3話 ダンジョンもぐってる場合じゃねえ!!!!
フィクションですが、日常回です
ダンジョンにもぐり始めて、三週間ほどした頃のこと。
ダンジョンより戻ると嫁様から、陣痛の間隔が、短くなったとメールが届いていた。2時間前のメールだった。
イカン!!大急ぎで帰るぞ!!!!
帰宅するなり、寝ている嫁様に駆け寄る。
「大丈夫か!?」
「…」
ウソだ… 待ってくれ… そんな… 俺が… いない間に…
「…フスー…ンゴ!」
寝てるだけかい!?
健やかな寝息をたてて寝ていた。
かわいい。
とりあえず、タクシー呼ぶか…
嫁様をトントンして起こして、タクシーに乗る。
行き先を指示して急いでもらう。
嫁様いわく
「30分間隔ぐらいやから焦らんでエエで〜?」
って言われたけど、何しろ初めてのことだ、何があるかわからんからな!
産科につくなり
「今日中に産めますか?」と、医師に聴く嫁様。まぁ七夕やし覚えやすいわな、今日中やと…
「あ、ムリですね」即答する医師、クール!
だらだらしながら 病院で その時を待つ…
長え!!待ちが長えよ!!!!テレビ観て笑いながらたまに来る陣痛に腰を、さすさす、するだけのマシーンになりましたよ!
そして…待ちかねたタイミング!
うん、オッサン、何もできないのね。
ホントにな~んにもできない。
と、いうかやることがない。専門家と嫁様以外必要なくて… あとアレか、ホンギャーって言う声聞いて、おめでとうございます!元気な赤ちゃんですよ!!!!って言われる流れか!?
その瞬間を待った、何度も脳内でリハーサルしながら待った。
唐突に、その時は来た。
産まれた! 産声は?
「ふえ…」
ふえ…?
オギャー!!とかじゃなくて?産声ってこういうものなのか…と
「7/8 5:32 おめでとうございます」
事務的に、主治医から伝えられた、お?マジか?こんな感じなん?
産まれたばかりの息子は、テメエの手のひらをベロベロ舐めたりしながら、顔面をもちゃもちゃしていた。
何やら楽しそうで、良かった…
何より、無事そうだ…
あ、そういや嫁様!?大丈夫か!!
すでに、病室へ移されて全身疲労の真っ最中の嫁様のもとへ向かう。
「無事産まれて、顔面もちゃもちゃしてるぞ!」
って、伝えたら
「もちゃもちゃ、かぁ… すぐ会えるんよね?」
周りを見た!看護師さんに、優しい顔でうなづかれた。
「すぐに、お連れしますね〜」って、小さい透明のワゴンみたいなのに乗せられて 息子到着。
相変わらず手を、エベエベもちゃもちゃさせている。
「産まれて来てくれてありがとうな…無事に会えて嬉しいわ…お外の世界へようこそ」
アカン、ウチの嫁様が女神すぎる!神々しい!天使の梯子が視える!俺だけに!
「全身筋肉痛なった〜!」
女神も筋肉痛には勝てぬらしい。ゆっくり休んでいただきたい クエストは始まったばかりなのだから。
しばらくしたら、通常業務に戻るか 緊急時には休み取りやすい仕事だし…
実質毎日夏休みみたいなもんだ、宿題は毎日更新されるけどな!
嫁様と息子はしばらく病院に居るらしいので 俺の手が空く カネを稼ぐために父ちゃん、安全第一で頑張ります!
息子の誕生と共に、怪人としてスキルを得た俺に、新たな脅威が用意されているとはこの時、思いもしなかったが…
"ソレ" を俺が知るのは、今しばらく先になる…
初心者向けの久宝寺ダンジョンの、一層はゴブリン。
ヒト型だけど、キモいしコワいし大したドロップがないので、当座放置。
二層目はオーク。
そこそこ強いが、ホブゴブリンの剣の敵ではない。
ドロップは、魔石とたまに肉。怪人に変身して大量殺戮すると、すごく強いオークが出そうなので、まだ試してない。
何故か肉は、肉屋の包みに入ってドロップされる。
具体的には緑の模様の入った紙のヤツに包まれて…
食え…と、言うことだろうか?
だって、お肉屋さんの包み紙やねんもん。ちなみにこの包み紙、開封しない限りお肉が保存されると言う謎アイテム。一度開封すると、光に還って行く。不思議。
見た目は完全に、お高い豚肉… オークからドロップしたわけだからオーク肉 まぁ、豚肉だと思って食ってみたら、ビックリするぐらい美味かった。これはリピート確定だ。ロースもモモもバラもドロップする。だいたい100〜200グラム程度。
戦闘に関しては、ヒト型の時点で割と戦い方は解る。
初級忍術の恩恵は計り知れない。
ヒト型の可動領域とか、理想的な弱点とかがかなり具体的に感知できる。モンスターは大抵、防具なしなので、攻撃を捌ければ弱点は自ずと現れる。
相手の手首を叩き落とせば、クビが。
相手の振り下ろしを弾きあげれば、脇の下が。
剣を使って受け流して背後に回れば、背中からバッサリ行ける。
見た目はともかく、骨格がヒト型であれば応用は効く。
おそらく、獣タイプのモンスターに対峙するまではそんなに苦労しない気がする。
圧倒的に対処力のあるモンスターとかがいない限りは…
調べたところによると、そこまでアタマの回るモンスターは、F級では確認されていないらしい。
さて、本日から3層。いきなり屋外の風情…不思議だ。
外の緑地公園をそのまま移植したような、広い空間であるここのモンスターは、かの有名なスライムさんである。
通称、スライム緑地。広大に見えるが、大外の空間でループするような作りになっていて、広さ的には、外の久宝寺緑地と同じぐらいらしい。
不思議空間である。
外の時間とリンクしており、夜には暗くなる。
さて、スライムさんであるが、厄介で強いタイプではないが物理攻撃があまり効果的ではない。
液体と固体の中間で、可燃性。
燃やせば、秒で倒せる。
火を使うと延焼とかがありそうだが、ダンジョンのモンスター以外のモノは基本、こちらからの干渉を受けない。
スキルの「採掘」や「伐採」があれば採取も採掘もできる。
そういうスキルは、林業の人とか鉱山で働く人に生えるのだろう…俺自身のスキルを見るにつけ!
こういう傾向は、おそらく把握されてるとは思う。
が!それでちゃんと生活できてる人間は、そもそもダンジョンになんか入らないと思う。
グチは兎も角…スライムさん、一狩り行きますか!!
イイネやご評価いただけると幸いです 宜しくお願い致します!