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止まった時間


 美しい人は時間を止める。


 アデルファの時間は、出会ったあの日から、ずっと止まったままだ。


 ヘレグの銀髪が陽光を浴びて、きらきらと星のように輝いているところに目を奪われ、次いで美しい緑の瞳に呼吸を止められた。


「初めまして。小さな可愛らしいお嬢さん」


 ヘレグが微笑んだ瞬間、世界から一切の音という音が消え失せ、アデルファは凍りついたように動けなくなった。


 この夢のように美しい子が少年だなんて信じられない。


 アデルファは早鐘を打つ心臓に耐えられなくなって、真っ赤になりながら、母親のスカートの影に隠れた。


 大きくなって、ヘレグとの婚約が決まったときは天にも昇るような気持ちだった。釣り合っていないとは知りつつも、アデルファはずっとヘレグのことが好きだったから。


 ――ヘレグ様のお嫁さんになれるなんて! 神様ありがとうございます!


 そう、幸せだったのだ。


 あの日、残酷な現実を告げられるまでは。


「私ともっと恋人らしいことがしたい?」


 ヘレグは時とともに立派な青年に成長したが、幼年期にあった美貌は衰えることを知らず、アデルファと出会った当初よりもますます美しくなっていった。


 彼はエルフ族の母親の種族的特質を受け継いでおり、『完璧な美を生まれつき備えている』と囁かれるまでになっていた。


「アデルも大人になってきたんだねえ。なんだか感慨深いよ」


 そうだ、その通りだとアデルファは熱心に訴えた。


 アデルファはもう大人で、結婚できる年齢になった。


 そろそろアデルファのことを女として見てほしい。


「いいかいアデル。私は今から大事なことを言うから、よく聞いて」


 アデルファを優しく教え諭す声は、まるで恋人のように甘い。しかし、告げられた内容は――


「それはアデルがこれから恋人を作って、その人に頼むことなんだよ」


 他人よりも酷薄で、情がなかった。



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