お父さんはドラゴン
なろうラジオ大賞2第四弾。ちょっと甘さの方向転換。恋愛だけが甘さじゃないぜ!
ほのぼのとしたほんのりの甘さをお楽しみください。
「ドラゴン様」
(む? 麓の村の者達か)
「この娘を捧げます。どうか怒りを鎮めてくだされ」
「……お願い、します」
(は?)
(結局少女を置いて帰ってしまった……)
「……あの」
「何だ」
(どこを向いている? ……目が見えないのか)
「……早く、食べてください……」
「食べないぞ」
「えっ」
(そもそも生贄を要求した覚えもない)
「……お、父さん……」
(食べないと言われて何故泣く?)
「食べてもらえないと、お父さんに、会えない……。うぇ、うええぇぇ……!」
「泣くな。訳が分からん。事情を説明しろ」
「うええぇぇん!」
(暫し待つしかなさそうだ……)
「落ち着いたか」
「……ひぐ、う、ん……」
「で、父に会えないと言うのは何だ」
「……お父、さん、病気で、死ん、じゃって、む、村の人が、ドラ、ゴン様に食べ、られたら、天、国で、お、お父さん、に会えるって……」
(成程。村の凶事を私の怒りと思い込み、盲目で身寄りのない娘を厄介払いついでに生贄に、か)
「……食べて、くれる……?」
「だから食べない」
「……ひっ、ひぐっ、う、うえ」
「待て泣くな。ならば私が父の代わりとなろう。だから泣くな」
「……お父さんの、代わり?」
「あぁ」
「……撫でてくれる?」
「勿論だ」
「……お父さんって呼んでいい?」
「構わん」
「……えへへ、お父さん……」
(まぁ僅かの辛抱だ)
「お父さん、これ美味しいね」
「ふむ、好みか」
「これ苦いよお父さん」
「我慢しろ。健康に良い」
「お父さん、寒いよ」
「今火を起こす」
「お父さん、だーい好き」
「そうか」
(甲冑の擦れる音。半年か。早かったな。大分私が恐い様だ)
「娘よ」
「何、お父さん」
「これを飲め」
「うん。……何これ、変な味」
「私の血だ。これでお前の目は見えるようになる」
「え、本当?」
「そうすればお前はまた人の中に戻れよう」
「え、お父、さん?」
「私を討伐する者達が来る。私は逃げる。お前はその者達について行け」
「何で、……え!?」
「見えたか。これが私だ。ドラゴンなのだ。お前の父ではない」
「あ、ぅ……」
「楽しかったぞ。さらばだ」
「何故尻尾にしがみついた! 飛んでる途中で落ちたら……!」
「お父さんが勝手にいなくなるって言うのが悪いの! 私悪くない!」
「……私はドラゴンだぞ」
「……関係ないよ! 一緒に居てよ、お父さん……」
(この姿を見ても、父と呼んでくれるのか)
「分かった。大人になるまで傍にいよう」
「うん! お父さん、大好き!」
「……あぁ、私もだ」
読了ありがとうございました。
ドラゴンというテーマから、強くて可愛いという自分の中のイメージを膨らましたらこうなりました。
現在連載中の『小心騎士と竜の娘』もそんな感じのお話です。併せてよろしくお願いします(宣伝)。