2-3 その名は、アイフ③
その後、機内では、食事の時間があり、映画鑑賞の時間があり、その間に仮眠をとったり、また雑談をしたり、しかし、フランソワ高木には、もはや、パソコンでの仕事どころではなかった。彼女も、1人だったこともあって、気さくに色々と話し相手になってくれて、この長いフライトも楽しく過ごすことができた。
ここまでは、まさに、フランソワ高木にとって、彼女との面接のような時間であったが、最後には、彼女の虜になっていたのかもしれない。
しかし、あと1時間ほどで日本に到着してしまう。そこで、意を決したフランソワ高木は、彼女に言った。
「あなたとは、この機内ですごした時間は、とても楽しかった。そこで、少し私の仕事のことについて、お話しをさせて頂きたい。実は、私は、フランスにある、究極の美貌追求研究所UBPRIの、所長を務めております、フランソワ高木といいます。
女性の美人についてと、その美に関する研究をしていて、ファッション業界や、モデル業界とも、とても関わりが深いのです。そこで、あなたをぜひモデルとして、スカウトしたい。あなたは、これから、帰国してしまうので、実は、私は、ひと月、日本で仕事をしたのちにフランスに帰国して、入れ違いになってしまう。しかし、知り合いにモデル事務所を経営している女性がいるので、日本に着いたら、一緒に、その事務所に行ってほしいのです。どうでしょう、日本で、モデルをやってみませんか。」
「そうですね。モデルをやること自体は、かまいませんが、そのためには、いくつかお願いというか、是非聞いて頂きたいことがあるのですが、そのことをお話しさせて頂いてもよろしいでしょうか。」
彼女の名前は、黒沢美咲、22才であり、実は、今回、フランス留学を終えて、帰国するが、1年間の休息期間を経て、再び、ドイツにて留学の予定をしており、モデル活動は、1年間限定にしたいという。
「それから、私自身のことですが、高木さんも私のことを見て、おそらく感じられたことかとは思いますが、私って、とても無表情な見た目だし、笑顔がとても苦手というか、表情を変えることができないのです。顔つきも、クールといえば、よく聞こえますが、冷たい感じがして、いつも不機嫌なのかと思われることも多いのです。
もちろん、誤解ではありますが、そんな私でも、モデルという表舞台で、皆さんに心地よさを与えることができるのでしょうか。いざ、活動を始めて、ネットで批判とかされて、高木さんや、その日本の事務所にご迷惑にならないかと心配なのです。」
そういえば、自分も、最初の印象は、まさに言われた通りであった。不機嫌なのか、なんか嫌なことでもあったのかと、話しかけにくかったのが、正直な気持ちである。
「そんなことで、もしもネットで叩かれたら、ご迷惑になるといけないと思っているのです。」
それを聞いたフランソワ高木は、この女性は、この冷たい見た目とは裏腹に、なんて回りの人たちに対して、気遣いのできる、気持ちの暖かい、素敵な女性なのだろうと思った。そこで、むしろ、この女性をトップモデルに押し上げてみたい、と、逆に、フランソワ高木のやる気に火をつけた。
「わかりました。それでは、1年限定でもかまいません。それから、冷たい見た目などは気にしなくていいですよ。あなたの魅力は、その冷たい無表情とは真逆の吸い込まれそうな暖かくて魅力的な眼差しと、その暖かい心のあふれる雰囲気です。そのどんでん返しのような魅力が、絶対に多くの人たちを惹きつけると、私は思います。ネットのことなど、すべて、私が対処しますよ、どうか、任せて下さい。」
「こちらこそ、ありがとうございます。それでは、宜しくお願い致します。」




