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184  作者: 北 伊利奈
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早熟

 そのニュースはうだるような夏の始まりを告げる蝉のように、徐々に耳障りな騒音となっていった。

心に穴が空いたような虚無感と、好意を抱いていた相手の恋愛対象が自分ではなかったという惨めさ。

自意識過剰とも思える恥ずかしさ。

 

 私が好意を抱いていた相手は幼児性愛者の上に同性愛者でもあったのだ。そして犯罪者。

あの時から何故か気になって仕方がない男性同士の愛というもの。惹かれる何か。

 私の母親のようにみっともなく、意地悪をする同級生のように残酷な醜い女がいない世界。

そんな世界があればきっと、きらびやかで眩しく、穢れを知らない清流のようにとても純粋なように感じた。

 

 女性に対して暴力を振るい、罵声を浴びせるモラハラ男のような父を憎み、殺したいとまで思っていた。父に怯え、泣きながら謝っている母を守らなくてはいけないとまで思っていた。

 今も昔もフェミニストには変わらない。何かに虐げられている者がいれば助けたいと思うし、そんな立場が理不尽だと感じる。虐げられている母と自分を重ねていたのだろう。

 私は何故か父が恐くなかった。弱い男に見えたからだろう。

外では大人しく、周りの機嫌を伺っては自分を出せなかった男が、家の中ではお殿様で我儘な子どものようだった。きっと、母(妻)に完璧な絶対的な存在でいてほしいと期待しては裏切られてきたのだろう。

 

 いつか父を組み敷きたい。この正義感と使命感、蝋燭の火のように静かに燃え、周りに燃え移り、家を呑み込むまで大きくなる恐怖と浄化の火のような怒りを解放しなくてはいけない。 

 

 男が女のように喘ぐ姿は想像するだけでも面白い。

まさに女が男に復讐するみたいだ。

その感情に気がつくのはもっと歳を重てからだが、

小学生の高学年の時には、もうすでに私の心の底辺の部分には崇高でありながらも汚らわしく、澄んでいる目を疑わない大人たちを欺く術を身に付けていく。そして早熟した身体と比例するように精神性も高まっていく。

 

 アンバランスで真っ直ぐ歩けずに、何かが憑いているような重い足がいつかくる崩壊を予兆していたかのように、私は少しずつ身を削られて、常に痛みを感じるような不快な思春期を迎えることとなる。



次回に続く

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