序章
”pipipi”
独特な電子音ではなく、ごくありふれた電子音と共に体に浮遊感が漂う……
目をつぶっているのにも関わらず、目の前が真っ白になり数秒後に目の前に、現代日本とはかけ離れた中世ヨーロッパを思わせるレンガ造りの家や石畳風な道路などの町並みが目の前に現れた。
「さて、やるかっ」
声をだした男性を周囲は迷惑ともとらずに、なぜか微笑ましい目で見ていた。
そう、周囲の人は分かっているのだ。男性が初めてこのゲームを開始することを……
西暦20XX年に、日本の医療メーカー”TARRY”と電気メーカー”TOHRA”が生まれつき目が不自由な人の為に、電子機器を通じて脳に直接信号を送り目を見える状態にするという画期的かつ斬新的な装置を開発に成功させる。しかし、当初は機械自体が大きく持ち運びにも不便な状態であったが、そこにゲーム機器メーカー”TOTEC”が自社製品であるポータブルゲーム機器の技術を提供することにより持ち運ぶには不便であるが、家庭に設置する分には十分である大きさに小型化することに成功する。
さらに、数年後には仮眠状態で仮想世界の中に自分本人を登場させるゲームを製作を開始したと発表した。このゲームは当初、体の動かせない方の為に仮想世界の中だけでも元気に体を動かせたら、という発想で開発されたのだがゲーム機器メーカーの”TOTEC”が一般の人々とのふれあいの場所を提供できるとの提案により製作開始をしようとしたのだが……
売り出す為には、健全者である人体に接続プラグという接続部品を埋め込まなくてはいけなくなることが問題視された。
プラグは首の後ろの部分に1cm四方のチップを埋め込むだけなのだが、当初は自分の体に機器を埋め込むことに抵抗がある人が多く当初はほぼいなかったのだが、プラグを埋め込む事により本人承認を専用リーダーで読み込むだけで簡易に行える事がわかり、これに目をつけた国が犯罪防止になるとの事で全国民にチップ埋め込みを義務付けた。
当初は、国民に不評であったが様々な手続きが不要になり、免許書の携帯が不要・パスポート不要・医療負担減額などのメリットが大きい事にも加え、数年前大きな事件があったがわずか5分で犯人検挙という治安が大いによくなった事に国民の不評は年々と低下していった。
そして、製作開始から5年仮想世界体験ゲーム機器”TOROY”が完成した。開始当初は、ある都市を模倣して作られたバーチャル生活をおくるという、ただの仮想世界だけなのであったが、その5年後ゲーム製作メーカー”オーガスタ”が、製作5年の月日をかけて作られた大作仮想世界ロールプレイングゲーム”tales of Knight”略名”トーク”を発表。
そして、今日”トーク”のクローズテストが開始されるのである。
このクローズテストはわずか2000人のテスター募集になんと30万人という応募があったのだ。
この物語は、そんな幸運な出来事から始まった高校生”黒羽礼於”の不幸の始まりの物語である。