婚約解消
初めての投稿です。拙い文章のうえ誤字脱字もあるかと思いますが、興味ある方お付き合い頂きたいです。
舞台は王立学園での卒業パーティー。王太子が公爵令嬢に婚約解消を突きつけている。
「セレンスティーナ デュ フローレンス公爵令嬢!私、エルネスト デュ アクアラインは、貴方との婚約を解消する!そして新たに、リリーディア デュ シモン男爵令嬢と婚約を結ぶこととする!」
王太子は、金髪碧眼、彫刻のように美しい造形の顔に鍛えられた身体を持つ、いかにもな王子様である。テンプレだが王太子はふわふわのピンクブロンド髪、水色の瞳の比護欲を掻き立てられるいかにもヒロイン風情の可愛らしい男爵令嬢の腰を抱えている。
「王太子殿下のご意向は承知致しました。ですが、王家から公爵家へ正式な通達をもってしかるべきです。このような卒業パーティーの席で、態々個人的な発表をする理由をお聞きしても?」
白銀の艶やかな髪、少し釣り上がったアメジストの瞳を持つ、月の女神と呼ばれる美貌の公爵令嬢セレンスティーナ様は、毅然とした態度で当然の質問をする。
「うむ。確かにそうなのだが、陛下はセレンを殊更気に入っていてな。身分の低いリリーとの婚約に首を縦には振らぬ。私の話を聞いてくれないのだ。セレンには悪いのだがこの卒業パーティーの衆目で宣言することで王家としてはもう後にはひけなくなる。」おお、なんと勝手な…そしてあけすけな物言い。セレンスティーナ様にもリリーディア様にも失礼な男だ。周囲の貴族子女達は眉をひそめザワつきだす。
「それでも私はこのリリーを愛してしまった。妻は彼女以外考えられない。しかし私とて幼き頃から切磋琢磨してきたセレンの事も大事に思ってる。そこでだ。セレン、私の公式愛妾にならないか?」
とんでも発言である。王妃になるべく育てられ学んできた完璧な誇り高き公爵令嬢が愛妾で、一介の下級貴族男爵令嬢ごときが王太子妃になるなど、侮辱どころの話ではない。下手したら国が割れる。
「お断り申し上げます。」でしょうね。
凍りつく状況の中、黒髪に琥珀色の瞳の、どこかアウトローな妖しい色気をもつ精悍な騎士という雰囲気の帝国皇太子が颯爽と現れた。
「御前失礼致します。エルネスト王太子殿下にご挨拶申し上げます。私、レオン フォ アラバスタはセレンスティーナ デュ フローレンス公爵令嬢をお慕い申し上げておりました。この機会絶対に逃したくなく、こうしてまかりこしました。」
皇太子が流れるようにスッとセレンスティーナ様に手を差し出し跪く。
「セレンスティーナ様。私、レオン フォ アラバスタは貴方を愛しています。私の伴侶になってほしい。もちろん私は愛妾や側室など娶る気はない。生涯貴方だけを愛すると誓います。」
おぉ。これまた衆目の中、便乗とは言え帝国の皇太子に求婚されてはセレンスティーナ様も無下にはできない。というか帝国の申し出を小さな我が王国が断る事は…まぁ出来ないだろう。あっセレンスティーナ様、諦め顔で皇太子の手を取ったわ。あっ我が国の王太子は面白くなさそうな顔してるわね。そうね。王太子はセレンスティーナ様の事も普通に好きなのだ。
追って正式に婚姻の申し出を王国に届ける。婚約解消の手続きも速やかにお願いね。的な事を言い残しこれ幸いと皇太子はさっさと公爵令嬢を連れ去った。
アデュー。セレンスティーナ様。今夜はきっと抱き潰…ゴホン!セレンスティーナ様には移り気(女好き)なエルネスト様より、誠実一途なレオン様の方がお似合いだと思います。末永くお幸せになる事お祈り申し上げます。
因みに、異世界物でよくある婚約破棄ないし解消となった令嬢は傷物になるという理屈は、セレンスティーナ様には当てはまらないだろう。今回の婚約解消は完全なる王太子側の責任である。むしろ権威ある公爵令嬢を無下にしたのだから、王太子の信用は失墜する可能性もある。それになんと言ってもセレンスティーナ様は国一番の美姫のうえ頭脳明晰の才色兼備な完璧令嬢である。王太子と婚約解消となれば高位貴族がこぞって釣書を送りつけることになのに想像に難しくない。その前に皇太子がかっさらっていったわけなのだが。
さて、ここからが私の頑張り所!なんとしてもこのプレゼン成功させて見せますわ!
あまりの展開に唖然となる貴族子女達のなか、一人のモブ令嬢が指先までピンと伸ばし綺麗な挙手をする。
「はい!私、王太子殿下の愛妾に立候補致します!」