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これでいい。これがいい?  作者: 永盛愛美
2/2

どちらが胃袋を掴んだか

 あの日から、新人さんが俺の弁当のおかずを味見した日から、どうやら俺は微妙に懐かれてしまったらしい…


 あれから三日に一度は必ず味見と言うかつまみ食いをしては満足そうに帰って行く。普通は逆だろうが?男の手作り弁当を若い女子が食いたがるだろうか?


 そんなこんなで二週間が過ぎた頃には、彼女は俺作かお袋作かを味で見抜く様になった。

 

 今までは見た目なんか全く気にしてなかったが、彩りで評価されてはちっとばかし納得出来ないので、創意工夫をやってみた。

 そんな早起きして弁当を盛り付けしていたところを不覚にも妹に見られてしまった。


 「何?誰かにあげるの?」

 なんて聞いてきやがった。コイツ、侮れないな。理由は言えない。言わない。妹は見た目がいつもモノトーンだった俺作弁当に疑問を抱いていたらしい。

 妹に一部食わせてみた。すると背後から、そっと俺たちを静かに見つめる弟も出てきやがった。


 この弟は厄介だ。視線を合わせずに、自己主張をさり気なく、期待を込めずにさり気なく『僕にもくれるかな?』とアピールせずに訴えるのだ。不器用なくせに、ここは器用だ。


 仕方ない、弟にも食わせてやった。


 「美味しい……全部食べたい……これ、毎日作ってたの?どこかで習ったの?」


 妹は俺よりは腕は劣るが何とか料理は出来る。が、この弟は……はっきり言って、何にもする気が無い。やる気も無ければ興味も無い。オマケに元気、エネルギーが全く見当たらない。だから、何一つ出来ない。


 「全部はやれないからな。余ったやつは食ってもいいけど」

 「えっ?いいの?ホントに?」


 この弟の甘ったるい笑顔は、一体誰に似たんだろう。

 ……コイツの為に「餌付け」と言う言葉が存在するんだろう。そんな気がする。


 俺の代わりに妹が餌付けを開始していた。さすが俺の妹だ。



 そうやって、どうだ、俺作かお袋作か、見分けがつかなくなったであろう弁当を携えて、今日も営業先へと乗り込んで来た俺。いや、仕事もしてるんだけどさ、昼飯のスペースを借りているからな。気持ちが上向き?になるんだよ。


 「あ、今日は、小西さん作ですね!相変わらず美味しいです……甘みがあるのに塩気もあって、丁度いいですね!」


 ……見た目ならお袋作と変わり映えしないと思ったが、やはり味付けで見抜く様になったんだな。



 この新人さんは、みんなから「由美ちゃん」と呼ばれていたので俺も便乗してそう呼ばせてもらう事にした。


 「へえ。由美ちゃんは、味で俺かお袋のかが分かるんだ。凄いね」


 まだそんなに回数食ってもいないし見た目だって遜色ないだろうに。


 「えっ?そうですか?嬉しいです~私は味オンチじゃなかったんですね!」


 味オンチ?こんなにはっきり言い当てる子が?


 「なんで味オンチなんかが出て来るの。これが美味く思えるから?」

 

 「あっ、まさかです!そんな事は決して!」


 由美ちゃんは、真っ赤になりながら、ぽつぽつと自分の事を話し始めた。



 ……仕事はどうした新人さん?


 少しは慣れて余裕が出て来たのかな。

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