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4話 スライム・ジェノサイダー

スライム緑地と呼ばれるのどかな公園を、探索者スタイルでうろつくオッサン… 外界なら間違いなく、プロの不審者である。通報間違いなしである。


まぁ、外の世界もだいぶ前から変わった。

ポケットから刃物が出てきても探索者証見せたら、イヤな顔しながらもお構い無しになる。探索者が本気で暴れ出したら、普通の警官では対処ができないためだ。

まぁ、いざ暴れたら迷宮対策班、通称「お宮さん」の出番だ。ダンジョンで特殊訓練をした警官の集団に、オーバーキル気味に制圧される。

ちなみに、自衛隊にも同じような部隊がある、対D特殊部隊、通称「D特でーとく」警察よりはマトモな通称だ。


元探索者の犯罪者の扱いは、色々な噂が飛び交っている。

スキルの限界を見極めるモルモットにされるとか、ダンジョンの危険度を測る斥候にされるとか。

まぁ、マトモな噂は聞かない。ホントのところはわからないが…


 ともあれ、今日はスライムハンターをやろうと思っている。

目的は、スライムのドロップ「スライム樹脂」狙いだ。

このスライム樹脂、実に汎用性が高い。スライムの属性によって様々な物性を示す。基本的には、2つ以上のスライム樹脂を混ぜることで15分程で硬化する。親切なことに100g入り容器にてドロップする。一体誰が作っているのやら…

不思議なことに(水属性)×(水属性)という組み合わせでも硬化する。その場合、樹脂自体が高い耐水性と防火性能を持つようになる。もちろん繊維状に成形することで、強力な耐火服や防水シートが作れたりする。マジで万能過ぎる。

 さて、スライムさんの狩り方であるけれども、コレがとても野蛮。

草を焼くバーナー、ありますよね?世紀末的な世界で汚物を消毒してしまうヤツ、アレだ。

アレでスライムさんを、焼き殺す!!

 地水火風闇光どんな属性のスライムさんも、例外なくよく燃える。

特に敵対的でもない、スライムさんを焼殺するという外道行為!まさに虐殺!

特に、スライム緑地でのスライム被害は例がない。全国でも、それなりのスライム樹脂の産地である。

そしてこのスライム樹脂を利用して、防具や武器を作れないかと思い、ここでの狩りに踏み切ったのだ。

なにせプラスチックでできることはほとんど、何でもできるのだ。ワクワクしかない。


 人気のない平日のスライム緑地を彷徨う。程なく第一スライムさん発見。水属性のアクアスライムだ。ふるふるしておる。威嚇もしてはこない…が! 油断なく除草バーナーを構え、ファイヤ!

 アレだ、バーベキューのときに使う着火剤のように、全体に火が着くため逃げ場をなくし、その場で小さくなってやがて光に変わるスライムさん。小さな魔石とスライム樹脂(水)がドロップ。ゴブリンとの対応が大違いだが、スライムさんに合掌、感謝してドロップを頂く。


だってゴブリン、タチの悪い酔っ払いの小学生男子が、悪意剥き出しで、武器を振り回すような感じ、とても仲良くできそうにないんだ…アレは無理だ。


 さらに、スライムさんを探してさすらう、スライムハンターな俺。

見つけ次第バーナーで、焼殺。サーチ&バーニング。

もはやスライム緑地はスライム焦土であった…

4属性地水火風、プラス闇光2属性のスライム樹脂、各1kg 計、6kgを得た。実験材料としては十分だろう。

 あとはコレを、イベント会社にいた頃に知り合った造形工房でアレコレさせてもらおうかと考えている。

ともあれ、たくさんのスライムさんに、惜しみない感謝と追悼を…

まぁ、人の視線が切れたら、ダンジョン内部にポコポコ、リスポーンしてくるので、そんなに罪悪感はない。ダンジョンのモンスターに情は無用…である。


ちなみにスライム樹脂のドロップ率は、約50%。

今回焼殺したスライムさんの数は120体前後ということになる…既にハンターと言うレベルではない。

125個のスライムさん達の魔石を買い取りにジャラジャラと出す

「い、いつもありがとうございます〜…!」

アレ?おねーさんが若干引いてる?

 「あ、はい、今日もよろしくお願いします!」

魔石を計数機にジャラジャラ流し込み、暫し待つ…

地味にこの魔石計数機も、以前からのテクノロジーと、魔法技術のハイブリッドマシンである。

 見た目は、完全にパチンコ屋の出玉カウンターだが!!

技術は常に日進月歩なのだなと思う。

「各種スライムの魔石、ゴブリンの魔石、小サイズ、合計125個×100円。オークの魔石、中サイズ、8×800円で合計、18,900円ですね~!スライム樹脂とオーク肉は買い取りには?」

「あ、そちらお土産用と樹脂は色々と使い道がありそうなんで本日は持ち帰りで!」

「あー、そうなんですね~そちらも買い取りしますので今後よろしくお願いします〜」

「はーい、またよろしくお願いします!」

今日も、命の危険を感じることなく、家に帰れそうだ。

ダンジョンに感謝!


◆◆◆ アキヲを見送った買い取りの職員が、ため息混じりにつぶやく…

「… 今日はスライム緑地メインで、樹脂買い取り無しで18,900円…どんな戦い方をしたらそうなるねん?日に130体以上って…普通多くて30〜50体やんね?」

 彼女は知らなかったのだ。アキヲがついこの間まで、毎日のように日が変わるぐらいまで、サービス残業をしていたクソブラック社畜だったことを…


出勤時間退勤時間自由のダンジョンなど、微塵の痛痒も感じないメンタルなのだ。

たとえソレが戦闘であっても、パターンを見きったゲームのようなものだ…平気な顔で100体ぐらいのモンスターを斬殺するぐらいは可能だった…

 普通にヤバイ奴である。

生き物相手に刃物を振るうのにまるで躊躇がない。

ゲーム感覚で流れ作業レベルまで昇華してしまう。

才能というには、あまりに現代日本に必要ない素養だった。

敵と味方を瞬時に把握して、敵を攻撃するという行為は本来的にはとても重要な能力である。

ただ、普段が平和すぎてあまりに敵味方をハッキリさせるとトラブルだらけになる。故に、現代人は敵をハッキリさせないように立ち回っているのだ。

そういう意味で言うと、アキヲは完全に社会不適合者だった…

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