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さあ、悪い盗賊どもを懲らしめに行くか。
「とうっ!」
ダンッ!
「すごい! なんてジャンプ力だ!」
「でかくてマッチョな体なのにあんなに高く飛べるなんて!」
「何者なんでしょう……」
僕が何者かなんて決まっている。それは正義の味方だ! さっき言ったでしょ! 心の中でツッコみを入れてる間に、僕は盗賊どもの目の前に着地した。
「ふっ、待たせたな。お仕置きタイムだ」
流石に殺してしまうのはマズいのでお仕置きと行こうか!
「何が「待たせた」だ! ふざけんな、てめえ! よくも俺様を蹴りやがったな! 人質まで奪いやがって!」
「そもそも何だその馬鹿げた格好は!? 馬鹿にしてんのか!」
「それとも本当に馬鹿なのか! ああ!?」
……ちくしょー! こんな悪党に格好のことで馬鹿にされるなんて! いや、気にしてたまるか! ヒーローたるもの、いろんな批判を受けても挫けないのだ!
「僕はイヌマン! 正義の味方だ! 愛と平和のためにお前たちのような悪党を懲らしめるのだ!」
「はあ!? なんだそりゃ!? マジで頭おかしいんじゃねえか!? 正義の味方だとよ! 馬鹿じゃねえの!?」
「ぎゃはははははは! 全くだぜ! 勇者じゃあるめえし何様だよ!」
「イヌマンって名前からして弱そうじゃねえか! 頭も悪そうだしよお!」
ぐぬぬぬぬぬぬ……! 許さん! もう許さんぞ! 徹底的に懲らしめてくれるわ!
「みんなやっちまおうぜ! この馬鹿ダルマを血祭りにするんだ!」
「「「おう!」」」
敵が一斉に飛び掛かってきた。おそらく、このマッチョなボディーを恐れて数で攻めるつもりなんだろうが相手が悪かったな。好都合だ!
「「「「死ねー!!」」」」
無駄だ!!
「イヌマン・連続パーンチ!!」
ドガガガガガガガガッ!!
「「「「ぎゃああああああ!?」」」」
僕の連続パンチが一斉に襲い掛かった盗賊どもを叩きのめす! 繰り出された拳は一度も外れることはない。更に的確に当たれば痛いところを当てているから効果抜群だ!
「犬なのにパンチ?」
「あれは、痛いね……」
「正義の味方って言ってるけど、えげつないっすね……」
「犬の要素、顔だけなんですけど……」
あれー? 引かれてる? しまった! やり過ぎたか!? 盗賊たちも結構な距離まで飛んでいってしまった。今度からはもっと手加減しよう。
「く、くそっ! なんつうパンチだ! ふざけた格好をしてるが相当な手練れかよ! ちっ、もう容赦しねえぞ!」
んん? 盗賊たちが起き上がったと思ったら、見る見るうちに姿を変えていく。肌が青くなる者や緑になる者、角や尻尾が生えたり鱗が……って、ええ!? ちょっと、まさか!?
「あれは『魔族』だ!」
「盗賊に化けてたんですか!?」
「そんな、こんなところまで魔族の手が……!」
さっき助けた人たちの言う通り、盗賊の正体は魔族だった。