分のバッグから救急キットを取り出し、女性の方に駆け寄った。
「仕方ないわ。救急車を待っていたら、手遅れになってしまう。」
倒れた女性の状態を確認し始めた。
アイフは、会場にいたコスメに素早く指示を出しながら、女性の脈を取り、瞳孔反応を確認した。彼女の動きは迅速かつ正確で、周囲の人々はそのプロフェッショナルな態度に息を呑んだ。コスメと実務がやってきた。
「大丈夫?あなた、わかるの?」
コスメが、アイフに心配そうに尋ねる。すると、
「彼女は、今、電気ショックで倒れたけれど、たぶん、動静脈奇形(AVM)による脳出血を起こしているわ。」
そう答えると、持ってきた器具で女性の頭部を少し持ち上げ、気道を確保しながら続けた。
「AVMは非常に珍しい病気で、脳内の異常な血管の集合体が破裂することで、突然の出血を引き起こすのよ。」
コスメと実務はその説明に驚きを感じたが、アイフの冷静さに少し安堵した。そして、アイフは手早く女性の首を支え、呼吸をチェックした後、胸骨圧迫を開始した。
周囲の人たちは、不安そうにしている。
「大丈夫ですよ、皆さん。私は、医者です。安心して下さい。」
彼女は周囲の人々に説明しながら、
「彼女が救急車で病院に着くまでの間、適切な応急処置を行う必要があるわ。」
アイフの指示に従い、近くにいた人たちがAED(自動体外式除細動器)を探しに走った。アイフは一瞬たりとも無駄にせず、心臓マッサージを続けた。やがてAEDが到着し、彼女はそれを使って女性の心拍を安定させるための処置を行った。




