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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

綺譚の編者

綺譚の編者-忘却の書籍館-

作者: 雲雀

※これは、おそらく「綺譚の編者」の外伝になりますが、本編はまだありません。

1話完結の、短い話です。多分。拙い文章ですが、読んでいただけると嬉しいです。

昔ーー私や人間…生きとし生けるものには想像もつかないような遙か昔。地球…いや世界すら存在せず、ただただ無だけが広がっていた頃のこと。ある日、“ソレ”が現れた。いつから居たのかも、どうして生まれたのかも、不明。境界は曖昧で、ただそこは無と“ソレ”が存在する空間になった。どれだけ経っただろうか、“ソレ”は暇だった。いや、暇という概念はなく、時間という概念も無かったはずであるが、とにかく暇だった。


あるとき“ソレ”は、ふと思いつきで自分以外の無の部分から、自分と同じ存在を創り出した。生まれたモノは“ソレ”にそっくりのように思えたが、そのモノは形、意思を持っていた。初めて“ソレ”と無以外を認識した“ソレ”は、モノに〝イニシャリィ〟と名付けた。そして、形を認識した“ソレ”は、自分に形をつけた。自分以外の意思を持つモノはとても興味深く、ずっと感じていた退屈が薄れたように感じた。


それからどれだけ経っただろうか。〝イニシャリィ〟を創ったときのように、“ソレ”は思いつきで、〝光〟と〝闇〟を生み出した。生み出した〝光〟と〝闇〟は何故か〝イニシャリィ〟や“ソレ”と似たような形を持っていた。


またしばらくは〝光〟や〝闇〟、〝イニシャリィ〟と過ごしていた。しかしソレの退屈は真の意味で無くなっては居なかったようで、ふいに自分たちとそっくりな〝風〟〝火〟〝土〟〝水〟を創り、無と自分たち。闇と光しかない空間に天と地を創り出した。天を“ソレ”の純粋な力で覆い、地を水と土で満たし、風で覆い、火を散らした。そして何を思ったのか天にイニシャリィ達の住まいを造り、地には、自分たちの劣化版ともとれる何百万もの生命の種を生み落とした。


それが終わると、今まで確かにそこに居たはずの“ソレ”は、いつの間にか居なくなっていた。自分たちを創り出した親とも呼べる存在が居なくなり、イニシャリィ達は嘆き悲しんだ。地では“ソレ”が生み落とした生命の種が芽吹いていたが、一切気にすることなく、イニシャリィ達は嘆き続けた。イニシャリィ達が落とした涙が雨となり、100年ほど地を濡らし続けた。嘆きの雨で地に芽生えた生命が流され、地に存在する生命が消え失せようとしていた。その時生命の危機に気づいたイニシャリィ達は、“ソレ”が生み出した生命を育み、世界を陰から導いていった。そうすれば、いつか“ソレ”が帰って来てくれると信じて。


“ソレ”が居なくなってから、何億年もの時が流れた。生命は何度も滅び、また新たな生命が生まれてを繰り返していた。1度自分たちの手を離れたこの世界の管理は、天災すらも片手間で操作出来るイニシャリィ達にとっては一瞬で終わることで、いつも暇で仕方が無かった。今ならかつての“ソレ”の気持ちが分かる。と思ったこともあった。あまりにも暇で、“ソレ”と過ごした日々や、居なくなってからの歳月を久しぶりに思い返していた。「ああ、いつかの何処かで自分たちを世界の支配者だと信じていた〈人間〉という種族が生まれ、自分たちの行動によって種を滅ぼしていたか…」そんな他愛もないことを考えていたとき、イニシャリィはふと生命には辿り着くことが出来ないような果てに、1つの大きな無機物があるのを見つけた。


それはまるで大きな宝箱のように見えた。見た目はあまり派手では無いが、シックで落ちついた風合いでふんわりと“ソレ”の力で覆われ、守られており、“ソレ”を失ったときとはまた違う涙がこぼれてきた。イニシャリィがそれの中を見ると、まるでかつての人間達が生み出した〈図書館〉のようであった。ただイニシャリィの力を以てしても、中の構造を知るまでしか叶わず、中の景色を見ることは叶わなかった。


それでもと見続けていると、根負けしたかのように、ある2人の様子が見えるようになった。片方はイニシャリィと似たような姿形をしていて、苦労性のような雰囲気がありながらも、知的であるように見えた。しかしもう1人を見た瞬間、イニシャリィはその場に崩れ落ちた。その人はあまりにもかつての“ソレ”に酷似していたのだ。その人の纏う力に懐かしさを感じたイニシャリィは、かつてのあの時よりも増え、今や数え切れないほどの数となった天に住まうモノたちにどんなことがあろうとも、果てにあるソレを守ることを徹底するよう周知した。


かつて繁栄した〈人間〉が滅び、あらゆる生命が平等に育まれ、滅びるこの世界の忘れられた片隅には、あらゆる神と呼ばれるモノたちが訪れる1つの図書館ー書籍館があった。そこでは今も、1つの生命と1つの存在が幸せに過ごしているという。

ーこれは、この図書館が出来る前の、とても昔の物語。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。高評価、ブックマークしていただけると、作者のモチベーションに繋がるので、宜しければお願いします。

他にも、シリーズものも書いているので、良ければそれも見て頂けると嬉しいです。(そっちが詰まってこれを書いてたりします…)

「救済と守護を誓う…」

↑多分作者のページから見ることが出来ますので、気になる方がいればぜひ!

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