1話 システムさんとステータスオープン(笑)
まぁ、誤字っつうか報告あったんでなおしといた、特にこだわりがあるところでもないし
報告ありがとうございますw
ゴブリンを斃すとアタマに直接声が聴こえた。
疑問に答えるでもなく、ソイツは語り始める。
「初めての討伐おめでとうございます!それでは最適化を始めますね!!」
元気な脳内の声とともにナニカはじまった。全身になんかゾワゾワする感触が走る。話には聴いてたけど、大丈夫かコレ?
「安心して下さい!」
安心できる要素が一つもない!
「意識の中の潜在スキルを検証…魔力への適応を開始…
成功しました!ステータスをご確認下さい!元気良く!!ステータスオープンっ!!!!って!!!!」
グイグイ来るなぁ…よし!覚悟キメた。
「ステータスオープン!!!!」
目の前に半透明のウインドウが開く。うわ、実際出るとビビるなコレ。あと、めっちゃ恥ずかしい。
#セヤマアキヲ 30歳
スキル:初級忍術
武器製作
防具製作
変身 (怪人態)#
クソシンプル過ぎて笑いそうになった、ナニコレ?
「ステータス獲得!おめでとうございます!!!!アナタのこれからのダンジョンライフを応援してます!じゃあまたどこかでお耳にかかるのを楽しみにしてまーす!!!!」
「あ…」説明とか無いんかい!
スキル…初級忍術、大学時代にチャンバラばっかりするサークルにいたので、初級ながら手に入ったのがこちら。
武器製作…確かに、小道具の刀とか作ってはいたけれど、ソレ?
防具製作…衣装で鎧みたいなモノはよく作ってたけどな?
で、
変身(怪人態)コレは…こないだまでいたイベント会社での仕事のせいなのか?よりによって怪人とか…
確かに!ヒーローショーなんかの仕事で、マイク片手に喋ったり立ち回りしたりしたけど!スキルに反映されるとか!
そんなことある?!
………うん、諦めよう。ありのままに生きていこう。
幸い、ダンジョンでそれなりに動けるようになれば、それなりの収入にはなるだろう。
それからしばらくは、ダンジョン内でスキルの検証だ。
まずは初級忍術から、ダンジョンの通路を少し外れた小部屋の中で自由に木刀を振ってみる。
おお?スゴい風切音が静かなダンジョンに響く。
なるほど、基本的な動作はチャンバラで培ったものをスキルが補完してくれる感じだな。
人間相手だと、すぐに大事故になりそうな予感。
袈裟斬り、逆袈裟、胴抜き、すべての動作にいい感じの補正がかかる。はぁ…大学でチャンバラやっといて良かった、芸は身を助けるってやつだな。
と、なると ひょっとして忍者屋敷前でやってた忍者ショーの技も一通りできるかもしれないな。
なんせメンバーが少ないときは俺一人で二丁鎌、鎖分銅、短刀、棒、と、どこのス◯ローンやねんみたいな状況でチャンバラやってたもんな。
また色んな武器持ってきて試そう。
さて…もう一つの怪しげなスキルも、検証しとくか…
変身… いやまあテレビの番組ではよく見かけるが、現実世界でマジでやることになるとは思わなかった。
しかも怪人…いや別に、悪いことしようってんじゃないからええねんけど、迷っても仕方がない…やるか!
「変身!」キーワードとともに発生する、謎のエフェクト。地面からファーって、キラキラしたヤツが出る。不思議な高揚感が全身に走る、うわ!コレすげぇ!
メッチャ気持ちいい!世界のすべてがクリアになるような感覚。
そして、変身が完了した。
出来上がったのは、全身黒タイツの怪しいヒト、だった。
ピッチピチである。
俺はツッコまずにはいられなかった…
「ガワはついてないんか〜い!!」
ピコン!
ヨコでウインドウが開く。(衣服を登録できます)
待って!そんな話聞いたこと無いけど?ガワと一体化する能力なん?コレ?
なんとなくそういう風に使えとスキル自体が言ってる気がする。
ヤベエなコレ、舞台衣装に魂宿るやつ?
しかも変身前提の時点で、たぶん俺等みたいな仕事してたやつにしか発現しないスキルだろう…
だってネットでこんなスキル見たことないし…
アカン…コレ以上ここでスキルに振り回されてると、ゴブリンとかに囲まれて死にそうな気がする…
脳が疲れてるので今日はもう上がって休もう。
階段はすぐそこだし。振り返って、地上への階段へと向かった。
家に帰ったら、嫁様にクソほど怒られた。
そりゃそうか…
お前死んだらどないするねん!って。
泣きながらブチ切れられた。ごめんなさいもうしません。
3日後…手に入りそうな道具をホームセンターで揃えて再びダンジョンへ。
変身用のボス衣装も登録してある。
長年使ってきたオリジナルの怪人衣装「不死身の昆虫忍者 死蟲」だ。変身できるとなるとテンションがアガる。三十超えても男子はコレでテンションがアガらないやつはいない。(個人的な感想です)
薄暗いが視界の悪くないダンジョンの不思議。まずは忍術から行ってみよう。腰に差していた二丁鎌を抜き両手に装備。前方に緑色の小さいオッサンことゴブリン発見。ソロだ、二丁鎌のサビにしてくれよう!
こちらに気付いたゴブリンがナイフを構える。踏み込んで鎌ではたき落とす。地面にナイフが落ちるとともに俺の鎌がゴブリンの足を薙ぐ。足首がもげた。脆いな、そのまま二本の鎌で首筋をクロスに切り裂くと、ゴブリンは光に還っていった。
まずは一つ、腰のポーチに魔石を回収して次のエモノを探す。
小一時間ほどゴブリンを狩り続けた。
安定した二丁鎌の戦闘スタイルが確立してきたようだ。
不意をつかれない限りは、手首を叩き落として、足元、首筋、の流れ作業で1対1なら大丈夫そうだ。
途中、2回ほど体がふわりと軽くなる感覚があった。
いわゆるレベルアップか。さらに狩りの効率がアガる。
さて、今日の仕上げに変身しての戦闘をやっておこうか。
「変身!」
不思議な高揚感とともに、怪人の姿に変わってゆく。
片角の左右非対称な鬼のような顔面。
同じく非対称なプロテクター。
赤と黒のカラダによく馴染んだ、俺様(死蟲)の姿だ!
ギャラリーはいないが、昂ったココロが咆哮をあげた!
「俺様の歌を聴けぇッ!!!!」
無音のダンジョンにこだまする怪人の咆哮!
そして、メインテーマ曲のイントロが鳴り始めた!