マザコン勇者と旅立ちの朝
はじめまして、ちゅりと申します。
今回が初投稿で至らない点も多くあると思いますので、面白かった、読みづらかった、もっとこうしたらいい!などのコメントをお待ちしております!
勇者アランの年齢は20歳、姉サラの年齢は28歳ぐらいで設定しております
~夜明け前の旅立ち~
まだ太陽が昇らぬ夜明け前、俺はお守りを握りしめ写真立ての女性に一言告げ、次我が家に帰ってこられるのはいつになるんだろう、そんなことを思いながら家を出た。
「いってきます、母さん」
俺の名前はアラン、魔王軍が復活した、再度この大陸を支配しようと目論んでいると国のお偉いさん方が察知したようで、村から一人ずつ勇者を出すよう命が出た。
母は魔王を討伐した伝説の勇者の一人、その子供である俺に村の長がお前しかいないだろう、と俺に白羽の矢が立ったのだ。
せめて見送りだけでもと村のみんなが言ってくれるのはとても嬉しかった、でもそんな盛大にされると困る事があって・・・
「よし、誰にも見られてないな」
さっき歩いてきた道を振り返り着けられていないかを確認し、ため息を一つ付く、この旅立ちを知られていはいけない人がいるのだ、だから村のみんなからの見送りも断った、灯りが見えた、あの門をくぐるともう村の外だ。
「みんないってきます、俺、頑張ってくるよ」
そう一人つぶやき村の門をくぐった
「アーラーン君・・・こんな夜明け前にどこにいくのかなぁ?」
聞き覚えのある声が聞こえた、慌てて村の振り向くと、門の塀の所に座り込み、こちらを見ている女性がいた
「ね、姉さん・・・なんでこんな所に、家で寝てるはずじゃあ」
「今質問しているのは私なんだけども?ちゃんと答えなさいアラン!」
「ご、ごめんなさい!お姉ちゃん!」
姉の雷が落ちついつい謝ってしまった
さっきから姉と呼んでいるこの女性はサラと言い、家の隣に住んでいて、昔からよく世話を焼いてくれていた、母が亡くなってから特に気を使ってくれ、身の回りのことや、食事などは全てこの人に頼っていたので姉のような存在なのだ。
少し年も離れているので、逆らえるわけもなく
「それでアラン君、こんな日も昇る前にどこに行こうとしてたのかな?」
ま、不味い・・・なんとしてもこの場を切り抜けなければ、この姉の事だ、絶対に付いてくると言うだろう。
「い、いやぁ・・・なんか目が早く冷めちゃってね、外の森にでも散歩に行こうかなぁっと思って」
「へぇ、散歩ねぇ・・・ビビリのアランにしては珍しい事をしようと思ったのね」
「ビ、ビビリじゃないわ!それに俺だってもう成人してるんだ!あんまり子供扱いしないでよ!」
嘘である、ホントは暗い森なんて行きたくないのだ、今すぐお家帰ってお布団に包まれたい・・・
「そうね、悪かったわ子供扱いなんてして、もうアランも大人なのよね・・・気をつけていってらっしゃい、勇者様」
「う、うん行ってくるよ姉さん」
上手く誤魔化せた、そう思い俺は森に向おうとする。
待て、さっきの会話なにか違和感があったぞ・・・しまった!
気づいたときにはもう遅く、姉のほうを振り返ると肩を震わせていた。
「やっぱり勇者の命を受けてたのね!そうじゃないかと思ってたの!アラン!なんでお姉ちゃんに言わないの!」
「だ、だって姉さんに言ったら絶対についてくるって言うじゃないか」
「当たり前でしょ!ったく村長にはあれほどアランだけはダメだって強く言っておいたのにっ!」
こうなるから誰にも気づかれず出発したかったのだ、それにしても何故姉さんはこの事を知っていたのだ
「ね、姉さん、なんで俺が勇者に選ばれたのを知ってるの?」
「そんなのすぐ近所のおば様達が話題にするに決まってるじゃない!決まった次の日には私も知ってたわよ!」
噂好きのマダム達により簡単に情報は漏れていたのか・・・とほほ
「すぐに村長の所に掛け合いにいって、その時はわかったといってたのに!あのじい様!」
「それに、村長はアランの事なにもわかっちゃいない!アラン、貴方も分かってるでしょ?自分の身体の事なんだから・・・」
姉さんは心配そうな顔になり俺を見つめていた。
この世界の生まれてくる子供たちは、両親の能力を多分に引継ぎ生まれてくる、俺ももちろん例外無く母親の力を多分に引継ぎ産まれてきた、産まれてきたのだが・・・
「この封印の事だよね、姉さん・・・」
「そうよ、その母の呪い・・・貴方と私だけの秘密」
「呪いだなんて言うな!これは僕がママから貰った最後の贈り物なんだ!」
「でたわね、マザコンアラン!」
母の事を言われるとついつい素がでてしまう、昔からの悪い癖だ、姉は呪いだなんて言ってるが、俺はそんなふうには思っていない、むしろ母が残してくれた大事な形見だと思っている。
俺が生まれて間もない頃、母は思ったそうだ。
「魔王も倒しちゃったし、この子の力は強すぎるわ、強い力のせいでお友達ができにくくなったりしたら可哀想だしね・・・それに、この子にもしものことがあるなら、私がこの子を守る!」
そう言って母は全ての魔力を使い俺にひとつの封印を施した
個人の持つ魔力量は限度があり、使えば魔力は消費され、元には戻らない。
永遠の施錠
魔法に掛かけられたものは、術者が指定した能力に上限を設けられる。
俺に対して母は自身の魔力の全てを使い、目・耳・心臓・両腕・足の5箇所に制限をかけた。
解除方法は術者が任意で解除するか、術を受けたものが術者の魔力を上回った時に術が解除される、今は忘れられた古の魔法。
どこでこんな魔法を覚えたか母は教えてくれなかったが、持っている全ての魔力を俺に注ぎ込み、この封印を施してくれた。
おかげで俺は幼少期、強すぎる力に悩まされることもなく、平凡な子供として、人生を謳歌できたのだ。
それに母はもう他界しており、俺自身も母より深い愛を感じることは無いと思っているので実質この魔法の解除は不可能だと思っている。
この事実を知っているのは俺とサラ姉さんの二人だけ、なんでサラ姉さんがこの事について知っているのかは教えてくれない。
「な、なんだよ!いいだろ、僕はママが大好きなんだ!」
「いつもいつもそうやって母さん母さんって!もう貴方の母さんは亡くなったのよ!いつまでも居なくなった人にすがりつくのはやめなさい!」
「い、嫌だ!ママは僕の胸の中でずっと生き続けているんだ!」
「そりゃあんたの胸の中では生き続けてるんでしょうがね!現実見なさい!現実を!」
「ママぁ、助けて・・・サラ姉がまた僕をいじめるんだ」
この根性無しが・・・そう思い私は深くため息を付いた。
この子はこうやってすぐに今は亡き母に助けを求める、この子のこういう所がすごく嫌いだ。
確かにこの子の母親はそりゃあ美人で強くて、なんでもできる人だと私も思った、この人みたいになりたいと思った事もある。
でもそれではダメなのだ、この子の母親になりたい訳じゃない、私はこの子のお嫁さんになりたいのだ
その為に慣れない家事や、いつも怪我をして帰ってくるこの子の為に薬学も勉強した、いつでも頼れるお姉さんになろうとも努力をした。
こんなにも尽くしてくれるイイ女が近くにいるってのに目もくれずにママ、ママと連呼されるこっちに身にもなってほしいものだ。
私もそろそろいい歳で、最近両親のもってくるお見合い話を断る理由もそろそろ尽きてきた、この旅になんとしてもついていって、なんとしてもこのマザコンを矯正して、私に振り向かせないと・・・
なんてこの子の情けない姿を見ながら考えていたが、この子がこうなってしまっては埒が明かない。
ここは私が折れるしかないかと思いやさしく話かけた。
「アラン、さっきは酷い事言ってごめんなさい、確かにあの魔法をかけるところに私も居たから分かるわ、あれは呪いなんかじゃない、アランのママがアランの事を思って残した素敵な魔法だわ」
ごめん嘘、貴方は本当はもっと強いはずなの!それなのに!それなのにあの母親ときたら!
あの母親のアランに対する溺愛っぷりはそりゃあ見事で、女の勘というものだろうか、私のアランに対する気持ちに気づいてからのあの母親のガードの高さと嫌味は未だに覚えている。
「ね、ね!そう思うでしょ!姉さんが酷い事言うんだもん・・・僕もついカッとなっちゃってごめんね」
これがまだ幼い少年なら可愛いものなのだが、成人した男性が言うんだから目も当てられない。
それに私もこのまま引き下がる訳にはいかない
「でもねアラン、私は貴方の事が心配なの・・・そこだけは分かって頂戴、それに貴方は自分で自分の事もできないでしょ?だからお姉ちゃんが付いていって貴方のサポートをしよう思ったの、だからね・・・お姉ちゃんも一緒に連れて行ってくれないかな?」
それっぽい理由をこじつけてなんとしてでもついていかなければ
「でもなぁ・・・旅は危険な事が沢山あって、俺も姉さんの事を守りきれるか自信もないし、姉さんが傷つく所なんて見たくないんだよ、姉さんわかってくれ、すまない・・・」
「あ、いつものアランに戻った」
「いつもの言うなよ!」
この子はビビリでマザコンで、身の回りの事なんてひとっつもできやしないくせに・・・とびきり優しいのだ、単に自分に自信が無いだけかもしれないがいつも他人になにかあると駆けつけてくれる、そこは母親譲りで勇者気質なのかもしれない。
そんなマザコン勇者を私だけの勇者様にしたいのだ、だから私も引けない・・・ここは最終手段に出るとしよう。
私はアランの家の合鍵をちらつかせながらこう言った。
「そ、そうね・・・旅は危険が多くて、とてもじゃないけど私のようなか弱い女性には厳しい道のりかもしれないわ、お家に帰ってアランがいつ帰ってきてもいいようにアランのお部屋のお掃除でもしておくわ」
「姉さん!わかってくれたのかい!」
「えぇ、でもアランの様子もわからない、ちゃんとご飯食べてるのかしら、大きな怪我や病気はしてないのかしら・・・そんな事を思いながらお掃除なんてっ!お掃除なんてしてたら・・・ヨヨヨ・・・」
「お掃除なんてしてたら・・・?」
ゴクリと俺は唾を飲んだ
「あぁっ!手が滑ってバケツの水をベットにこぼしてしまうかもしれない!」
「や、やめろぉ!そこは母さんと一緒に寝た俺の聖域だぞ!」
この姉なんて事いいやがる!
「本棚をお掃除なんてしてたら貴方の母親が付けた日記を見つけてしまって、貴方の事を思い出して涙が止まらなくなって日記の上に涙を・・・」
「やめろぉ!母さんのつけた俺の成長日記が姉さんの涙で読めなくなっちゃうじゃないか!」
俺の部屋には母の残した遺物がたくさんある、それに囲まれて生活するのが俺の唯一の幸せなのだ、それをこの姉はっ!この姉はっ!
「さぁアラン、どうするの?こんな状態になってしまうお姉ちゃんを置いて旅になんていけるのかしら!」
これは脅しだ、こんな脅しに俺は屈してはいけない!
「ど、どうせ嘘に決まっている!姉さんはそんな事しない!」
「さぁてどうかしらねぇ、長い期間アランと一緒にいないなんてお姉ちゃんも想像した事ないからどうなっちゃうかわからないなぁ、それに・・・これなーんだ?」
姉は俺に一枚のハンカチを見せ付けた
「馬・・・馬鹿なっ!いつの間に!」
あのハンカチは母が使っていたハンカチで、あれを握って眠らないと寝つきが悪くなってしまうのだ、いつもポケットにしまっているはずなのに!
「アランがベソかいてる間に回収させてもらいましたー!それを今からですね、こうやって・・・」
姉さんが自分の服の胸元を開き、ハンカチを胸元にしまい込もうとしていた
「姉さんやめろ!そんなことしたら母さんの匂いを感じ取れなくなっちゃじゃないか」
「えー、いいじゃない別に」
「いいことあるかぁ!や、やめろ!姉さんやめてくれ!」
「どうしよっかなー、アランが旅に連れて行ってくれたら考えてあげてもいいけどぉ」
「そ、それはっ・・・」
姉さんを守りきれず姉さんが傷つく所なんて見たくない、それに俺は姉さんを見返す為にこの旅の命を喜んで受けたのだ、それなのにっ!それなのにっ!
ハンカチがゆっくりと胸元へ降りていき、肌に触れそうになる・・・触れるか触れないかの瞬間、俺の心は折れた。
「わかった!連れて行く!連れて行くからやめてくれぇ!」
俺は膝を突き姉に懇願した・・
「わかればいいのよ、わかれば」
姉さんはニッコリ笑って胸元に入れようとしたハンカチを俺に返してくれた。
そんなこんなをしていると、空に太陽が昇り始め、周りが騒がしくなってきた、なんだなんだと村人が集まってきたのだ。
「なんだアランまたサラに泣かされてたのか」
「まーたアランの負けね、まあ私はサラがついて行くって分かってたけどね」
「アラン、しっかり面倒みてもらえ」
村人が思い思いの事を俺に伝えてくる、俺は負けてない!脅されたんだ!
「サラおねーちゃん!」
一人の少女が私の元へ駆け寄ってくる
「あらマリン、どうしたの?」
「サラおねーちゃんも、アランおにーちゃんといっちゃうの?」
マリンはどこか寂しそうだった、マリンは私の事をよく慕ってくれていた少女だ。
「そうよ、アランは一人じゃなにもできないからね、アランのお世話役で一緒に旅にでるの」
「そっかぁ、寂しくなるね・・・」
マリンは少し寂しそうな顔をしていた
「大丈夫よマリン、少し長い旅になるかもしれないけれど、必ず返ってくるから」
「サラお姉ちゃん、ちょっと待ってて!」
マリンは家に向って飛び出していった、なんなのだろう?アランの方を見てみるとなにか村長と話している。
「アランよ、まずはこの祝福の森を抜け隣の村にいくのだ、この村はまだ無事だが、隣の村はどうなっているかわからん、隣村の村長に会い、情報を集めるのだ」
「わかりました村長、必ず魔王復活を阻止し、この村に無事に帰ってきます」
「頼んだぞ、勇者アリアの息子、アランよ」
そんな事を話しているのを聞いているとマリンが帰ってきた。
「おねーちゃーん!これー!」
マリンが一冊の本を持ってこちらに駆け寄ってきた。
「これは・・・」
伝説勇者物語、この国では割と有名な魔王討伐をした伝説の勇者の御伽噺の絵本だ、この物語の主人公はアランの母親である、私の家にもあるがアランの母親が主人公なので私はあまり好きじゃない。
「この絵本をね!マリンだと思って持ってて!後ね!アランおにーちゃんが、ちゃんとアランおにーちゃんのママみたいにね!強くなってるかこの絵本で確かめてあげてね!」
慕ってくれている少女の頼みだ、断れる訳なんてない
「わかったマリン、この絵本をマリンだと思ってちゃんと持ってるわ、それにへっぽこアレンがちゃんと勇者できてるか、たまにお手紙だすからね」
「わー!ありがとうサラおねーちゃん!」
少女の悲しげな表情は消え、手紙が来るというワクワクしたそんな嬉しそうな表情に変わった
「じゃあそろそろいくね、マリン」
少女の頭を撫で、別れを告げる
「んー!サラおねーちゃんのお手手大好き!帰ってきたらまた撫でてね!いってらっしゃい!」
各々が別れを告げる、旅立ちの時は来た
「さ、アラン!最初は祝福の森よ!」
「なんで姉さんが仕切ってるんだよ!ここは俺の出番でしょうが!」
まったくこの姉さんには困ったものだ・・・
「母さん、見ててよね姉さんを守りながら、魔王復活を阻止してみせるから・・・母さんの守った世界を今度は俺が守ってみせるよ」
ちゃんと見てるからね、私の可愛いアラン・・・
どこかで声が聞こえた気がした、どこか懐かしい聞き覚えのある声・・・
「アラーン!いくわよー!」
姉の声で我に返った
「待ってよ姉さん!」
そんなこんなで、俺の夜明けの旅立ちは失敗に終わった、でもここから
私の
俺の
魔王討伐の旅が始まる!
ここまで読んで頂き本当にありがとうございます。
マザコンと勇者を掛け合わせたらどうなるんだろう、というのがこのお話を思いついたきっかけです、母の愛と姉の愛、勝つのはどちらか!封印を鍵を解く鍵とはいったい!
色々考えておりますので、最後まで頑張って書き上げて、もっともっとよいものを仕上げていきたいので、どうかコメントや、応援メッセージなどありましたらじゃんじゃんお願いします!
かなり筆が遅いほうだと思うし、仕事の関係もありますので、最初は一ヶ月に一回程度お話を進められたらと思っております。
ではみなさんこれからもこの二人の結末を見守ってやってください。