16話 サンドバッグに浮かんで消える
本日も宜しくお願いします!
読んでくれてありがとうございます!
お姉さん、またもややらかされる。
細かいジャブの連打で虎男をコーナーへと追いやる。
ワンツー!からのやや大ぶりな右フック!
虎男のこめかみを打ち抜くはずのパンチが空を切る。
沈んだ!?マジか!!??
半歩踏み込んで床に叩きつけた足はまるで、八極拳の震脚!!
ヤバいのが来る、間に合うかどうかじゃない、回避しないと死ぬ!!
虎男の強烈なアッパーを、すんでのところでスウェー!
少し掠った、それだけで視界が明滅する。
ホントに強い。
モンスターでありながらこれほどの技術を持つとは…
その技術に、敬意を払いつつ俺様のターンに入る。
振り上げきった拳とガラ空きになったボディ。
まずは、相手の正中線に拳を叩き込む。
左手でみぞおち。
右手で、心臓!
左のアッパーで下顎をぶち抜く!!!
虎男の足が宙に浮く。
ラストはこめかみに、抉りこむような右フック!!!!
虎男は床に崩れ落ちる。
「1! 2!」
虎男は、まだ立ち上がれない。
「3! 4! 5!」
虎男の耳が、ピクピク動く。
「6! 7!」
拳を床に押し付け立ち上がろうとするもスリップ。
「8! 9!」
さらにもがく。が、立ち上がれない。
「10!!!!」
激しくゴングが鳴らされる。虎男が脱力する。
「やった…」
そのまま、俺様は崩れ落ちるように床に倒れる。
………「ハッ!?!?」意識が戻った。コバンが介抱してくれたらしい。どこにもダメージは残っていない。
隣で寝ている虎男を見る。
まわりには虎男を心配したワーキャットが集まって、にゃーにゃー泣いている。
ズタボロになった姿は流石に見てられないので、コバンに頼む。
「コバン、回復してやってくれ。」
『わかった…また襲ってくるなら、溶かす。』
コバンは触手を伸ばして、虎男の口に突っ込む。
淡く虹色に輝く虎男。うわ、コレ、ナンカスゴイ絵面やな。
虎男が意識を取り戻した。
「よう、気分はどうだ?」
なるだけ穏やかに話しかける。
「ああ、生まれ変わったような爽快さだぜ。」
虎男が笑う。どう見てもケモノが牙を剥く顔だ。
笑うとは本来エモノを見つけたケモノが牙を剥くという行為だったと言う……。知らんけど。
「アンタ、やるじゃねえか。喧嘩に負けたのは親父以来だ。」
「まぁ俺には最強のセコンドがいたからな!」
俺の隣でコバンがふるふるする、ドヤ顔?である
「我とその配下48人衆、まとめてアンタに仕えるぜ」
マジか?!つか、数多いわ!!
「え?おれんちそんなにぎょーさん入れんけど?」
「何、普段はアンタの影の中さ。必要なときに呼びな。さぁ、我に名をつけてもらいたい」
あ~、また、報告でカイさんが頭抱えるやつだ……。
「牙王、ってのはどうだ?牙の王様。」
「気に入った!改めて牙王と48人衆、力の限りアンタにお仕えしよう!アンタのことはなんて呼べばいい?」
「…友達みたいなもんやろ?名前はアキヲだが、変身後は死蟲だ。好きに呼んでええぞ。」
「わかった。考えとくぜ。」
牙王はまた口角をあげて笑う。やっぱ顔、コワイ。
こうして、牙王とワーキャット48人衆が、仲魔になった。戦力が過剰過ぎる。
「あ、せや、牙王!ポータル使いたいんやが、場所わかるか?」
「ああ、案内するぜ、ついて来てくれ。」
牙王に、先導されてついた先は 大きな境内のある神社だった。それっぽい。
「拝殿の左手側に小さな鳥居があるだろ?アレがポータルだ。柱に触れればここまでの階層に移動できるようになる。」
仕様の説明を聞いても現実感がない。だって、ワープ装置だぜ?科学では絶対に不可能って証明されたやつがアッサリ眼の前にある。流石、ダンジョン…ファンタジーやで。
「ポータルは5層毎に設置されてる。これはどのダンジョンでも同じだ。」
「ああ、そのあたりは知ってるけど、やっぱ眼の前にあると思うとすげえなって思うわ。」
「そんなもんかい?」
「ああ、そんなもんよ」
鳥居の柱に触れると鳥居の内側に渦が現れる。コレが各層の入口につながるらしい。渦に入るとアタマにメッセージが飛んでくる。
『ご利用は何層ですか?』
一層だな、と考えたら身体に浮遊感がある。あのエレベーターが止まる時に感じるみたいなヤツ。
『一層です。ご利用ありがとうございました。』
さて、今日の戦利品を売却しに行こう。間違いなく自己最多記録だろう。カイさんのボーナスが上がるとエエな~。
買取所に入ると相変わらず暇そうだ…大丈夫なんだろうかこのダンジョン…。心配しても始まらん。
カイさんの姿があったので、声をかけておく。
「ただいま~。」
「おかえりなさい!ご無事で何より!上でお待ち下さいねー!」
うむ、極上の笑顔であった!
嫁様がいなければ落ちていた。とりあえず2階へ移動。
応接室で戦利品をコバンに種類ごとに出してもらう。
夜はミノタウロス焼肉パーティーの予定なので保存に回す。だって牙王や猫さんたちすげえ食いそうだし!
そうこうしてるうちに、カイさんがやってくる
「お待たせしましたー!って!!何この量!!??」
流石にやりすぎたか……。テーブルからはみ出しそうに…。いや一部床に出してるので、すでに乗り切っていない。
「報告と買い取りを頼みます…」
「………承ります………」
あ、カイさんが虫みたいな目になってる。
「まず、仲魔が増えました。」
「マジか?!」
「マジで。牙王、ご挨拶を。」
影からにゅるり…と姿を表す虎男…アレ?小さくねえ?
「……がおー!?」可愛いのが出た!!??身長60センチぐらいのディフォルメした虎のぬいぐるみみたいなヤツが!!
牙王の額に冷や汗が浮かぶ。アタマに牙王の声が届く。
『お館!ダンジョンの外の魔力だとこのサイズが限界みてえだ!』
困惑するカイさんに説明する。
「ダンジョンの外の魔力やと、この大きさが目いっぱいらしいわ。ホンマは身の丈2mぐらいの虎男なんよ……。」
「んぇ!?虎男?!ワータイガーってことですか?」
『そうだぜ、お館。』牙王から声が届く。
「本人いわく、そうみたい。」
「………初心者向けと言われるこの久宝寺ダンジョンでワータイガーが出たってことになったら大騒ぎどころじゃ無いじゃないですかぁーーー!!!!」
牙王が俺に耳打ちする…モフモフしとる。
「あ~、なんか本人が言うにはしばらくかかるらしいよ?」
「ぇ?ドユコト?!」
牙王がまた、耳打ち。モフモフしてこそばい。
「あ~、一旦ワーキャットの中でトップを決めるトーナメントみたいな事をやるらしいな…それで優勝したらボスになって…100年ぐらいしたらワータイガーに進化するらしい。」
「誰も知らない裏側の事情ですよねソレ!?」
「ん…俺も今知ったし…?」
俺のせいではないが、なんかスマン。
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