2-1 その名は、アイフ①
ある日、モデルラボのコスメ宛にメールがきた。それは、フランスの、究極の美貌追求研究所UBPRI所長、フランソワ高木からで、日本のある大学で、美人学について、特別講師として招かれて、1ヶ月間講義を行なうため、来日し滞在するという。
それで、コスメや事務所のモデルたちとも会いたいという。
その、1ヶ月後、フランスの空港から、日本行きの便に乗り込んだフランソワ高木。その機内では3人並んだ席の窓際であり、その隣りの真ん中の席には、日本人かと思われる若い女性がついた。そして、その隣りの通路側には、中年の日本人女性が座っていた。
いよいよ日本に向けて、その便は出発した。フランソワ高木は、機内では、ノートパソコンを開いて、大学での講義のために資料をまとめていた。すると、隣りで横を向いている女性。さきほど隣りの席になった女性が、どうやら窓の方を見ていた。それに気づいたフランソワ高木は、声をかけた。
「あっ、もしよろしければ、窓際と席を入れ替わりますか。」
「えっ、大丈夫ですよ。ありがとうございます。」
その女性は、こちらを向いて、そう答えたが、機内は、わりと暗めなので、すぐには見えにくいのだが、一見キツイようなシャープで無表情の、その顔で、そう答えた。そして、その全身は、長身で、さらにシャープな雰囲気を感じた。
その女性の顔は、一瞬怖い感じがした。別に微笑むでもなく、ピクリとも表情を変えずに答えた顔は、まさに表情が凍りついたような印象だった。
しかし、そこで、答えてきた彼女の声は、物静かでとても上品な感じがして、一気に、その表情から受ける無表情な印象とは、ちょっと変わっていった。
「もしよろしければ、日本までは、10時間以上もの長いフライトですから、私は、パソコンで仕事をしていて、席の場所なんて関係ないので、どうぞ窓際と変わりましょうか。」
「本当にありがとうございます。では、せっかくなので、お言葉に甘えさせて頂きますね。」
その言葉からは、実はとても感じのいい、そして、上品なお嬢さんなのだなと、フランソワ高木は、思った。その返事の感じの良さから、変な緊張の糸が切れたフランソワ高木は、思わず彼女に話しかけた。
「よかった。日本の方ですね。学生さんですか。」
「そうなんです。昨日までは、フランスに留学していまして、久しぶりに帰国するところなんです。」
「そうですか。私は、フランスに住んでいて、今回、仕事で日本に行くんです。」
「ええっ、すごいですね。フランスにお住まいだなんて、それに、拝見したところ、ものすごくオシャレな方なので、ファッション関係のお仕事なんですか。」
「そうですね。まあ、当たらずとも遠からずといった感じでしょうか。」
「ああっ、やっぱり。だって、男性モデルさんかと思いましたわ。」
「とんでもないです。ただ、仕事柄、ファッションモデルとか接する機会が多いので、彼女たちが、私に気を使わないように、身の回りに気は配っていますよ。」




