7-13 マリスガス・ミレニスの憂鬱13、、、エピソード7最終話
一方で、アニエスは、事前に考え出した、驚異的な方法を駆使して、無事、助かったのだが、それでは、いったい、どのようにして、アニエスは、飛び降り自滅から助かったのであろうか。
それには、まず、犯人の目からみて、事前に飛び降り自滅を回避させる用意があってはならない。それに、犯人が実行するギリギリまで、そのチャンスのタイミングを引きつけなければ、犯人を特定することは、とても困難であった。つまり、犯人が実行するタイミングか、実行したのちに、すぐに回避できる方法を考えなければならなかった。
そこで、アニエスは、あるビルを選び出した。そこは、ビルの正面が、その壁面が地面に対して、ほんの少し鈍角になっており、うまくいけば、ただ屋上から自由落下するのではなく、かなりの速度で落ちるには違いないが、壁面を滑り落ちるような落ち方を実現できる可能性がほんの少しでもある場所であった。
それは、そのビルの鈍角になっている正面の中央に、少し外壁から飛び出した、幅が5センチほどの金属製のポールが1本、展望台から、地上まで一直線に続いて通っていた。このポールこそが、アニエスがここを選んだ理由であった。
アニエスは、美麗隊本部に戻ると、開発チームを訪れていた。そして、火災現場での作業用特殊素材のグローブを確認していた。それは、火を手に当てても、火傷はおろか、手に熱さが伝わらないばかりでなく、火災の中で、たとえ高温になっていた金属を手づかみしようとも、グローブは溶けることもなく、その熱の熱さすら感じないという、それに極薄でできている特殊なグローブであった。しかも、薄くて手の色と同じそのグローブは、見た目には、装着していないように見える。
そして、当日、展望台では、アニエスは、そのグローブを装着すると、自滅屋の仕掛けるのを待っていた。
すると、刑事たちは、マリスガスによって、アニエスに対して、今回こそ悪意を抱いたことで黒い影のある顔を確認し、犯人を特定し、取り囲んだのだった。
アニエスは、それを聞き、まさかの、落ちる前に、犯人を特定出来たことに、ほっとした途端に、一瞬気を失った、次の瞬間には、幻覚を見せられ、飛び降りてしまった。
頭から落下し始めると、すぐに体勢を上下入れ替えるはずが、油断して体勢を崩されたので、それがすぐには、叶わない。予定より遅れて、頭を上にした体勢をとり、すぐに両手でポールをつかみ、徐々に落下速度を弱めていこうとするが、予定よりもかなり加速していて、つかむ力が強くなっていくが、そのスピードは、全く弱まらない。ただ、そのつかむ摩擦熱が高温になってきたが、事前に装着した特殊素材の手袋のおかげで、全く手には影響はなかった。だが、以前として、スピードは加速していく。このままでは、もはや、地面に激突して、消滅は免れない局面を迎えていた。
すると、次の瞬間、アニエスは、一気に、美の戦闘モードへと、切り替えた。その渾身のレベルアップは、一気に、2段階あげられ、アニエスの肉体が奇跡の10倍に強化され、そのつかむ両手の力で、金属製のポールを歪められるほどの握力が生まれ、速度が徐々に弱まっていき、ついに地面より、数十センチ残したところで、やっと停止し、着地した。
もはや、奇跡の変身であり、一気に、その力を出し切ったアニエスは、倒れ、しばらく立つことはできなかった。その変身により、全身が10倍に強化されるも、一瞬のうちに、その力をすべて、そのつかむ両手に込めたことで、使い切ってしまい、その変身は、あっという間に戻ってしまった。
もはや、消滅へ間一髪の、奇跡の展開であった。実は、今回のような犯人捜査などに、美麗隊・特殊部隊サージが、直接かかわることは珍しいのだが、この、最後の飛び降り自滅に直面した時、準備なしで、このように自らの力だけで、危機を脱するには、美麗隊・特殊部隊サージのメンバー以外には不可能だったからである。その飛び降り自滅のため、犯人の女性が現場で持っていたリモコンが、駆けつけた警官に確認されて、現行犯逮捕となった。
犯人の女性は、脳科学研究では有名なリコリス脳科学研究所の所長、リコリス・アレキサンドラであった。
しかし、彼女は、あくまでも自滅を希望する人たちの手助けをしただけ。その彼女たちの願いを叶えられるのは、自分だけであり、自滅を幸せの道と希望する人たちのために協力した行為だと、犯罪とは認めず、本人には決して悪気もないものであった。
だが、警察から捜査のために依頼してきたアニエスには、おとり捜査であることを憎んだことで、今回は、唯一マリスガスに反応したのだった。
現場の刑事たちは、やはり現場にきていたミレニスに声をかけた。
「ミレニス、よかったわ。これも、あなたのマリスガスのあかげで、犯人が特定できたわ。マリスガスがなければ、この事件の解決は、難しかったかもしれないし、アニエスは、本当に危なかったわ。」
しかし、ミレニスは、どんなに凶悪な事件を起こしていても、犯人が正しいと思い、自分は正義だと思われていては、その上では、このガスの効き目は、何の意味も持たないということを痛感し、ショックを隠せないのであった。




