表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/180

2-2 その名は、アイフ②

 2人の会話は続くが、相変わらず、彼女の表情は、全く変わらない。知らない人が、ただ彼女の顔だけを見ていたら、あまり機嫌がよくないのかと勘違いしてしまいそうだが、会話の感じは、そんな嫌な感じは、全くない。見た目で、相手に与える印象で、とても損をしているなと感じていた。


 そんな話しをしていて、改めて、彼女の顔を、よくみたフランソワ高木は、自分が専門家としての立場なのに、なんということだろうと、いまさら気づいたことがあった。


 それは、彼女は、実は、驚くほど美人だったのである。なんということだろう。女性の美を専門として、それを仕事としているというのに、この女性と初めて会ってから、もう30分以上接しているというのに、今頃になって、この美貌に気がつくなんて、多くのモデルを育ててきたモデルラボの社長さんに知られたら、きっと笑われてしまいそうだ、とフランソワは思った。


 たしかに、機内が少し暗めであったことと、その無表情であった固さに、ちょっとわかりにくかったなどと自身のプライドを取り返すような言い訳を自分にしながら、改めて、究極の美貌追求研究所UBPRIの所長に切り替わった目で、彼女に注目をしながら、会話を続けた。すると、そこからの判断と分析は、かつてない結果を生み出し始めていたのである。


 こんなに、表情のない、笑顔のないシャープな顔だというのに、とても言いようがなく引きつけられるものがあった。その時、彼女が、もしもその表情が、少しでも微笑みがあったなら、彼女のイメージは、その10倍以上は変わったことだろう。


 そう思ったフランソワ高木は、改めて、笑顔というのは、これほどに人のイメージを変えるものであり、人に対する影響も変えるものだと思った。そこで、改めて、表情の大切さを感じたのであった。


 しかし、考えてみれば、普通、トップモデルは、ランウェイを、そこまでいつも笑顔を振りまいて歩く人はあまりいない。それに、あまり、にこやかな表情ばかりされても、それは、それで不自然すぎるというものである。たしかに、グラビアなどや、その色々なシチュエーションに応じて、どうしても、強烈に笑顔がほしいこともあることはある。


 それらのことを考えた時に、改めて、この隣りの女性の無表情な顔には、全く味わったことのない魅力が自分の中に感じられてきた。まさに、凍りつくような無表情の冷たい顔。だが、そんなことを払拭してしまいそうな完璧に近い、その顔の一つ一つの顔のパーツの作りと、そのバランスは、本当に見事なのだ。


 その完璧な作りにともなった、本当に暖かさなど微塵も感じさせない表情が、なんだか悪魔的な美しさを感じさせる。まるで、氷のように冷たい凍りつくようであり、切れ味のいいナイフのような研ぎすまされた魅力が、フランソワの心を切りつける。その切れ味は、これまで経験したことのない切れ味の快感を感じさせた。


 これは、かつてないイメージのモデルの誕生なのかもしれない。

それからというもの、パソコンでの仕事など、ここでは続けている場合ではない。以前は、自分も色々なモデルをスカウトして、研究所の研究に従事させたり、もちろんモデルとしても、派遣したりしていたが、そのスカウトは、しばらくしていなかった。というより、なかなか所長自らがスカウトしたいと感じる逸材がいないこともたしかだった。


 しかし、この隣りの女性は、表情こそ無表情ではあるが、それを踏まえても、それを上回る冷たい魅力があったのである。この、冷たいという表現と、魅力という言葉で、相反しているようで、しかし、それがうまく共存しているのが、彼女の良さなのである。そして、しかし、彼女と、その後も様々な、たわいもない話しをしながら、なぜにこんなにも、引きつけられるのか。それはなぜなのかを分析している、もう1人の自分がいた。すると、やっと、それが少しずつ見えてきたのである。


 それは、彼女の吸い込まれそうな、そして、宝石のように耀く瞳であった。実に、その瞳にはみるものを虜にしてしまう眼差しを感じていたのである。これこそが、彼女にしか持ち得ない魅力だという結論が出ていた。彼女の瞳から、あふれ出るもの、それは、見ている私たちが吸い込まれそうになる魅力であり、その瞳からは、その冷たいマスクは無表情の顔の中で唯一の暖かさがあふれているのが、その魅力であり、まさに、彼女との会話する中で感じる、その心の暖かさ、それが唯一。


 顔全体の冷たさと、全くそれに反した瞳からの暖かさがギャップとなり、その両面が、逆の攻め方をしていて、なんともクセになる。フランソワ高木は、かつてない美人の魅力に酔いしれていた。もしかしたら、こんな、かつて味わったことのない、このような魅力を求めていたのかもしれない。


 一見すると、冷たくて、どうしようもない不安を与えられて、からの、いきなり、真逆の暖かな吸い込まれる、その眼差しは、顔の無表情からの逆を攻める、そのあふれる快感の裏切りであり、心地よい裏切りであり、もっと裏切ってほしい、とすら思えてくる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ