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第二話 覇王の自宅




 目を覚ますと、私はお姫様が使うような豪華なベッドで寝ていた。私は急いで起き上がった。私は血だらけの制服を着ていて、昨日のことを思い出した。

 昨日、先生に殺されたんだ。思い出すと震えが止まらない。では、ここは天国というのか。

 すると、部屋の扉が開いた。昨日と同じスーツ姿の先生が居た。私は身を強張らせた。


「ああ。愛恋、起きてたのか。おはよう」


 先生は笑顔って言ってきた。それが怖くて、私はベッドから降りて部屋の奥に行った。


「愛恋?」


「来ないで!」


 私は部屋の隅っこで肩を震わせていた。すると、後ろから抱き締められた。


「やめて!離して!」


「愛恋……ごめんな」


 先生は私を強く抱き締めて泣いていた。


「俺はお前を幸せにしてやりたかっただけなのに、お前を手に入れる方法が殺す以外分からなくて……怖がらせてごめん。俺はお前と生きたかっただけなんだよ」


 何で、この人はそうまでして私を手に入れたかったのだろうか。


「俺、実は悪魔と人間のハーフなんだ。悪魔の方が血が強くてさ、魔法で何でも出来るんだ。だから、ずっと苦しんでるお前を救いたかったんだよ」


 よく分からないけど、とにかく彼は不器用であることは分かった。私が死んでないのも、先生の力なのだろう。


「どうか、怖がらないでほしい。何があっても、お前を守り続けたい」


 何で、そんなプロポーズみたいなこと言うのだろうか。私を刺したクセに。何でなのだろうか。

 そして、先生は離して私の体を振り向かせ、顔を合わせた。


「愛恋。君はとりあえず着替えて来な?奥の部屋がクローゼットになってるんだ。好きな物を着ればいい。俺は、朝食を作って、また迎えに来るよ」


 先生は優しく微笑んで振り返り、部屋を出て行った。

 私は先生に言われた通りに奥の部屋に入ってみた。すると、女物の服がたくさん棚に並べられていた。これ一室でクローゼットなんてすごい。服の種類もたくさんあって、ドレスとかもあった。

 私は悩んだ末、タイツにミニスカートを着て、黒いパーカーを着た。

 部屋を出ると、先生がポロシャツとジーパンを着て待っていた。


「随分と遅かったな」


「たくさん、あったので」


 あんなにたくさん服があったら興奮せざるを得ないでしょ。アレの中でコーディネートを選べなんて困難を極めている。


「前からお前を手に入れるって決めてたから、たくさん服を用意しておいたんだよね。俺の特権を使って、たくさん買ったよ」


「特権……」


 やっぱり、組長みたいなポジションなのだろうか。

 私をそこまでして手に入れたい気持ちが全く理解できない。私なんか居てもいいことないのに。


「さて、ここが食事をするリビングアンドキッチンだよ」


 そう言われて入った場所は、とてもお洒落で、リビングの天井には、シャンデリアがぶら下がっている。


「洒落てるだろ?ちなみにここは俺の家だ」


「えっ?」


 この屋敷が先生の家なのか。私は凄すぎて、ホテルだと思っていた。


「愛恋、ここに座って」


 先生に手招きされて行ってみると、テーブルは美味しそうなご飯が並べられていた。私はテーブルの前に座った。先生はテーブルの向こう側に座り、向かい合わせの状態となった。


「それじゃ、いただきます」


「……いただきます」


 私は温かそうなオニオンスープを一口飲んだ。


「美味しい……」


「ふぅ、良かった。お口に合ったようで何よりだよ。ダメだったらペットフード食わせるところだったぜ」


 ペットフード……嫌な物しか入ってないのだろう。

 それにしても、先生って料理出来るのか。なんか意外に思えた。先生ならとっくに結婚して奥さんのご飯食べてそうだけど。悪魔なら有り得ない話なのかな。


「愛恋とこうやって食事出来てて嬉しいな。いつもは給食だっただろ?だから、二人っきりになれて、本当に嬉しいよ」


 先生はそう言って、花が咲いたような笑顔を見せた。こんな人殺しの悪魔教師も普通に笑えるんだな。


「先生は、どうして私なんかを欲しがるんですか?よく分かんないんです」


「ああ、混乱させてごめんな。言い方がちょっと危なかったかな。とにかく、愛恋はお気に入りだったわけ。だから、愛恋と一緒に永い人生を生きていこうかなって思ったんだ。愛恋の願いも叶えられるだろ?」


「私の、願い……」


「うん。愛恋はあの時、自由に幸せに暮らしたいって思ってただろ?だから、永遠にのんびりと生きられるこの場所ならお前にピッタリだしさ。愛恋と生きるっていう俺の願いも叶ったし、一石二鳥だ」


 人の願いまで読めてしまうなんて、悪魔は未知の生物だと思った。でも、叶えようとしてくれてるのは有難いけど……。


「俺、愛恋を手に入れる方法間違えてしまったんだよ。殺すなんてしなきゃ良かった。普通の悪魔のように契約して、魂を貰えば良かったのに。お前の怖がる姿を見て、後悔してるんだよ」


 悪魔の先生にも人の心があったようで安心した。殺されるのは本当に怖かったけど、結局生きてるし、もうどうでもいいかな。



 食事を終えて、先生と一緒に家の中を回っていた。廊下が長くて広い。本当に豪邸だ。


「お庭で遊んでて構わないよ。運動は大切だからね」


 そのお庭も上手くガーデニングされていて、とても綺麗だった。


「あのさ……手繋いでいいかな?」


 先生が乙女ゲームのシチュエーションに出てきそうなことを言ってきた。


「いや、殺されそうなんでやめておきます」


「もうあんなことはしない!だから、お願い……」


 先生は顔を真っ赤にしてお願いしてきた。意外と可愛いところがあるなぁ。


「いいですよ」


「やった!」


 先生は嬉しそうに私の手を握って、長い廊下を歩き出した。



 目を覚ました時の部屋に戻ってきた。


「パジャマもたくさん種類あるから着て来な。もう寝る時間だよ」


「えっ、お風呂は?というか、時の流れ早くないですか?」


「そりゃ悪魔の世界だもん。永遠に生きる者にとっちゃ早いぜ。お前の体は俺の魔力で常に清潔になってるから大丈夫だ。飯を食わなくたって死なないさ」


 さすが悪魔の世界。そんな簡単に体の清潔を保っていられるなんて。


「えっ、永遠に生きる者?」


「悪魔に寿命なんてねぇし、魂を取られたお前は俺が死なない限り永遠に生きていられる」


「じゃあ、先生はいくつですか?」


「俺はまだ子供な方だから、三十六だな。周りはみんな千超えてるぜ。ほら、早く着替えて来い」


「はーい」


 先生、意外と若い方なのかな。人間で言うとおっさんだけど、悪魔の世界では二桁はまだ子供なのかもしれない。

 私は大量の服から好みのパジャマを探し出し、それを着て、クローゼットという名の部屋を出た。

 先生はベッドの横にある椅子に座って待っていた。


「可愛いパジャマを選んだなぁ。やっぱり愛恋は可愛いよ」


 先生は私の頭を優しく撫でた。そして先生は立ち上がり、私をお姫様抱っこしてベッドに寝かせた。先生も私の隣で寝転がった。


「これからの永遠を幸せに生きような。俺は自分の部屋で寝るよ。女の子と添い寝はヤバいからな。おやすみ、愛恋」


 先生は、私の頬にキスをして、部屋を出て行った。私は色々と疲れていたせいで、すぐに眠れた。




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